沢木耕太郎 『オリンピア ナチスの森で』2007/08/15

この本は、レニ・リーフェンシュタールの撮影したベルリン・オリンピックの記録映画『オリンピア』二部作を観て触発され、書かれたものです。
レニ・リーフェンシュタールは最初ダンサーとして活躍しましたが、膝の故障のために踊れなくなり、女優として映画に出ます。
その後自分で映画を撮るようになり、『青の光』がベネチア国際映画祭で準グランプリを取ります。
その頃、ヒトラーの演説を聞き、感銘を受けた彼女はヒトラーに会いに行き、このことがきっかけになり、ナチス党大会のドキュメンタリー映画、『意志の勝利』を製作し、世界的に名を知られるようになります。

1936年8月ベルリン・オリンピックが開催され、レニが映画を撮ることになります。
1936年当時は映画技術も今日のようによくはなく、暗くなると鮮明な画像が取れなく、場面によっては競技が終わった後にもう一度取り直したものがあるそうです。
沢木はレニに実際にインタビューをしていますが、この本で彼が書こうとしたのは、ひょっとしてレニとのインタビューよりもベルリン・オリンピックに参加した日本人選手のことではないかと思ったりもします。

1936年のオリンピックと現在のオリンピックの違いがよくわかります。
当時のように国の威厳を賭けて戦ったオリンピックと今のようなオリンピックのようなもののどちらがいいか一概には言えませんが、各選手達がどういう思いでオリンピックで戦ったか、そして何よりも孫基禎のことは忘れてはいけないと思いました。