梨木香歩 『西の魔女が死んだ』2007/08/25

病院で待つことになりそうなので、買った本です。
夏休みの新潮社文庫の100冊に入っているのが、なるほどと思えました。
可愛い本です。

主人公のまいは、お父さんは単身赴任なので、仕事をしている母親と二人暮らしをしています。
中学校に入ってから季節の変わり目の喘息の発作もあり、友だちをしいて作ろうという働きかけもしなかったため、クラスで孤立してしまい、だんだんと学校に行くのが苦痛になってきました。
ある日、彼女は「わたしはもう学校に行かない。あそこは私に苦痛を与える場でしかないの」と宣言します。
困った母と父はまいを田舎に住む祖母のところにあずけることにします。

祖母は外国人で、ミッション系の私立中学で英語を教えているときに、祖父と出会い結婚し、祖父が死んでからも日本に住み続けています。
完璧に家事をこなす人で、母はそれがうとましく、家を出て行き、今は仕事を主とした暮らしをしています。

まいの都会で低下していたエネルギーも田舎で「魔女修行」をするうちに蓄積されていきます。
そうまいのおばあちゃんは魔女だったのです。
まいも魔女になりたいからと、おばあちゃんから魔女になるためにどんな努力をしたらいいのかを聞きます。
おばあちゃんは基礎トレーニングと称し、「早寝早起き。食事をしっかりとり、よく運動し、規則正しい生活をする」と言います。
祖母と規則正しい自然に即した生活をするうちに、まいは元気になっていきます。

ある日、父が田舎にやってきます。
別れて暮らすのは不自然だから、母が仕事を辞めて父の暮らす町にくることになったという知らせをもって。
まいは迷います。
転校したからといって、根本的な問題の解決ができないのではないかと。
しかし、祖母は言います。

「自分が楽に生きられる場所を求めたからといって、後ろめたく思う必要はありませんよ。サボテンは水の中に生える必要はないし、蓮の花は空中では咲かない。シロクマがハワイより北極で生きるほうを選んだからといって、だれがシロクマを責めますか」

いじめなどで登校拒否になっている子に対し、その子にも悪いところがあるから自分を変えないといけないとか、なんで戦わないのかということは簡単です。
そういうすぐ諦めないという根性は必要ではあるけれど、ある程度時間がたったら、環境を変えるということも考えてあげることが必要だと思います。
どこかにその子が輝ける場があると思うからです。

さて、まいはどういう選択をするのでしょうか?

大人が読むと、ちょっといい子過ぎるまいと善人過ぎるおばあちゃんですが、小学生や中学生に、夏休みの一冊にいい本です。
是非読んでみてください。