「地球交響曲 第四番」を観る2007/08/28

五月に『地球交響曲第六番』を観て以来、見逃していた第四番と第五番をいつか観たいと思っていました。
阿佐ヶ谷のラピュタでやっているので、思いきって二本、観てやろうと思ったのですが、無謀でした。
目が映画館のような暗いところでは疲れるのです。
大学時代には三鷹で立て続けに「ロッキー」三部作を観てもなんともなかったのですが、若さ?
一本目から頭痛がしてきました。それでも今回見逃すと、次回いつになるのかわからないと、無理をして二本観ました。
最後はフラフラ~(大げさですねぇ)。

第四番は子ども達に対するメッセージを考えた内容だったようです。
五番でわかったのですが、監督の龍村さんに子どもができてたらしく(年齢を考えると、遅い子どもですね)、そのためもあったのかもしれません。
この映画は4人の映像で成り立っています。
個々の人の日常生活を描きながら、インタビューをしていくのです。
第四番では、「ガイア理論」の生物物理学者、ジェームズ・ラブロックとサーファーのジェリー・ロペス、野生チンパンジー研究家のジェーン・グドール、そして版画家の名嘉睦念が出演しています。

不勉強でしたが、どうもジェームズ・ラブロックの理論に触発され、この映画が作られたようです。
彼は地球はそれ自体が大きな生命システムであると考えています(詳しくは彼の本を読んでみてください)。
例えば微量の汚染物質でもイギリスで大気に撒かれれば、それを日本で検出できるそうです。
地球をひとつのものとして考え、環境問題を語らなければならないということですね。
彼はイギリスにくらし、どこにも属さずに研究をしています。
自宅の周りの土地を少しずつ買い取り、自然に戻しているそうです。
印象的だった彼の言葉は次のようなものです。

「頭ばかり使って、手を使わないと何かが腐ってきて、良いアイデアさえ、浮かばなくなるのです」
「海がなければ、すべてのいのちも、ガイアもなかった、ということは誰でも知っています。
しかし、いのちがなければ海もなかったということについては、ほとんどの人が知りません」

ジェリー・ロペスのことは全く知りませんでした。
日本でサーフィンをやっているというと、「もてたいため」とかただ「格好いいから」とか思ってしまいますよね(すみません、私の固定観念です)。
海の中に八時間もいても、たった数分しか波に乗れないのだそうです。
その一時のために待つのです。
彼は言います。

「サーフィンが究極的に教えてくれることは謙虚さです。大自然の力は決して対抗できるものではない。唯一の許される道は共に歩むことです」
「サーフィンは、単なる肉体的、視覚的な体験ではなくより深い霊的な体験を与えてくれるんです。だから、その一瞬のために道具の準備はもちろんのこと、人生のすべてを捧げるのです」

ジェーン・グドールはよい家族に恵まれた人です。
特に母親はすごい人です。
未婚の女性を一人でアフリカに派遣することを躊躇している政府を説得するために、娘と一緒にタンザニアまで行くのですから。
彼女は母親と一緒にゴンベの森で暮らし、チンパンジーの生態調査を行い、チンパンジーが道具を使うことを発見したそうです。
穏やかな素敵な女性です。

「長い間自然の森の中で生活していると、本当は「死」というものがないんだ、ということがよくわかってきます。あるのは、いのちの「循環」だけなんです」
「ひとはまず、肉体的な進化を遂げ、次に文化的進化へと進みました。これは少し早足でした。次に来るのが、魂の進化です。それはすでに始まっていました。でも、物質的な欲望、西洋的な価値観のために、一時、そこから遠ざかっています。しかし、霊性は人間の本質そのものです。それを拒絶しているのは、科学的に検証できないからでしょう」

名嘉睦念は沖縄出身の版画家です。
作風は沖縄の土地と堅く結びついた棟方志功(?)らしきものです。
生まれた土地の伊是名島にいる彼は自然児そのもの。
沖縄という土地が彼を育てたのだということが、よくわかります。
彼が彫刻刀で彫り始めたときには、もう作品は完成しています。
下書きもなく、感性のおもむくままに削っていきます。
神懸かり的なものを感じます。

「むしろ目に見えている世界っていうか、現実としてある世界が(より?)、ずっと心の中に起こっている世界の方が、実は遙かに遠大で大きいんじゃないか。」
「沖縄の格言に”生まれればちとし”っていうのがあるんですね。うまれたら90になる老人も、生まれたての赤ちゃんも生を受けてるという意味で同じだと、平等だと。生きているってことは、先に誰が死ぬかわからないんですよね。生きているっていう意味でみんな平等ですと。だから、生きている今をおろそかにするなと。この世に生まれるってことは、既に生を受けた時点で祝福されているんですよね」
「幸せは減らない」

地に足をつけた生活をしてるかな?とフト立ち止まって考えてしまう、そういう映画でした。