「地球交響曲 第五番」を観る2007/08/29

地球交響曲第五番は今までの第一番から四番までの総集編みたいなもので、今まで出演してきた人を無理に出しているという感じもしました。
監督にしてみると、前に出た人のその後も描きたかったのでしょうが、それが映画のインパクトを弱める結果になったと思います。(二本目だったので、わたしも疲れていたせいもあったのかもしれませんが・・・)

軸になるのが、赤ちゃんの誕生です。
監督の娘さんの生まれる状況を挟み、西表島に住む染織家の石垣昭子さんや哲学者であり未来学者であるアーヴィン・ラズローが出てきて、この二人の話の合間に、天川(天河?)神社の七夕祭と前の出演者が日本に来日した時の様子とインタビューが挟まれています。

染織家、石垣昭子さんは沖縄竹富島出身。
若い頃は島が嫌いで東京の美大に行ったのですが、日本民芸館で沖縄の染織のコレクションに出会い、染織を勉強し始めました。
その後西表島に渡り、島で織られていた芭蕉布の伝統を復活させ、現在に至るそうです。
布を作る作業は考えられないほどの手間がかかります。
芭蕉畑の手入れから始まり、収穫し、剥ぎ、釜茹でし・・・。

「見えない仕事が、きっちり出来ていればもう布は自然にいい布に上がる」

最後の染色も去年と同じ色はでないそうです。
大量生産されるケミカルな色と比べると「影の部分」が違い「隠された色」があるのです。
例えば、藍はもともとは緑色で、空気に触れると藍になるというように。
彼女は西表島の開発のことを心配しています。

「今の若い人たちを見ていると、本当になにかを一生懸命に探しているんですよね。まあ、自分自身を探していたり、自分のこれからのことを考えたり、傷ついたり。だから素直になって、自分自身もそうなのですけれど、やりたいと思ったらそれをやればいい。失敗するのはもともとと考えて、怖がらずにやってみると、やったことによって、何かが見えてくる。色を染めていても、この色を染めようと思っても必ず挫折。思うようにはいかないですよね。でも、結果を受け入れれば、また次のことにいくわけなのです」

哲学者アーヴィン・ラズローが若い頃ピアニストだったということを知りませんでした。
それも天才ピアニストですよ。
そういえばアメリカのライス国務長官もピアノがプロ級とか。
日本の政治家にそういう人がいませんね。
ラズローの哲学は詳しくは知りません。
でも「宇宙は記憶を持っている」とか「この世界は、極めて微細なレベルで強く繋がっている」ということを考えると、新しい価値観を与えられます。

「今、行っている全ての営みが、未来の世代に影響を与えます。だからこそ、目の前の自分のことだけに夢中になるのではなく、広く、全人類のため、全ての自然のため、ガイアの全てのいのちのため、そして未来のために生きることが大切なのです」
「自然は無限の叡智を持っています。自分の内なる直感をもう一度信じ、自然との一体感を取りもどした時、自然の無限の叡智が自分自身のものとなります。ただ、自分自身に戻ればいいのです」

ダライ・ラマが日本の科学者とシンポジウムを行っている場面がありました。
若い母親が悲惨なニュースについて子どもに聞かれると、なんと答えたらいいのかわからないと質問をしていました。
ダライ・ラマは言います。「悲惨なニュースを見るのは、確かに辛いことです。
しかし、それがまた、人々の慈悲の心を育てるのです。
子どもたちにとっては、それが、他者を思いやる心の栄養にもなるのです」

第四番に出演していたジェーン・グドールと名嘉睦念が東京で再会します。
睦念は言います。
「ぼくは断言したいのですけどね。幸せのほうがずっと多いんですよ。ただ、たくさんの幸せの中にある、ほんのちょっとの不幸が、全てを不幸に思わせてしまう。そういう感情を人間は持っているので、心の中の、心の使いよう、というのは自分自身に責任がある。それをしっかり持って、このいっぱいある幸せを満喫しなければならない」

あまりに出演者が多く、すべてを消化しきれないほどでした。
五番は無理して見なくてもよかったかもしれません。別の日に観たら、違った感想を持ったかもしれません。