高橋絵里香著『青い光が見えたから』&実川真由著『受けてみたフィンランドの教育』2008/11/09

不思議なことに、本でも縁があると、同じ頃に同じような本の話を聞くのですね。
フィンランドのことは特に興味があったわけではありません。
しかし、司書の人が読んだ本の中で意外とおもしろかったと紹介してくれたのが、高橋絵里香著『青い光が見えたから』でした。
本の題名を忘れてしまい、しばらくほってあったのですが、同僚とたまたま本について話していると、中学教師をしている旦那様がおもしろいと奥様に言ったフィンランド教育の本があると言うので、その本を貸してもらったら、実川真由著『受けてみたフィンランドの教育』でした。
まあ、これも何かが(何?)あると思って、『青い光…』は自分で買い、両方の本を読んでみました。

『受けてみた…』はAFSで1年間フィンランドの高校に留学した東京出身の女の子とその母の書いたものです。
母親が英語の専門家らしく、真由さんのお姉さんはチリに同じAFSで留学しています。
真由さんは東京都の中高一貫校に通っていて、小学校の6年生の時、テレビで若手女タレントが一ヶ月フィンランドで生活してみるという番組を見てからフィンランドに興味を持ったそうです。
題名からわかるように、この本は子どもに、世界で名高いフィンランド教育を体験させたいと思っている親向けの本ですね。
内容も娘が書いた留学体験に付け足して、母親がフィンランド教育について書くというものです。

一方、『青い光が見えたから』は、北海道の中学校で、日本の中学校にありがちな(?)嫌な経験をし、『ムーミン』の本で憧れていたフィンランドに高校留学をし、「自分らしく生きる」ことの意味を見いだした少女の成長の記録です。
『受けてみた…』の真由さんが日本の教育にたいした違和感を持たずに留学したのとは違い、絵里香さんは、先輩・後輩関係をキッチリ守り、校則が厳しく、教師も言うことを聞かない生徒に体罰をふるうという、そういう中学校で夢を見失っていました。
絵里香さんのご両親が娘さんの味方で、娘の夢を叶えるために動いてくれています。
友達から借りた『たのしいムーミン一家』の本を読み、いつかこんな本を書いたトーベ・ヤンソンの生まれた国に留学したいという、そんな娘の夢を応援したのです。
ひょっとすると、ご両親も日本の教育に疑問を持っていたのかもしれませんね。

日本とフィンランドの教育の何がそんなに違うのでしょうか。
9年間の義務教育制というのは同じです。
しかし、高校では日本では取る科目が決まっているのですが、フィンランドでは生徒が自分の興味に応じて取る科目を選べます。
各自が取る科目が違うのですから、フィンランドではクラスはあってもなきがごとしですね。
だからクラスごとでやる行事なんかありません。
フィンランドの高校は日本の大学と似ています。
日本は2学期か3学期制ですが、フィンランドは5期制。
評価は日本は10段階が最終的に5段階になりますが、フィンランドは10段階評価で、4が2つ以上で留年決定だそうです。
日本には留年することは「恥」という感覚が強いですが、フィンランドはわからないならわからないことをそのままにするのではなく、わかるまで留年するのが当たり前。
日本は学校に教育以外の躾けなどを期待することがありますが、フィンランドでは学校は教育を受けるところでしかない。
日本は授業料を取り、昼食も自前。
フィンランドは教育はすべて(大学も)無料で、昼食も無料で提供されています。
卒業は、日本は高校独自で決められますが、フィンランドは全国統一の卒業試験があります。
卒業も3年間でというのではなく、各自自分の能力に応じて、3年半とか4年で卒業する人もいます。

表面的に見た違いは色々と言えますが、中身がだいぶ違うようです。
暗記重視の日本の教育と、自分がどう思っているのかを重視するフィンランドの教育。
テスト前には「勉強する」ではなく「読む」とフィンランドの子は言うそうです。
「何々について自分の知っていることを書きなさい」などと記述式のテストが主とか。

OECDが世界の15歳を対象に学習到達度調査(これについても賛否両論ですが)をしていますが、フィンランドは読解力2位(日本14位)、数学的リテラシー2位(日本6位)、科学的リテラシー1位(日本2位)、問題解決能力3位(日本4位)(2006年)と上位を独占しています。
意外と日本も健闘しているなと思ったのですが、どうでしょう。
読解力は今の日本の教育では仕方がないなと思ってしまいますが…。

フィンランドは人もふくめて資源が少ないからこそ、生き延びる道は教育大国になるしかないという観点から教育を大切にしているそうです。
日本も資源がないのですから、もっと教育を重視してもいいと思います。

日本の教育に疑問を持つ人は、是非『青い光が見えたから』を読んでみてください。
いかに今の教育が人から「自分らしく生きる」ことを奪っているかがわかります。
彼女はフィンランドで自分を見つけましたが、どれほどの若者が自分を見つけられず苦しんでいるのかと思うと、恐ろしくなります。

追記:高橋絵里香さんのブログ『青い光が見えたから』『フィンランドに学んで』を見つけました。興味のある方は読んでみてください。

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