桐野夏生 『IN』2009/08/01

桐野さんというと、なにやら人間の心理のドロドロしたものを書くという、そういう印象があって、今度のもそうなのかと予想をして読みました。
話の柱になっているのは、不倫と作家の業。
作家の鈴木タマキが元自分の編集者の安部青司とのW不倫関係を終え、久ぶりに会うところから始まります。
二人の関係は一体なんだったのだろう。まだひょっとすると愛は二人の間にあるのではないか。しかし、青司は・・・。

タマキは昭和48年に緑川未来男が書いた『無垢人』という小説に引き付けられます。
『無垢人』は、緑川が自信の体験を赤裸々に書いたということで、一躍スキャンダラスな取り上げられかたをした小説です。
緑川も妻子ある身ながら、○子という若い女と不倫関係にあったのです。
『無垢人』では、○子の存在を知った妻八代子との葛藤が描かれているのです。
タマキは『無垢人』を基に『淫』という小説を書こうとします。
そして踏み入れたのが、○子とは誰なのかという謎でした。
最後に、まだ生きている妻八代子にインタビューができ、○子の正体はわかります。
八代子の中に残る、死んでもなお夫を許せないほどに強い愛と、八代子自らも作家であり、夫の死後、夫の日記を書き換え復讐するという、恐ろしさ。

人間には恋愛体質の人とそうでない人がいますが、このドロドロさには、私はついていけません。
それほど強い感情は、夫に対してないものね。(といいながら、夫の浮気で離婚などということになったら、こういう風になるのかしら?)
真実というものは無いというのが、真実なのかもしれません。
書いてあるのは、それは作家にとっての真実でしかない・・・。
桐野さんはあまり見たくはない人間の負の感情を、いつも赤裸々に書いてくれます。

第12回世界バレエフェスティバル―プログラムA2009/08/05

       8月4日(火)【プログラムA】

    《第一部》
 「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」
   アリア・コチュトコワ
   ダニール・シムキン
 「くるみ割り人形」より”ピクニック・パ・ド・ドゥ
   ルシンダ・ダン
   ロバート・カラン
 「海賊」
   マリアネラ・ヌニェス
   ティアゴ・ソアレス
 「エラ・エス・アグア - She is Water」
   タマラ・ロホ
 「くるみ割り人形」
   ヤーナ・サレンコ
   ズデネク・コンヴァリーナ
 「コッペリア」
   アリーナ・コジュカル
   ヨハン・コボー

第一部は古典バレエのガラなどでよく踊られる演目でした。
一番初めに出てきたシムキンは、容姿がいいですね。ABTの期待の星。今後が楽しみです♪
「くるみ割り人形」にピクニックの場面があったっけと不思議に思ったのですが、オーストラリアの振付師による違うバージョンなんですね。 
あっけなく終わり、ちょっとかわいそうでした。
「海賊」のソアレスは体格もよくて、見た目は好みでしたが、背中が硬くて・・・。
新国の「コッペリア」でかわいらしさが印象に残ったタマラ・ロホですが、こういうコンテンポラリー系も踊るのですね。
私的には好きな振付ですが、服を着るところで少し時間がかかるのが難点です。
ヌニェスやコジュカル、コボーは無難に踊っていたんではないでしょうか。

   《第二部》
 「ジゼル」より第二幕のパ・ド・ドゥ
   上野水香
   マチュー・ガニオ
 「クリティカル・マス」
   シルヴィ・ギエム
   ニコラ・ル・リッシュ
 「ライモンダ」
   マリア・アイシュヴァルト
   フィリップ・バランキエヴィッチ
 「スカルラッティ・パ・ド・ドゥ」(「天井桟敷の人々」より)
   アニエス・ルテステュ
   ジョゼ・マルティネス
 「ディアナとアクティオン」
   シオマラ・レイエス
   ホセ・カレーニョ
 「オテロ」
   エレーヌ・ブシェ
   ティアゴ・ボァディン

上野さんはいろいろな舞台を踏むことにより、世界に羽ばたくようになるかな・・・?
それよりガニオのダンスをもっと見たかったです。
怪我から復帰したばかりだとか。仕方ないですね。
シルヴィ・ギエムはこういうダンスを踊っているんですね。
あまりカリスマ性を感じませんでした。
振り付けが斬新過ぎて、私にはわかりませんでした。
ニコラ・ル・リッシュが一緒に踊っているのにびっくりしました。
プログラムBもギエムと踊るのですね・・・。
「ライモンダ」は私の好きな振付でした。
第二部では何と言っても、カレーニョがよかったです。
体型もいいし、身体も柔らかいし、若い頃を観たかったです。そろそろ引退なんて、もったいない。
「人魚姫」で泣かせてくれたブシェは「オテロ」を踊りましたが、どの部分を踊っているのかと考えているうちに、ボァディンのお尻が見えて、それどころではなくなっちゃいました。
なんで腰に巻いてあった布を女性の腰に巻くんだろう?

   《第三部》
 「椿姫」より第一幕のパ・ド・ドゥ
   オレリー・デュポン
   マニュエル・ルグリ
 「フォーヴ」
   ベルニス・コピエテルス
   ジル・ロマン
 「白鳥の湖」より”黒鳥のパ・ド・ドゥ”
   スヴェトラーナ・ザハロワ
   アンドレイ・ウヴァーロフ
 「カジミールの色」
   ディアナ・ヴィシニョーク
   ウラジーミル・マラーホフ
 「マノン」より”寝室のパ・ド・ドゥ”
   ポリーナ・セミオノワ
   フリーデマン・フォーゲル
 「ドン・キホーテ」
   ナターリャ・オシポワ
   レオニード・サラフォーノフ

後に行くにしたがい記憶が蘇ってきます。
「椿姫」でルグリが出てきて、え!中年のアルマンかよっと思いましたが、さすがルグリ。
リフトが大変かな・・・と思う場面もありましたが、見せてくれました。
どうせなら「オネーギン」の別れの場面(第三幕)を踊ってもよかったかも。
「フォーヴ」は「牧神の午後への前奏曲」を使っていました。
故に、「ルジマトフ・・・」で見た西島のと比べてしまいます。
女性がプラチナブロンドで、透けた白いブラウスに白いブラとショーツで、アンドロイド的。
男性が前をはだけたシャツを着て、ワイルドでした。
「白鳥の湖」では、ザハロワとウヴァーロフが登場。貫禄あります。が、無難に踊っていました。
ウヴァーロフってザハロワだけの相手じゃなかったのね。パンフを見て初めて知りました。
「カジミールの色」は前に『奇才コルプの世界』で見た時の方が印象が強かったです。
今回は色が見えなかったような。
「マノン」は若い二人が踊りましたが、もっと女性が色っぽくてもよかったかも。
でも、二人の情熱はわかりました。
振り付けが好きなので、是非とも全幕見たいと思いました。
最後の「ドン・キホーテ」はオシポワが出ていましたが、昨年ボリショイの公演で見ているので、特に感動はありませんでした。
前の舞台の方がもっとはじけていました。
すごいものは一回見ると、感動がなくなるのかもしれませんね。
最後のカーテンコールでは全員がそろいました。
ザハロワはいるだけで存在感あります。
結構背が高いんですね。水野さんより大きいし、スタイルがいいようです。
なんか全ての人が上手いので、どれがいいとか言えるものがないです。
意外性のある何かが欲しかったです。(贅沢かな)

田村 隆一 『詩人からの伝言』2009/08/07

詩人の田村隆一というと、「四千の日と夜」が好きです。

一遍の詩が生まれるためには、
われわれは殺さなければならない
多くのものを殺さなければならない
多くの愛するものを射殺し、暗殺し、毒殺するのだ
         (「四千の日と夜」より)

ひとつの沈黙がうまれるのは
われわれの頭上で
天使が「時」をさえぎるからだ
         (「天使」より)

言葉なんかおぼえるんじゃなかった
言葉のない世界
意味が意味にならない世界に生きていたら
どんなによかったか
        (「帰途」より)

きみはいつもひとりだ。
涙をみせたことのないきみの瞳には
にがい光りのようなものがあって
ぼくはすきだ
          (「細い線」より)

私は現代詩人の男性のなかでは彼と谷川俊太郎が好きです。
残念ながら田村さんは1998年に亡くなっています。
ですから、この本は、晩年の彼が言いたい放題、まあ、飲みながら話したという感じです。
私達も彼と一緒に飲みながら、おじいさんの話を聞くという風に、軽く読んじゃえばいいでしょう。

言葉にこだわった彼の次の言葉が印象に残りました。

「国際化。つまりインターナショナルって声高に言われるけれど、ナショナリティーがなくてインターナショナルなんてありえないんだよ。もしあるとすれば、そんなものは単なるファッションにしか過ぎない。
言葉も同じさ。日本語が豊かになって、はじめて外国語も豊かになるんだ。母国語というナショナリティーの充実が、豊かなインターナショナルを育むのさ。」

もっともっと美しい日本語を読まなければと思いました。

ジョシュ・バゼル 『死神を葬れ』2009/08/08

帯を読むと、この本、『死神を葬れ』は2010年にレオナルド・ディカプリオで映画化するそうです。
まさか医療現場がこの本に書かれたようではないと思いますが、なにぶんアメリカが舞台なので、ひょっとしたら・・・と思えるところが怖いです。

NYの病院の研修医をやっているピーター・ブラウンの出勤場面から話は始まりますが、しょっぱなから私が考えていた本ではなかったことがわかります。
だって、ピーターったら、路上でピストルを突きつけられたのに、強盗の肘関節を脱臼、鼻をつぶし、失神させちゃうんですから。
強い。強すぎ。
一体彼は何者?
彼によると、両親はヒッピーで、祖父母(ポーランドから移民したユダヤ人)が彼を引き取り、親代わりに育ててくれたそうです。
その祖父母は彼の14歳の誕生日まであと四ヶ月という時に、家で撃たれて死んでしまいます。
どうも強盗の犯行ではなく、「正式採用試験中のマフィア見習い」の殺人らしいのです。
それからピーターは叔父バリーの養子になり、バリーを説得し、祖父母の家で一人暮らしを始め、祖父母を殺した犯人に復讐するために、武術を学びます。
それだけではなく、なんとマフィアだと思われる家族に近づき、マフィアの一員にまでなっちゃうんです。
祖父母を殺した奴を探したかったんですね。
でも、何故今研修医?という疑問がわくでしょう。
まあ、本を読んでください。

少しネタバレをすると、彼は結局マフィアから足を洗うことにし、最後の事件に向かったのですが、騙され、なんだかんだでFBIの保護を受け、違う人間となったのです。
ところが、なんと彼の病院に、昔の彼を知っている奴がガンで入院しちゃったんですね。
そんなわけで、みつかっちゃたんです。まずい。とっても・・・。

まあ、軽いノリで、エグイ場面もありますが、楽しめる本です。(ミステリーではないですが)
あ、殺し合いとか血とか嫌いな人は読まない方がいいですよ。

ひとつ気になったことがあります。
アウシュビッツの強制収容所のことです。
私はアウシュビッツには二つの収容所しかないと思っていたのですが、三つあったんですね。
第一収容所、いわゆるアウシュビッツと第二収容所、ビルケナウ。そして第三収容所、<IGファルベン>の合成ゴム工場、モノヴィッツ。
モノヴィッツのことは知りませんでした。
インターネットで調べてみると、工場はソ連軍により爆破され、今は農地や空き地になっていると書いてありますが、この本ではピーターがモノヴィッツを訪れ、工場は今も稼動していることになっています。
私がアウシュヴィッツを訪れた時に、モノヴィッツは公開されていませんでした。
たぶん現在のIGファルベンの工場は別の場所にあるのでしょうね。

第12回世界バレエフェスティバル―プログラムB2009/08/11

プログラムAよりBの方が見ごたえありました。
なんと最後のカーテンコールでダンサーが大入りてぬぐいを投げてくれ、1枚ゲットしました。(写真)
私はつつましく、一枚ゲットしたので、後は座ってみなさんの必死の形相を見てましたが。
前に座っていると、たまにいいことあります。日本手ぬぐいってちょっとバレエに合わないんですが・・・。
隣に座っていた親子は5、6枚も手に入れてました。何するんでしょうか?
相棒曰く、「おみやげだよ」

     8月11日(火) 【プログラムB】

    《第一部》
 「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」
   マリアネラ・ヌニェス
   ティアゴ・ソアレス

 「コッペリア」
   ヤーナ・サレンコ
   ズデネク・コンヴァリーナ

 「アレクサンダー大王」
   ポリーナ・セミオノワ
   フリーデマン・フォーゲル

 「海賊」より”寝室のパ・ド・ドゥ”
   シオマラ・レイエス
   ホセ・カレーニョ

 「白鳥の湖」より”黒鳥のパ・ド・ドゥ”
   上野水香
   デヴィッド・マッカテリ

 「パリの炎」
   マリア・コチェトコワ
   ダニール・シムキン

一番最初のヌニェスは笑顔がとってもかわいいです。
楽しそうに踊っているのが好印象。
4列目だったので顔の表情がバッチリ見えます。
「コッペリア」はどの場面だろうと思っていたら終わっていました。
丁寧に踊っていたようですが、あまりオーラがないかな?他の人たちがすごすぎだからか。
フォーゲル君はなんと、「アレクサンダー大王」ですって。
体が大きいので、上半身裸は見栄えしましたが、大王というより、王子様でした。
まあ、まだ若いし童顔?
セミノオワは細くて、腹筋がちゃんと割れてました。見習わなければ・・・。
わたしは結構時代物や神話物が好きなので、「アレクサンダー大王」が全幕バレエとして上演されたら見に行きたいです。(え、男性ダンサーの裸が見たいだけ・・・?)
「海賊」では楽しみだったカレーニョがサポートばかり多くて、とっても残念でした。
「海賊」見たはずなのに、”寝室のパ・ド・ドゥ”覚えていません。
一体どこにあったんだろう?(どうもABT版だけにあるようです)
上野さんは「白鳥の湖」の”黒鳥”をよく選びましたねぇ。(別に彼女じゃないのかな)プログラムAでは、あのザハロワが踊ったんですよ。無謀です。
上野さんの手のがカクカクと動いていて、手に表情のない人だなと思いました。これでは学芸会?(上野さんのファンの方、怒らないでね)
「パリの炎」はイワン・ワシーリエフが踊るのを見ているので、二回目です。
シムキン君、かわいい。イワン君は太ももがとっても太くなってしまって、ちょっと・・・という感じになっちゃったので、お願いだから、今の体型を維持してください。
二人とも、小さくてかわいいペアでした。

   《第二部》
 「ナイト・アンド・エコー」
   エレーヌ・ブシェ
   ディアゴ・ボァディン

 「スリンガーランド・パ・ド・ドゥ」
   アニエス・ルテステュ
   ジョゼ・マルティネス

 「白鳥の湖」第三幕より
   ルシンダ・ダン
   レイチェル・ローリンズ
   ロバート・カラン

 「マノン」より第一幕のパ・ド・ドゥ
   アリーナ・コジュカル
   ヨハン・コボー

 「アパルトマン」より”ドア・パ・ド・ドゥ”
   シルヴィ・ギエム
   ニコラ・ル・リッシュ

 「ベラ・フィギュラ」
   オレリー・デュポン
   マニュエル・ルグリ

私の苦手なコンテンポラリー作品が目白押しでした。が、眠らずに最後まで見れました。
感想までいうようなほどコンテンポラリーは知らないので、私の気になったものの感想だけにしますわ。
「バラ・フィギュラ」は前に見たエトワール・ガラの方がよかったような。
やっぱり若い肉体の方がきれいでしたね。
「ナイト・アンド・エコー」は好きな振付でした。
特に面白かったのが、「白鳥の湖」です。
グレアム・マーフィーの振付って変っているんですね。なんと三角関係ですか。
現代の英国王室を舞台にしちゃったって。ヒロインが故ダイアナ元妃の姿に重ねあわされているそうです。(パンフレットより)ふ~ん。嫉妬と絶望が伝わってきました。
是非とも全幕みたいです。
「マノン」は”沼地”(たぶんマノンが死ぬ場面)ではなくて出会いの方になっていました。
マノンとデ・グリューの一目で恋に落ちた、ドキドキする胸の鼓動がいいですね。コボーの顔にやっとなれました。
プログラムAでは写真との違いにびっくりしたまま終わってしまったので。
そうそう、前の座席が空いていたのですが、なんとルグリが出る前に来て、第三部にはいませんでした。
ルグリのファンで、会社をそのためだけに抜け出してきたんでしょうか。

    《第三部》

 「海賊」
   ナターリャ・オシポワ
   レオニード・サラファーノフ

 「ル・パルク」
   ディアナ・ヴィシニョーワ
   ウラジーミル・マラーホフ

 「ブレルとバルバラ」
   エリザベッド・ロス
   ジル・ロマン

 「オネーギン」より第三幕のパ・ド・ドゥ
   マリア・アイシュヴァルト
   フィリップ・ヴァランキエヴィッチ

 「ドン・キホーテ」
   スヴェトラーナ・ザハロワ
   アンドレイ・ウヴァーロフ

第三部はどれも見ごたえありました。
オシポワは相変わらず高いジャンプを飛んでました。
サラファーノフは残念ながらアリには見えません。
私の趣味ですが、アリは背の高い濃いダンサーに踊ってもらいたいですよね。
こういうガラ公演では仕方ないですか。
「ル・パルク」はパリオペラ座で見ましたが、私には感情移入がむずかしかったようです。
マラーホフとは合わないのかしら?オペラ座のル・リッシュの印象が強いのかもしれませんね。
「ブレルとバルバラ」はベジャールの振付ですが、ベジャールは背の高い女性が好きなのでしょうか?
プログラムAの女性もそうでしたが、今回のロスもロマンと同じぐらいの背の高さでした。
かわいいというより、カッコいいといいたくなるような女性達です。
ロマンはワイルドな不良中年。(あくまでも私の印象です)
シャンソンに合わせて踊ったのがフランス的(?)でした。
「エスメラルダ」のタマラ・ロホはシムキンの次ぐらいに会場を沸かせていました。
「コッペリア」のおきゃんさとは違うロホの魅力がわかりました。
彼女はバランス感覚がすぐれているのですね。
そうそう、ボネッリはロホに負けじと勢いよく回りすぎたのか、転んでしまいました。
プログラムBの一番は、「オネーギン」でした。
アイシュヴァルトの「オネーギン」は来日公演で見て、感動させられましたが、今回は短い時間なのに、彼女の世界に引き込まれてしまいました。
オネーギンをまだ愛しているけれど、でも自分の今の境遇を考えて、彼の求愛を拒絶する、それまでの心の揺れが見事でした。
そういえば、ルグリの最後の公演が「オネーギン」だったそうで、見たかった。ガラでこの三幕を踊って欲しかったです。
最後の「ドン・キホーテ」は言うまでもないですね。
貫禄十分。たとえ調子がよくなくても、なんといってもザハロワですから。
今更ながらに、ウヴァーロフのスタイルのよさを認識しました。
ザハロワは他のバレリーナよりも大きい人なので、ウヴァーロフぐらいの背の大きさがなければ釣り合わないですものね。
彼は身体も柔らかいし、いいですね。
バレエ初心者の私には他のダンサーと比較しないとわからないこともあるんですね。
ガラ、見たかったな・・・。どんななんだろう。

「ハリー・ポッターと謎のプリンス」を観る2009/08/13

やっとお盆休みになりました。
毎年続けて観ているハリー・ポッター・シリーズを見に行きたいので相棒に言うと、嫌ではなさそう。
でも「レスラー」では映画館の椅子があまりよくなかったので、一度行ったことのある品川プリンスシネマのプレミアム館のような椅子に座って観たいそう。贅沢な奴。
プレミアム館のHPを見ると、なんと「ハリー・ポッターと謎のプリンス」をやっているじゃないですか。早速予約しました。
前回は映画として今までとは違い現代的なシーンがたくさんありました。
今度も同じ監督なので、同じようなのかと思っていましたが、最初の場面以外は元の雰囲気に戻っていました。
内容は原作とは少し違っているようです。
「謎のプリンス」は誰かということだけで、「謎のプリンス(half-blood prince)」についてそれ以上詳しくは映画を見てもわかりませんでした。
何故彼(内緒)は「half-blood prince」なのかしら?(原作まだ読んでないんです。前作で止まっています)
裏切り者と死ぬ人は予想通りでした。
さて、映画は・・・。

駅にいたハリーのところにダンブルドア校長が現れ、ハリーを元教師スラグホーンのところに連れて行きます。
スラグホーンを特別な生徒が大好きな人で、教師をやめていました。
トム・リドル(ヴォルデモートの学生時代の名)について大事な何かを知っているのですが、記憶を書き換えているようでした。
それで、ハリーを使い、彼が何を知っているのかを明らかにしようとダンブルドアは思ったのです。
ダンブルドアの目論見どおりスラグホーンはハリーに引かれ、またホグワーツで教えることにします。
そのころ、ドラコの母はスネイプのところに行き、息子ドラコを支援するように頼み、彼と「破れぬ誓い」をするのでした。

学校では、思春期にさしかかったハリー達ですから、いろいろと恋のうわさが。
ロンにはラベンダーという女の子が積極的に迫っており、ハーマイオニーは気が気ではありません。
ハリーはロンの妹のジニーが気になっています。
ダンブルドアからスラグホーンに取り入るように言われたハリーは頑張ります。
いろいろと変な事件が起こり、いつもそこにいるハリー達。
やっとスラグホーンからヴォルデモートの秘密を聞き出します。
そして、ダンブルドアはある物を見つけ、ハリーを連れて行くのですが・・・。
とここまで書いたのですが、ここでやめます。

今回は何やら学校生活のことが多くて、とっても長く感じました。
だって学生の恋の話って、もう興味ないでしょ。
唯一興味があるのは、ハーマイオニーがロンを好きなのですが、何故かってことです。
私的にはハリーと結ばれて欲しいのですが。
前回登場し、気に入った、ちょっと変った女の子ルーナの衣装が面白いですね。
クィディッチの試合の時にはライオンの被り物をつけてたような。
そして、ドラコ君。かわいそう。いつも一人で友達いないんですから。
それにしても彼の顔がかわりましたね。子どもから少年になったんですねぇ。

今回は終わり方も中途半端で、やっぱり次の映画を観るしかないですね。
でも来年と再来年、2回に分けちゃいますから、先は長いです。

映画の後は、はじめての「餃子の王将」体験しちゃいました。
噂どおり混んでいました。
餃子と八宝菜などを頼みましたが、う~ん、こんなもんか・・・。
テレビで王将のことをやっていたので、どの人が店長かと探したのですが、見当たりません。
餃子焼いている人?若いですね。他の人も20代。
気になったのが、食べ物を無造作に皿に入れたりしていることです。もっと食べ物を丁寧に扱ってもいいのでは・・・。
まあ、お値段を考えるとそこまで気にしてられないですかね。

アレグザンダー・マコール・スミス 『日曜哲学クラブ』2009/08/16

イザベル・ダルハウジーは《応用倫理学レヴュー》という雑誌の編集者です。
彼女は親の遺産で裕福な暮らしをしています。
親の代から雇っているグレースという家政婦が毎日やってくる大きな屋敷に一人で住み、家で仕事をし、好きな時にコンサートや画廊に行き、近くに住む姪のキャットに会い・・・なんともうらやましい暮らしです。
題名の『日曜哲学クラブ』は彼女が主宰しているのですが、一度も開かれたことがありません。
みんなで集まろうと声をかけると、いつも誰かが都合が悪いというらしいのです。
わかります。日曜日にわざわざ集まって哲学の話なんかしたい人、あまりいないでしょ。

エディンバラが舞台になっているので、行ったことのある私としましては、プリンセス・ストリートなどという文字を見ると、いろいろと思い出します。

ある晩、コンサートに行ったイザベルは、天井桟敷から人が落ちてくるのを見ます。
落ちてきたのは、投資会社に勤めていたハンサムなマークという若者でした。
ここで不思議なのは、何故イザベルが、マークの墜落事件に関わろうと思ったかということです。
イザベルは哲学者なので、こう理由を述べています。

「わたしたちはこの世のすべての人に対してモラル上の責務をおうことはできないわ。でも、なんらかの関係をもつに至った人たち、つまりわたしたちのモラル上の範疇に入ってきた人たちに対しては、責務があると思うの。隣人とか、わたしたちが日々付き合っている人がそれよ」

イザベルにとって、落ちている時に互いに見た、それだけでモラル上の責務が生じたというのです。
そういうものなのでしょうか?

そうそう、彼女の編集するジャーナルに送られてきた論文の中にも、おもしろいものがあります。真実を告げることに関する論文です。
ある夫婦に遺伝子的障害を持つ子が生まれました。
この特別な障害は父母両方がその遺伝子を保有していなければなりません。
しかし、父親は遺伝子の保有者ではありませんでした。
ということは、母親が浮気をしたということが考えられます。
真実を告げるべきかどうか・・・。

もっと身近なことでは、あなたの友人の彼氏が浮気をしていることがわかります。
さて、あなたは友人にそれを言いますか。

哲学って結構日常生活の中にあるんですね。
イザベルはこういう高尚な(?)ことを考えながら、マークの事件に首を突っ込んでいきます。
私にしたら、ただの詮索好きなおばさんに思えますがね。
最後にマークが天井桟敷から落ちた理由が明らかになります。
しかし、イザベルがしたことはどうなのでしょうか。
本当にモラルを哲学する必要はないのかしら?

結構面倒な哲学的思考が書いてあるので、読むのも面倒になるかもしれません。
私はブックカバーが気に入りました。
イザベルの家の庭に現れるキツネとスコットランドの国花のアザミがとても素敵です。
こういうブックカバーいいですね。

カール・ハイアセン 『迷惑なんだけど?』2009/08/18

前作『復讐はお好き?』は痛快な作品でした。
自分を殺そうとした男に復讐するのですから。
でも、『迷惑なんだけど?』は、全然前作とは違います。
だって、ハニー・サンタナにはまともな復讐する理由なんて、これっぽっちもないんですから。
ハニーが復讐する相手は、夕食時に電話をかけてきた電話セールスの男、ボイド・シュリーヴ。
電話セールスならでなけりゃいいじゃないですか。
私はナンバーディスプレイを使い、知らない電話には出ないですわ。
ハニーは、頭にきてボイドのことを探り、フロリダの不動産を売っていると偽り電話をし、無料体験旅行に招待するのです。
元夫のマイレージを使い飛行機の切符を用意し、自分の家(トレーラーハウス)をホテルにして、ボイドをエコツアーに連れ出し、説教してやろうというのです。
ボイドはさえない男で、妻に食べさせてもらっているような奴です。
セールスの仕事ばかりしているのですが、上手くいったためしかありません。
今回もお客にとんでもないことを言ったことがばれて、首になってしまいます。
こういう男に限り、変なところにマメだったりするんですよね。そう、愛人がいるんです。
ボイドの妻リリーは離婚するために夫の浮気を探偵に探らせており、なんのためか夫と愛人がセックスをしている接合部分の鮮明なクローズアップを撮るようにと命じます。
かわいそうな探偵はボイドの後をつけて行くことに。

さて、同じ頃、ネイティブ・アメリカンと白人のハーフの男、サミーが、湿地ツアーに連れて行った男が心臓発作を起こし死んでしまったため、バレないようにと街を逃げ出し、島に隠れていました。
このハニー、ボイド、サミーを含むその他もろもろの人たちがハチャメチャな出来事を引き起こします。
なんか登場する人がみんな普通じゃないんです。
唯一まともなのは、ハニーの息子、フライだけのような・・・。

エゲツないところがあって、途中で読むのをやめようかとも思いましたが、一応最後まで読んでみました。あまり読む価値は・・・。

直島・犬島に行って来ました2009/08/21

2泊3日で現代アートを見に、瀬戸内海に浮かぶ小島、直島(なおしま)と犬島(いぬじま)に行ってきました。
実はモバイルパソコンを買ったので、ブログをアップできると思っていたのですが、なんと、直島は圏外でした。
イーモバイルは島には弱いんでしょうか?

羽田から高松に飛び、高松港からフェリーで約50分で直島に着きます。
ベネッセハウスに泊まるので、ホテルのバスを使って宿へ。
私達はミュージアムに止まりました。
ベネッセハウスは安藤忠雄が設計をしたものです。
現代アートが浜辺やホテルのあちこちに置いてあります。
新しく韓国の作家の作品を置く建物を建築していましたから、しばらくしてから行くと見られるでしょう。
ホテルの部屋には、作家の作品が飾ってあります。
お風呂に小窓があり、シャワーを浴びながら、もしくはお風呂に入りながら、瀬戸内海が見えるようになっています。が、ガラスが曇るんです。
ホテルに泊まると、アートは11時まで見られるということなので、人がいない時にゆっくり見ました。

ホテルから車で5分ぐらいのところに、地中美術館があります。私は初めは地中「海」美術館などと言っていました。(恥)
これも安藤さんの設計で、島の土を掘り、三階建ての建物を建て、取った土をまた被せたそうです。大変ですね。
作品はクロード・モネの「睡蓮」もの5点とウォルター・デ・マリアの「タイム/タイムレス/ノー・タイム」、ジェームズ・タレルのスペース1~3しかありません。
迷路のような建物の中をたどっていき、入り口から作品を見た時のインパクトは、すごいものです。

犬島は直島からアートシャトルに乗り35分で着きます。
犬島には90年ぐらい前に精錬所がありました。(直島には今もあります)
この精錬所跡を、近代化産業遺産として残すと共に、環境システムを利用した建築物を建て、そこにアートワークを置いたのです。
柳幸典の作品がありますが、鏡を使ったものはとっても印象的でしたが、後は三島由紀夫が好きな人なら気に入るかもしれませんね。

2泊3日では全部見られませんでしたが、アート好きの人なら十分楽しめる旅になると思います。
HPに旅行記を載せておきますので、興味を持った方はご覧下さい。

たかのてるこ 『淀川でバタフライ』2009/08/23

『ガンジス河でバタフライ』を書いた、たかのてるこが今度はエッセイを書きました。
彼女は関西出身で、あの軽さと明るさは、このエッセイに出てくるおかあさんから来ているのだということがわかりました。お母さん、すごいです。
やっぱり関西は異郷?
どこを読んでも笑ってしまうのですが、そうか、私だけではなかったと思わず膝を打ってしまったのが、トイレのことです。
食事している人はここで読むのを止めてね。
「女の「クサい」友情」を読んで、笑わずにいられるか、という感じです。
男性にはわからないでしょうね。
そうなんです。外でトイレに入るのは、女性にとってドキドキものなのです。
特に駅のトイレなんか、できるだけ入りたくないです。
入ったとたんに、前の人が大○をやっているのがわかったら、息を止めてしまいます。
心の中では、「この~(怒)、こんなところでやるなよ!くさいじゃないか!」と怒鳴っています。
便秘の多い女性はもよおしたらどこでも即なのでしょうが、だから強烈に臭いのかしら?
自分が入った個室がすでに臭いとき、次の人に疑われるのが、ものすごくムカつくと、たかのさんの友人が話していますが、ホント、そうですよね。
私じゃないのにと、次の人に訴えたくなりますぅ。
あ、この本、こんな話ばかりじゃないですから、安心して読んでください。
主にたかのさんの家族の話と高校時代、淀川でバタフライをした話(実話です)ですから。
ひょっとして関西人の家族はみんなこんなにおもしろいのだろうかと、思い込みそうな私です。