旧安田楠雄邸に行く2009/11/01

昨日の散歩。
日暮里駅→谷中ぎんざ→旧安田楠雄邸→須藤公園→上野駅
どれぐらいの距離を歩いたのかわからないので、万歩計でも買おうかと思います。
谷中ぎんざは午前中だったので、それほど混んでいませんでしたが、外国人観光客の姿が目立ちました。

言問通りに出て、坂を上っていきます。そうするときれいに舗装された通りに出ます。その通りに旧安田楠雄邸があります。
たまたま「となりの高村さん展」をやっていました。
高村さん=高村光雲・光太郎・千恵子・豊周・規のことです。
なにやら着物を着た人が受付にいます。狭い部屋ごとにボランティアの人でしょうか、1、2人の見張りがいます。ちょっと多すぎです。
解説をしてくれるのかと思ったら、ただいるだけです。

旧安田楠雄邸は大正7年(1918年)に建てられた和風の邸宅です。
保存状態もよく、昔の財閥の金持ちさがよくわかります。
庭があまりきれいではなかったことが残念です。

「となりの高村さん展」では部屋ごとに、それぞれの人たちの作品や作品写真、関連写真が飾ってありました。
本物が数少なくて残念。

建物だけでも見る価値はあると思います。
一般公開は水曜日と土曜日です。

安田邸を出て、須藤公園に行って見ました。
ここには江戸時代、加賀前田藩の支藩大聖寺藩主松平備後守の屋敷があったそうです。
真ん中に池がある公園で、それほど大きくはないのですが、鳥の声に満ちていました。
しばしベンチに座り、鳥の声を聞いていました。
ちょっと手入れができていない感じでしたが、また来たい公園です。

喉が渇いたので、千駄木駅の近くにできたサンマルクカフェで一休み。
まだ余力があったので、上野まで歩くことにしました。
不忍池を通り、丸井で買い物をし、電車に乗って帰りました。
まだまだ谷根千には見所がありますね。

ジェフリー・ディーヴァー 『ソウル・コレクター』2009/11/02

リンカーン・ライム・シリーズ最新作です。
昔とは違い今は家にパソコンがあり、インターネットにつながっていれば、外に行かなくてもショッピングができます。
現金がなくてもカードで買い物ができます。
なんと便利な世の中になったことでしょう。
カードの履歴をあまり気にしたことがありませんが、よくよく考えてみると履歴を見れば私という人の嗜好がはっきりわかります。
これらの私という人の情報―顧客の個人情報や購入履歴、住居、車、クレジットカードの利用履歴など―が集められていたら・・・と思うとちょっと気持ちが悪いですね。

リンカーン・ライムのいとこ、アーサーが女性を殺し、彼女の買ったばかりの絵画を盗んだ容疑で逮捕されました。
彼にはまったく覚えがありませんでしたが、証拠が多数見つかりました。
アーサーの妻ジュディがライム(リンカーン)に会いに来て、事件を調べて欲しいと頼みます。
ライムとアーサーは兄弟のように育ちましたが、ライムの事故の少し前から会っていませんでした。

サックスと一緒に事件を調べてみると、アーサーが罠にかかったことがわかってきます。
被害者の女性とアーサーのデータを何者かが集め、利用していたのです。

他にも同様の事件がありました。
ライムと五二二号(犯人)の戦いが始まりました。>恐ろしいのは、銀行の残高を勝手に変えられたり、してもいない犯罪をやっていることになったりとデータが改竄できるということです。
便利になったようですが、いつ自分のデータが一人歩きし始めるのかわからないという恐ろしさがあるということを、理解していなくてはなりませんね。
この本に出てきているSSDという会社のようなものが本当にあったら・・・と思うと怖いです。

リンカーン・ライム・シリーズ物としては、この本もおもしろく、期待を裏切りません。

ケイト・キングズバリー 『ペニーフット・ホテル 受難の日』2009/11/04

1906年イギリスの南東沿岸部、バジャーズ・エンドにあるペニーフット・ホテルが舞台のシリーズ物です。
このホテルは上流階級の人たちに人気です。それというのも、口の堅い従業員達がいるので、この宿の中のことが噂になるようなことがないからです。
ホテルの女主人セシリー・シンクレアは夫を亡くしたばかりで、支配人のバクスターを頼りにホテルを経営しています。
彼女の周りにはまじめなバクスターを初めとして、催し物担当のフィービー、装花担当のマデライン、メイド頭のアルシーダ、メイドのガーティなど個性的な人たちがいます。

ある日、宿泊客の婦人が屋上庭園から転落死しました。
自殺か、他殺か、事故死か。
ホテルの名誉を守るために、当てにならない警察を尻目に、セシリーは独自の捜査を始めます。

セシリーが婦人参政権運動についてふれている場面があり、まだまだ女性が男性より下に見られていた時代に彼女が生きていることがわかります。
なかなかおもしろいヒロインです。
くそまじめな支配人のバクスターがこれからどうセシリーに感化されていくのか注目していこうと思います。

三浦しをん 『神去なあなあ日常』2009/11/07

「なあなあ」はしをんさんの創作方言で「ゆっくりいこう」という意味だそうです。神去は「かむさり」と読みます。

横浜に住む平野勇気は高校卒業後、フリーターになろうと思っていたのですが、無理やり神去村に行かされ、林業の研修生になるという話です。
林業と言われても、あまり身近ではないので、どういうものかわからない人が多いでしょう。
実はしをんさんのおじいさまは三重県で林業を営んでいたそうです。だからこんなに林業のことが詳しく、林業っていいかもと思わせられるんでしょうね。
勇気は、逃げようにも、何分山奥なので、交通の便は悪く、携帯も通じず、仕方なく林業を始めます。
やってみると、神去村の村人達も個性的で、やさしく、自然もあたたかく勇気を包んでくれました。
なんとなく、林業っていいかも・・・と思い始める勇気でした。

しをんさんはこう言っています。

「どんな仕事だって、やりがいを感じることは、あったとしてもほんの一瞬で、ほとんどの時間は、「ああ辛い」「やめたい」と思うのが普通ではないでしょうか。
自分が選んだ職業に就くことが、いいことだとは限りません。勇気みたいに、なんだかよく分からないうちにとりあえずやることになって、やってみらた、辛いことも大変なこともあるけど、なんとなく楽しかったと。それぐらいの、ゆるい態度でいいんじゃないかなと思うんです。「やりがい」や「向いている職業」を求めるあまり、自分を追い詰めすぎるのは、やめた方がいいんじゃないか。そういうことを書きたかったんです。」(「あらたにす・著者に聞く」より)

私が今の仕事に就いたのは、実は高校の先生や友人が進めたからです。
なんとなく、大事な仕事だとは思っていたのですが、そんなになりたかったわけではありません。
やってみて、辛いことがたくさんありましたが、喜びも同じぐらいありました。
周りを見て思うのは、「やりがい」とか「向いてる」というのは、あまりあてにならないのではないかということです。
どんな仕事にも探せば「やりがい」はあります。
「向いている」というのも、難しいもので、本人だけが思い込んでいる場合もあります。
あまりこだわっていると、今の時代就職先が見つからなかったりします。
ちょっと他の人の意見も聞いてみると、新しい自分が見つかったりすることがあるように思います。
しをんさんの言うように、「ゆるい態度」も必要ですよね。

若い世代向きの本です。

ケイト・キングズバリー 『バジャーズ・エンドの奇妙な死体』2009/11/09

前作『ペニーフット・ホテル受難の日』の続編です。
バジャーズ・エンドとはペニーフット・ホテルのある田舎町の名前です。
この町で灯台建設が始まりました。
ところが現場監督の男が家の外で倒れているのが発見されます。
最初は心臓発作に見えたのですが、よくよく調べてみると、なんらかの毒物を摂取したことがわかります。
ホテルの女主人、セシリーの友人で装花係のマデラインはこの現場監督と仲がよく、彼が死んだ日に、彼に夕食をご馳走していました。
マデラインにはジプシーの取り替え子だとか魔女だとか怪しげな噂があります。
彼女は自宅の庭で薬草を育て調合し売っていました。
マデラインが彼に毒をもったのでしょうか・・・?
町の人々はマデラインを疑います。

しばらくたつともう一人、同じ毒で殺されます。
セシリーは友達のマデラインを助けるために、独自の捜査を始めます。
支配人のバクスターは心配しながらも、立場上仕方なくセシリーの手助けをすることになります。
「毒を食らわばさらまで」という感じでしょうか。

今回は謎の宿泊客が現れたり、メイドのガーティが妊娠したのではと悩んだりと、なかなか周りも忙しいようです。
1906年頃にもティールームがあったんですねぇ。
ティーケーキや卵とコショウソウのサンドウィッチ(コショウソウって何?)、ソーセージ・ロール、ウィーン風タルト、スイス・ロール・・・。う~ん、美味しそう。
優雅に100年前の淑女になったつもりで、お茶にでもしようかしら。
でも紅茶がないわ・・・。

堂場瞬一 『棘の街』2009/11/10

私はあまり日本のミステリーを読まないのですが、今回は相棒がおもしろそうに読んでいたのと、「やっぱり(日本の)警察物はいいよな」なんて言っていたので、読んでみることにしました。
ちなみに相棒は外国物のミステリーは読みません。その理由は、名前が覚えられないからだとか。

一匹狼の刑事上条は上司の反対にもかかわらず、故郷の町の北嶺署への異動を申し出ます。
彼には苦い過去があります。
一年前、自分が高校生時代に関係を持っていた朋絵の息子が誘拐されます。
身代金受け渡しに行った時、上条がミスをしてしまい犯人を捕らえられず、息子も見つかりませんでした。
上条は三日後担当を外されてしまいました。
それから誘拐事件は暗礁に乗り上げてしまい、動きがありませんでした。
しかし、二ヶ月前に遺体が見つかったのです。
上条にはこの誘拐事件が自分の事件だ、事件を解決するのは自分だという確信がありました。

北嶺は上条の故郷ですが、彼は大学に行くのに町を出て以来戻っていませんでした。
家に出張でいつもいなかった父親に対する恨みのようなものがあって、素直になれなかったのです。
その父親も亡くなり、家と父が晩年やっていたレストラン、銀色のポルシェが残されました。
家とレストランは売ろうと思ったのですが、父親の仲間達に反対されたので、そのまま残すことにし、レストランは父の古い友人に貸すことにします。

北嶺に異動してすぐにレストランに行った帰りに、上条は数人の若者が誰かを囲んでいるのに遭遇します。
暴力を振るっていた若者は逃げ、一人の少年が残されました。
その少年は頭を殴られており、記憶喪失になったらしく、名前も住所も思い出せません。
仕方なく、上条は少年をアキラと呼ぶことにして父の家に住まわせ、レストランの手伝いをさせることにします。
実は上条は結婚していたことがあります。
妻の美歩は子供を生んだ後、すぐに亡くなってしまい、生まれた子は妻の実家に取り上げられたのでした。
アキラはちょうど自分の息子と同い年ぐらいでした。

上条はどう事件を捜査していくのでしょうか。アキラは一体誰なのでしょうか。

警察物として読むと、こんなに個人プレイしてもいいのかしら、と思えます。
あまりにも同僚を馬鹿にし過ぎです。
日本の刑事にはパートナーがいないのでしょうか?
外国の警察物ではパートナーとの関係がおもしろいのですがね。

ミステリーとしてではなく、家族の、父と子の物語として読むといいかもしれません。

朝日新聞 「患者を生きる 一条ゆかりの欲望」:緑内障編2009/11/11

漫画家の一条ゆかりさんが緑内障であるということは、どこかで聞いたことがあります。
昨日、元同僚がわざわざメールで、朝日新聞朝刊に一条ゆかりさんの緑内障の記事が出ていると教えてくれました。
今日は土曜出勤の代休だったので、図書館に行って見てみました。

一条さんの家系はもともと高眼圧傾向だったらしく、一番上のお姉さんは治療をしており、緑内障は未だ発症していません。
しかし、二番目のお姉さんは緑内障だそうです。
一番上のお姉さんに気をつけるようにと言われたにもかかわらず、一条さんは忙しさから一度眼科に行ったっきりで行かなくなり、その結果、2004年に緑内障であることがわかりました。
わかったけっかけは、たまたま視力検査の紙を見た時に片目がもう一方の目より暗いということに気付き、病院に行き、緑内障であるとわかったそうです。
私が某眼科で緑内障の左目が暗いと言った時に、医師はそんなことないと言いましたが、やっぱり暗いんですね。

彼女の場合は閉塞型と開放型の混合型の慢性緑内障だそうです。
緑内障にはいろいろな種類があり、一条さんのように高眼圧でなる場合もありますが、眼圧が正常でもなる場合があります。
私の場合は怪我が原因の緑内障で、眼圧は正常範囲内です。
彼女はレーザー虹彩切開術を行ったようですが、私の場合、レーザー治療はしても無駄だということで即手術になっています。
緑内障といってもいろいろな種類があるんです。
一般的に人間ドックで眼底検査をして、視神経乳頭陥凹とか書かれて眼科に行く人が多いようです。

一条さんも言っていますが、彼女のような有名人が病気の体験を語るということはとっても意味のあることだと思います。
彼女の記事を読んで、自分もそうではないかと思う人が一人でも早いうちに病院に行ってほしいです。

緑内障の認知度はとっても低いです。
私の同僚などは白内障や老眼と同じだと思っています。
一条さんの記事で、緑内障のことを知ってもらえたらいいなと思います。
彼女の記事はあと4回掲載されるそうです。

劇団四季 「コーラスライン」を観る2009/11/13

今日は劇団四季の「コーラスライン」を見てきました。
「コーラスライン」はニューヨークのブロードウェイで見たことがありますし、映画でも見ました。
はっきり言うと、それと比べちゃいけません。
舞台はブロードウェイの劇場で、コーラスラインのオーディションに参加するダンサー達の人生模様を描いています。

新進演出家ザックはオーデションで一人ひとりに自分の人生について語らせます。
オーディションを受けに来たダンサーの中に昔の恋人キャシーがいました。
彼女はかつてスポットライトをあび、ハリウッドにまで進出していました。
しかし、今は仕事がなく、一から出直す覚悟でオーディションを受けに来たのです。
ザックは彼女にコーラスはできないと断言しますが、キャシーは自分はできる。仕事が欲しいのと言います。
オーディションは続きます・・・。

アメリカのミュージカルを日本人で上演するというのは難しいものだとつくづく思いました。
というのも「コーラスライン」や「ウエストサイド・ストーリー」などアメリカの人種の多彩さを描いた作品の場合、日本人が演じると人種の違いなど全くわからなくなるからです。
例えば、私の好きなプエルトルコ人のポールの場合、全然プエルトルコ人らしく見えませんですし、ゲイの感じも出ていませんでした。
アメリカ社会を描くものは、日本のミュージカルには向かないと思います。
猫とかライオン、魔女なんか、あまり違和感がないですが。
他の不満な点としては、歌があまり上手くない人が多かったようですし、キャシーが一人で踊る場面がちょっと迫力に欠けました。
ポールの場面以外には”At the Ballet” も好きなのですが、う~ん、全然イメージが違いガッカリ。
”What I Did for Love” と”One”は歌自体がいいし、みんなで歌い踊るといいですね。

「エビータ」見ようかどうしようか迷っています。
エビータ役が野村さんらしいので、彼女の喉の調子がどうなのか・・・。

漫画家、一条ゆかり2009/11/14

朝日新聞の「患者を生きる」では緑内障に罹っている一条ゆかりさんのことが掲載されています。
その中で彼女のマンガの書き方が書いてありました。
今は便利になったのですね。パソコンでマンガが描けるんです。
一条さんは2008年からパソコンを使って描いているそうです。
60歳に近い年でも、マンガを描くためには新しいことを覚えてしまう、一条さんの執念には脱帽です。

新しく眼鏡を作ったのを取りに行くついでに、拡大鏡を見てきました。
今はいろいろとあるんですね。
でも仕事で書類などを見るのに、机に置いておいて使用することまでして働きたいかどうかは・・・人によりますが、私は嫌ですね。
そこは一条さんのような芸術家(マンガは芸術よね!)とは違いますから。
私のような凡人はのんびり老後を送るのがよさそうです。

宮本 輝 『骸骨ビルの庭』2009/11/16

戦争孤児と棄迷児の違いってわかりますか?
戦争孤児は、戦争によって親が亡くなり、孤児になった子のことをいいます。その一方棄迷児とは、親に捨てられた子のことです。
棄迷児などという言葉があるのを始めて知りました。


敗戦後、進駐軍に使用されていたビルを相続した阿部は復員してからそのビルに住むことにしました。このビルは、「骸骨ビル」と呼ばれていて、そこにはいつしか戦争孤児や棄迷児が住み着いていました。
困った阿部は友人で肺結核で死にそうだった茂木を引き取り、一緒に孤児たちの面倒をみることにします。
それから何年も経ち、孤児たちも成人し、阿部が亡くなり、骸骨ビルはある会社に買い取られました。しかし、ビルには元孤児の何人かが住み、事務所をかまえ、引渡しに応じようとはしないのです。そのため彼らを追い出す役目で、企業を辞めたばかりの八木沢が管理人として派遣されます。
八木沢は不思議な人で、いつしか元孤児たちや茂木と仲良くなり、彼らから昔の話を聞くことになります。
何故阿部と茂木は孤児たちをビルに住まわせ、面倒を見たのでしょうか。
そして、何故彼らは、阿部が死んだにもかかわらず骸骨ビルに住み続けるのでしょうか。

たいした事件もなく、淡々と日常が流れていき、終わります。
最後のあっけなさに唖然としますが、人間っていいなぁと思わせられる小説です。