帚木蓬生 『受命』2010/04/20


ここんところ、帚木蓬生づいています。
『国銅』を読んでいる最中です。彼の日本歴史を扱った小説はいいですよ。そういう小説ばかり書いていればいいのにと、ちょっと思ったりもします。

『受命』って実は続編でしたのね。
たまたま図書館にあったので、借りてきたのですが、途中まで読んで気づきました。まあ、前作を読まなくてもいいかな、と思うような内容なので、いいでしょう。

前作の『受精』はブラジルが舞台で、どうも人工授精がテーマの医療サスペンスらしいです。
死んだ恋人の子を産みたいがために、日本人の北園舞子がブラジルまで行っちゃって、そこでなにやらドイツ人医師とあり、日系ブラジル人医師に助けられるという話らしい。そこに、どうやらヒットラーの精子が関係して・・・。(と私は想像しただけですが)


そして、この『受命』になるのです。
しかし、今回は医療サスペンスなんかじゃありません。
赤裸々に描く北朝鮮の実態!
そう思いながら読みました。が、最後のことわりを読んで、ハァと脱力しちゃいました。
帚木さんの取り得は、ものすごい量の資料調査です。
どの本も簡単には書けない内容です。
書くために、どれほどの量の資料を読んだことかと、いつも感心していました。
それだからこそ、最後のことわりを読んで、全部フィクッションだというのぉ!と思いましたよ。
 
日系ブラジル人医師の津村リカルド民夫は北京の国際学会に出席している時に、北朝鮮から来た医師、許日好から北朝鮮にある平壌産院に来て、北朝鮮の医師に技術と知識を指導してくれないかと誘われます。
『受精』で津村に救われた北園舞子は、たまたま勤めている会社の会長を介抱したことから、北朝鮮出身の会長と親しくなり、一緒に北朝鮮に行かないかと誘われます。
同時期に、舞子と同じように津村に救われた韓国人、寛順は死んだ恋人の弟、東源がお世話になった社長の頼みで北朝鮮に潜入し、彼の父親に会うということを聞き、一緒に北朝鮮に行くことを決意します。

三者三様に、理由は違うのですが、北朝鮮に行くことになります。
実はこの北朝鮮行きも、偶然のたまものではなかったのです。何年もかけて丹念練られた最高指導者暗殺計画の一端だったのです。(サスペンスですねぇ)
 
実際に帚木さんは観光で北朝鮮に三回行ったそうです。
それ以外に、たくさんの資料を読んだことと思います。
北朝鮮の町の様子や脱北者のこと、社会情勢など綿密な描写は読む価値があると思いました。
でもねぇ。フィクションにしちゃったらねぇ。
残念です。