益田ミリ 『どうしても嫌いな人――すーちゃんの決心』2010/09/06

書名を見て、「そうなんだよー!」と思う人はたくさんいるんでしょうね。
私は嫌いというのではなくて、苦手という人がいます。嫌いということが、よくわからないのです。その人が遠くにいて私に関わらなければ、どんな人でも大丈夫なのです。嫌いという感情は、もっと強いものじゃないのかしらと思うのですが・・・?

いい人なので、どんな人とも合うんだと思っていたんですが、すーちゃんにもいたんですねぇ、嫌いな人が。(ネタバレあり)


カフェの店長になって2年目。せっかく上手くいっていたのに、オーナーの姪(?)らしい向井さんが正社員として働き始めてから、すーちゃんの心は波立っています。
 
「なにかひとつのことが嫌いなんじゃなくて
 いくつかの小さなイヤな部分が まるで たんすの裏のホコリみたいに
 少しずつ、少しずつたまっていき 大きなホコリになるんだ
 そして 掃除機で吸いこめないくらいに、その人のことが嫌いになる」
 
嫌いな人が他の人と仲良かったりすると、何故私は彼女のことが好きになれないのか、自分を攻めたりすることがありますよね。自分の方が変なのかしらとか思ったりして。嫌なことを言われたら、言い返せなかった自分を責めたりしますよね。
そんなことが続くと、心が「だんご結び」になってしまいます。
 
「いいじゃん 後のことなんて 先のことのほうが
 今のわたしには 大事なんじゃない?
 だってこんなことつづけていたら こんがらがって
 ほどけなくなっちゃう気がする
 嫌いな人のいいところを探したり、嫌いな人を好きになろうとがんばったり
 それができないと自分が悪いみたいに思えて また苦しくなる
 逃げ場がないなら その部屋にいてはダメなんだ
 そのさい脱走しかあるまい 」 

すーちゃんが出した答えは・・・。
正解はどこにもありません。自分で決めることですから。
救われるのはすーちゃんのお母さんの言葉です。いとこのサナエちゃんの結婚式のため上京した母親にすーちゃんにこういうのです。

「色々あったんだったら仕方なか
 それでよかが
 あんたも、もう36なんだから
 そろそろ自分のカンを使う年頃になってるが」
「あんたのためだったら お母さん、何回でも死んであげるが」

こんな風に娘を信じてくれる親がいると、勇気百倍ですね。
すーちゃんのこれからが楽しみです。