「フランダースの光―ベルギーの美しき村を描いて」@Bunkamuraザ・ミュージアム2010/09/14

「フランダースの光」は特に見たいと思っていた美術展ではなかったのですが(場所が渋谷だし・・・)、映画を見に行くついでというわけで、見てみました。
見てよかったです。

この展覧会の主役は、ベルギー北部のフランダース(フランドル)地方にある村、シント・マルティンス・ラーテムです。古都ゲントのすぐ近くにある村です。
この村は19世紀中ばから芸術家の集まるコロニーになっていたそうです。

《第一章》 精神的なものを追い求めて
ラーテム村に移住してきた芸術家の第一世代の作品が展示されています。
その中でも、一番最初に展示してある、アルベイン・ヴァン・デン・アベールの作品は、とっても美しいものです。
ヴァン・デン・アベールはラーテムの住人で村長もやったことのあるインテリで、村を訪れる芸術家たちに影響されて絵を描きはじめたそうです。
才能のある人だったのですね。

                   1910年頃 「夏の風景」 ヴァン・デン・アベール

彼の作品では、「シント・マルテンス・ラーテムの雑木林」が気に入ったのですが、写真が見つからなかったので、二番目に好きな絵を載せておきます。
こういう何の変哲もない風景が、心に染み入るのです。
彼の絵をできれば自室に飾っておき、毎日絵の世界に浸ってみたいと思いました。説明文に瞑想的と載っていましたが、こういうことを言うんですね。
この絵、個人蔵ですって。うらやましい。
 
     1911年 「冬の平原」  ヴァレリウス・ド・サードレール

第一世代の絵の中で印象に残ったのが、この冬の景色です。
ベルギーと私の故郷の北海道と場所は違っていても、冬景色は見慣れています。
この絵は忘れていた冬の厳しさを思い出させてくれました。
他に第一世代としてジョルジュ・ミンヌの彫刻やギュスターヴ・ヴァン・ド・ウーステイヌの絵が展示されています。
 
《第二章》 移ろいゆく光を追い求めて
「素朴な田園地帯の美しさを素直に表現する印象主義の画家達が移り住み、隣村にいたクラウスとともに第二世代を形成」したそうです。
第二世代のキーパーソンは、エミール・クラウスです。
彼の絵はポスターに使われていますから、おわかりでしょうが、村の生活を明るい色彩で生き生きと描いています。
彼の絵はリュミニスム(光輝主義)とも言われているそうです。
 
                      1906年 「ピクニック風景」 エミール・クラウス

この絵では手前に農夫らしい人たち、向こう岸には優雅にピクニックを楽しむ上流階級の人たちが描かれています。
手前はどう考えても、なんでこんな狭いところにこんなに人がいるのよと思ってしまいます。
それもてんで勝手に好きなことをしているような雰囲気です。
どうも家族には見えません。
一方上流階級の人たちはテーブルと椅子を運び、召使達もいて対照的ですね。
だからといって社会風刺をしているわけではないそうです。
ただの風景さ、とクラウスは言いたいんでしょうね。
 
     1910年 「6月の私のアトリエ」 アンナ・ド・ウェールト
 
たぶん、画家の中で唯一の女性がアンナ・ド・ウェールトでしょう。
彼女の絵には愛情や優しさがが感じられます。
自分のアトリエを誇らしげに見せ、無邪気に微笑んでいる女性を思い浮かべます。こんなアトリエ欲しいわ。といっても絵を描かないので、昼寝ばかりしていそうですが。
 
             1912年 「室内あるいは恋人たち」 レオン・ド・スメット

スメットはあまり好きな作風ではないのですが、唯一(二?)とても気に入ったのが、この「室内あるいは恋人たち」と「桃色のハーモニー」です。
淡い色の点描画で、両方とも室内を描いたものです。
この展覧会には健康的な野外を描いたものが多いのですが、この2枚のちょっと淫靡な感じがしていいんです。
エミール・クラウスには日本人画家の児島虎次郎と太田喜二郎が師事していたようで、彼らの絵も一緒に展示してあります。

《第三章》 新たな造形を追い求めて
第一世代と第二世代は印象派的手法で絵を描いていたのですが、第三世代は「疎開先で表現主義やキュビスムなどの新しい潮流に目覚め」、新しい様式で制作をしました。
残念ながら、ここら辺にくると私にはわからない領域になります。

このコロニーは1920年代まで続いたようです。
今度ベルギーに行くことがあったら、シント・マルティンス・ラーテムにも行ってみたいものです。