有川浩 『図書館戦争』シリーズ2010/09/26

司書さんの「結構若い子、読んでるわよ」という言葉に惹かれ(もちろん、私、若い子じゃありません。おばさんです)、ついつい手に取ってしまったのが、この『図書館戦争』シリーズです。
だって彼女の書いた『阪急電車』がおもしろかったんだもの・・・。


このシリーズ、『図書館戦争』、『図書館内乱』、『図書館危機』、『図書館革命』と続くんです。
その上、内容が・・・。
 
この本ってジャンルでいうとライトノベルなんですって。ライトノベル?軽い読み物?まあ、小説というより、漫画チックではあります。
と思っていると、漫画やアニメにもなっているんですねぇ。とっても映像化しやすい内容ですからねぇ。
 
大人のみなさんは何で図書館と戦争が重なるんだと不思議に思うでしょう。図書館はどう考えても、平和な世界ですよね。しかし・・・・。
 
戦時中の戦争反対の新聞記事、社会主義国の自由主義の本、つい先ごろ問題になったアメリカの牧師のコーラン焚書事件などを思い返して下さい。 
国の主義主張に合わない本は出版できないし、できたとしても検閲されて、破棄されましたよね。
 
日本がそういう世界になっていたら・・・。

「公序良俗を乱し人権を侵害する表現を取り締まるための検閲」が法律で認められ(メディア良化法)、メディア良化委員会がメディアを取り締まる権限を持つようになりました。
彼らは小売店の入荷物検閲、版元流通差し止め、放送禁止・訂正命令など言語統制を行っていました。それも武力(良化特務機関)でもって。

その良化特務機関と戦うことを余儀なくされた図書館が、表現の自由を守るために武装したのです。その名も、図書館隊。

主人公の熱血バカ娘が笠原郁。幼いころ、買おうと思っていた本を良化機関員から守ってくれた図書隊員のことが忘れられず、図書隊員を志します。

運動神経抜群(足がめちゃ速い)ですが、物覚えは悪いは、口は悪いは、熱血で突っ走る性格。それなのに何故か彼女、メディア良化委員会の超法規的検閲と戦う最前線部隊、図書特殊部隊(ライブラリー・タスクフォース)の一員に選ばれてしまいます。
 
彼女とは全く正反対なのが、同室の友人、柴崎麻子。美人で情報通。そつなく何事も行い、計算高い面も。
 
この2人に郁の属する関東図書基地司令稲嶺、図書特殊部隊隊長玄田、郁の直属上司で班長の堂上図書正、副班長小牧二等図書士、同僚の手塚一等図書士など個性豊かな面々が登場します。
 
読んでいて、ひとつ気になったことがあります。酒を飲んだ人にスポーツドリンクを飲ませたら・・・。
飲めない私も知らなかったのですが、スポーツドリンクって吸収がいいので、一気に泥酔状態になるそうです。本当かどうか試して、ご連絡下さい。
 
内容は詳しく書きませんが、くれぐれもまじめな話を期待しないで読んでください。大部分は関西風(かしら?)お笑いですから。バカ話山盛り!そして、ちょっぴりラブコメです。
 
でも、よくよく読むと、そうそうと言いたいことも書いてあります。

メディア良化委員会は「何を造反語として何を狩っているか、世間の人々には無関心でいてほしい」 検閲が不当であることが世間に知れ渡ってしまうから。

世の中のどんなことにも言えるのですが、自分に関係ないからいいと思っていると、気づいた時に取り返しのできない状態になっていることがあるのです。マザーテレサも巨漢映画監督マイケル・ムーアも言っています。無関心が一番よくないと。
 
一見、漫画を読んでいるのかと思うのですが、ちゃんと物を考え、言いたいことは言っているというライトノベルです。
 
ついでに、『図書館内乱』に出てくる『レインツリーの国』は新潮文庫に。一緒に読んでみることをお勧めします。