高橋克彦 『写楽殺人事件』2010/12/08



サントリー美術館で見た『吉原細見』のことが載っていたのは、この本です。
写楽って、9か月(とかおよそ10カ月とか)の間に140点以上の錦絵を出版し、忽然といなくなった絵師です。

写楽は誰か?

未だに謎で、たくさんの説があります。
例えば、有名な絵師―円山応挙、葛飾北斎、歌麿、谷文晁など―だったとか、阿波の能役者だったとか、実は蔦屋重三郎だったとか・・・。
説としては、写楽工房説とか写楽個人説、写楽別人説とかあるようです。

このミステリーは写楽の正体がわからないのをうまく使っています。

浮世絵研究で有名な団体は2つありました。
在野の研究家、嵯峨を中心としている「浮世絵愛好会」と武蔵野大学の西島を中心とした「江戸美術ゼミナール」です。

嵯峨は西島が理事をしている「江戸美術協会」に反旗を翻しており、嵯峨と西島の対立は二十年来になっていました。

ある日、嵯峨が遺体で見つかります。
西島の助手をしている津田は、嵯峨の義弟の水野が売りに出した、嵯峨の蔵書の古本を安くで手に入れます。
その時に津田は水野からある画集をもらい、その画集を見ているうちに、写楽とは誰かという新しい説を考えつきます。

その説は西島からお墨付きをもらうのですが、津田のようなものが発表しても相手にされないと、西島が新しい説として発表することになってしまいます。

ところが、写楽の新しい説を発表した後、西島は火事で死んでしまいます。

嵯峨と西島、この2人は殺されたのだろうか?
そして西島が出した説は・・・?

日本美術っておもしろいですね。
今頃になって気づきました。

高橋さんは浮世絵の研究者でもあるのですね。それでなければ書けないでしょう。
浮世絵を知るきっかけとしてはいい本です。

写楽とはだれかだけでもミステリーですからね。