坂本司 『和菓子のアン』2010/12/10

題名だけを見ると、和菓子職人の話かと思うかもしれませんが、ちゃんとしたミステリーになっています。
でも、殺人はありませんよ。


「学歴もない、資格もなければ、美貌もない」という三重苦(?)で、あるのは「食欲と体重と健康だけ」。身長150㎝、体重57㎏といえば、ちょっと小太り?
こういう女の子が梅本杏子です。
彼女は高校を卒業しても、何をやりたいかがわからないので、一番好きな食べることを生かせる仕事につきます。

それはデパ地下の和菓子屋のバイトです。

デパ地下と言えば、私、好きです。
ついつい余計なものまで買ってしまいます。デパ地下ほどワクワクする場所はありません。(あ、ほかには海外のマーケットがいいなぁ)

「和菓子舗・みつ屋」が杏子の職場です。
店長は椿さん。彼女は株の上がり下がりに一喜一憂して性格が豹変する「おやじ」の女性。彼女の和菓子に関する知識には誰も勝てません。
もう一人、正社員で職人希望の立花君は、見かけとは違い、なんと「乙女」な青年。
同じバイト仲間の大学生の桜井さんは・・・元ヤン。

この4人の面々が和菓子にまつわる出来事の謎を解いていくのです。
と言っても、椿さんに敵う人はいませんが。
椿さんは、言ってみれば、北森鴻の描く香菜里屋のマスター、工藤のような存在です。

そうそう、何故「アン」かというと、杏子さん、「お団子とか大福が似合うふっくらした女の子」だから、「あんこ」に似ている。だから「あんこ」をかわいらしく省略して「アン」にしたんです。

言ってしまえば、この本、餡の味のミステリーです。

例えば、ある会社の女子社員が和菓子の上生を10個買っていきました。この時は5月だったので、『おとし文』と『兜』を5個ずつでした。
次に来た時は、『おとし文』1個と『兜』9個。
三回目は、『水無月』9個。

さて、このことからどういうことが彼女の会社に起こったのでしょうか。

てな具合に、和菓子から推理していくという楽しいミステリーです。

や~、和菓子もすごいです。
日本文化は四季というものを大事にしてきましたが、和菓子にもあるんです。

上生を見てみると、本の中には次のようなものが出てきます。
5月・・・『おとし文』、『兜』、『薔薇』
6月・・・『紫陽花』、『青梅』、『水無月』
7月・・・『星合』、『夏みかん』、『百合』
8月・・・『蓮』、『鵲』、『清流』
9月・・・『光琳菊』、『跳ね月』、『松露』
12月・・・『柚子香』、『田舎家』、『初霜』
1月・・・『早梅』、『雪竹』、『福寿草』、『風花』

書いてない月はどういうものなのか知りたくなりますね。

『星合』は七夕の別名で、北海道の家の辺は8月、東京は7月です。(他の県はどうなのかしら?)
「和菓子舗・みつ屋」はこのことを知っているので、七月と八月に七夕に関する和菓子を売っているんです。

アレ、八月に七夕に関係する和菓子がある、と思う人がいるかもしれません。
何故八月に『鵲(カササギ)』でしょうか。
本にも書いてありますが、七夕の日に雨が降ると天の川の水かさが増し、牽牛と織女が会えなくなります。その時に、たくさんのカササギが現れ、身体で橋を作ってくれたので、無事に会えたという話があるのです。

七夕でもう一つ、おもしろい話が載っていました。
台湾で七夕というと、なんと日本のバレンタインデーと同じ日なんですって。
はい、もちろん、このことも謎を解くヒントとなっています。

後は、ぼた餅とおはぎの違いは分かりますか?
ここで書いちゃうとつまらないので、わからない人は是非、読んでみてください。

書いていると、棒茶と一緒に和菓子が食べたくなりました。
ここら辺で失礼して、買ってきたお団子をいただきます♪

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