高橋 克彦 『北斎殺人事件』2010/12/19



写楽に続き、葛飾北斎を基にしたミステリーです。
この浮世絵シリーズは四作まで出ているようです。

葛飾北斎というと、宝暦十年(1760年)に本所割下水で生まれました。 
富嶽三十六景が有名です。


他に面白そうだと思ったのが、北斎漫画です。
エ、漫画を描いたのと思われるかもしれませんが、本当の漫画ではなく、人物、風俗、動植物、妖怪変化などの約4000図を、北斎がスケッチ風に描いてあるのを、北斎漫画と言っているのです。


ろくろ首なんて懐かしい・・・。

北斎は90歳まで生き、その間に引越し90回以上、雅号を変えること30回で、たくさん絵を描いていたわりに、一生貧乏と言われていました。
引越し貧乏とはこのことかしら?

『写楽殺人事件』で見事な推理をした津田ですが、彼は大学には残れず、冴子と結婚し、盛岡の私立中学で日本史を教えています。

「美術現代」から死んだ冴子の兄国府の遺稿集を出版しないかという話が持ち上がります。

「美術現代」の杉原から呼び出され、待ち合わせ場所に行くと、杉原と一緒に美しい女性がいました。彼女は執印画社長の執印摩衣子でした。
彼女は自分のところで国府の遺稿集を出したい。そのために国府の考えた北斎隠密説を津田にもっとリサーチし、書き直しもらいたい。そして、未発表の北斎の絵を見つけたいと言うのです。

この話を引き受けた津田でしたが、実は妻がいながら摩衣子に惹かれてもいました。男って・・・。

知り合った歌麿研修者の塔馬双太郎の助けを借りながら、北斎隠密説に挑む津田。
彼って純朴で人を疑うことを知らない人で、彼の性格とは関係ないのですが、何故か途中から主役が塔馬双太郎に変わっています。

話が出来過ぎですが、北斎の未発表画が見つかり、遺稿集も無事出版できるかという時に、絵を東京に運んでくる途中で事故が起こり、絵は燃えてしまいます。
このため遺稿集出版は頓挫してしまいます。

この頃、アメリカで日本人殺人事件が起こっており、渡米していた摩衣子と彼女の父で日本画壇の巨匠、岐逸郎がこの事件に何らかの関係があるのではと疑われていました。

しかし、そんな中、岐逸郎が自殺をしてしまいます。

焼失した北斎は本物だったのか?
北斎画と日本人殺害の接点はなんなのか?
何故、岐逸郎は自殺したのか?

途中から主役交代した塔馬双太郎が謎に挑みます。

浮世絵に関して、まったくわからない私ですが、興味を持てる内容です。浮世絵研究者が読むと、どうなんでしょう?
高橋さんは浮世絵も研究しているというので、内容は真実味はあるんでしょうね。

主人公のはず(?)の津田が脇役に押しのけられていくのが、かわいそうです。
次の『広重殺人事件』では悲劇が起こって、どうも塔馬双太郎が主役の座を取りそうだし・・・。
四作目は『歌麿殺贋事件』ですから、歌麿研究者の塔馬が主役ですよね。

私の(くだらない)推理がどうなるのか、楽しみですわ。


本を読んでいるうちに行きたいところが出てきました。
小布施です。
小布施には北斎館があり、そこで北斎の肉筆が見られるそうです。
岩松院には葛飾北斎最晩年の大作「大鳳凰図」という21畳敷の天井絵があります。
長野に泊まると、小布施と吉永小百合のJRの写真が撮られた戸隠神社にも行けそうです。春になったら行こうかしら。


「大鳳凰図」とはこんなのです。写真では小さいですね。本に出てきたように、横たわって見たいものです。