北村 薫 『飲めば都』2011/06/06



ある出版社の文芸編集者、小酒井都さんのお話です。
彼女は飲むと大変。と言っても飲んでもつぶれず、吐いたり寝たりの醜態はさらしません。しかし、「普段より、過激な行動をする」のです。が、本人は全く何をしたのか覚えていないのです。
例えば、ワインを持ったまま大笑いをし、編集長の白シャツにぶっかけてしまい、編集長は帰ってから奥さんに何故こんなところにワインのシミがあるのか疑われたり、トートバッグを忘れたと思って居酒屋に戻ったのになく、タクシーで戻るとトートバッグはタクシーを降りて座った石のところにあったり・・・。

一番笑ったのは、気になる人と会うので、刺繍入りの勝負下着を着ていったのに、ついつい飲んじゃって、家までその人を連れてきたのに記憶がなく・・・。起きてから、ふと自分の体を見てみると、なんと○○ツがない。一体○○ツはどこに?
記憶をたどってみると、その人に何か渡したような。まさか○○ツをあげた!
次の日、真っ青になって連絡し、会って渡したものを返してもらうと、お城の写真集でした。
さて、○○ツはどこに?

都さんと出版社の同僚たちもおもしろいです。
飲むと所かまわず寝てしまう早苗さん。白いジーンズをはいて出かけて、帰って来て階段の下で寝ていると、後に帰って来た旦那のケン君が「足が血だらけだよお」と騒ぎます。次の日見てみると、白いジーンズには染みひとつない。一体何があったのか・・・?
その早苗さん、おもしろいことを言います。

「恋愛はうっかり、結婚は何となく、これが秘訣ですね」

私は飲めない(顔がすぐに赤くなります。アセトアルデヒドを分解する能力が弱い)ので、残念ながら(?)都さんや早苗さんのようなことは一度もありません。
ワインもビールもグラス一杯でいい気分。体調がよい時に時間をかければもう少し飲めます。
飲めないというと、「人生の楽しみをしらない」と言った人がいます。まあ、いいじゃないですか。飲めなくても楽しみ知ってますから。
一度でいいから飲めるようになって、酔っぱらって人にからんで、記憶にないと言ってみたいとも思いますが。吐いたり、二日酔いになるのは嫌ですね。

そうそう、気になったのが、「象鼻酒」。調べてみると本当にそんな飲み方があるんです。
昨年7月に奈良の法華寺で飲めたそうです。
「象鼻酒」とは古代中国から来ていて、ハスの葉に酒を注いで茎をストロー代わりに飲む「象鼻(ぞうび)盃」で飲むお酒のことをいいます。

この本、呑み助の話ばかりではなりませんので、飲めない人も安心して手に取ってください。極上のユーモア小説です。