新国立劇場バレエ団 『ロメオとジュリエット』その22011/07/02

2010年7月1日(金)19時開演


  <キャスト>
ジュリエット:リアン・ベンジャミン
ロメオ:セザール・モラレス

マキューシオ:福田圭吾
ティボルト:輪島拓也
ベンヴォーリオ:菅野英男
パリス:厚地康雄
キャピュレット卿:森田健太郎
キャピュレット夫人:湯川麻美子
乳母:遠藤睦子
ロザライン:川村真樹

29日に引き続き『ロメオとジュリエット』を見てきました。19時開演なので、終わるのが22時過ぎ。会社から駆けつけるにはいいのですが、終わりが遅く、これじゃあ金曜日以外は行けません。というか、行くと次の日が辛いです。
それでも見に行ってよかったです。

ゲストということで、さすが本場。もう何回も踊っているのでしょう。振付が体に沁みこんでいるという感じです。昨日の小野さんは、一つ一つの振りを忠実に踊っているのが初演ということもあり、好印象でした。彼女の体の柔らかさと足の表情は綺麗でした。

リアンさんは、最初馬面(失礼)なので、それでちょっと可憐なジュリエットという感じはしなかったのですが、流石ロイヤル・バレエ団のプリンシパル。踊りを見ているうちに気にならなくなりました。
バルコニーの場面なんか、素敵でした。年齢が47歳って、本当なんですか?

モラレスは初めて見たのですが、童顔ということもあり、ロメオにぴったりでした。何と言ってもデニスよりもしっかりと(最初から)踊っていました。足先が美しく、ジャンプも安定していたし、リアンとは同じバレエ団ではないので、慣れていないと思うのですが、スムーズなリフトだし。
小野さんと踊ったらどうだったのかと、ちょっと思いました。

前回は3人の娼婦の踊りが迫力ありましたが、今回はあの雪男、マンドリンの踊りがよかったです。踊るメンバーにより変わるのですね。
群舞の町の様子はまあまあですが、やっぱり舞踏会が今一つでした。あの独特の迫力と雰囲気って日本人には出せないのかしら?


新国立バレエ団の次回公演は10月の『パゴタの王子』です。小野さんがさくら姫で出る回のチケットを買おうと思っています。
これに先駆けて、オープニング・ガラが10月1日にあります。演目は第一部、『アラジン』、第二部、「パレエ・パ・ド・ドゥ三選」で『ドン・キホーテ』、『ロメオとジュリエット』、『眠れる森の美女』と『シンフォニー・イン・C』から最終楽章。
このチケットも買おうかしら。

そうそう、あのザハロワさん、お子さんが生まれて、復帰したようですが、妊娠のため新国立劇場で『白鳥の湖』を踊れなかったので、その代わりなのか来年の5月に『白鳥の湖』を踊るようです。なんと相手は引退したというウヴァーロフ。見に行かなくちゃ。

今月はABTも来るので、バレエ三昧です。

J.D.ロブ 『学びの園に葬られ』2011/07/03

このシリーズ、売れているのでしょうか?他のシリーズと比べると、随分早く翻訳されています。


私立学校の教師が、教室で愛用のカップに入ったココアを飲んで死亡しているのが見つかりました。
イヴが捜査をします。
その後、容疑者の一人として浮かび上がってきた、学校関係のたくさんの女性と関係していた教師もプールで死亡していました。

イヴが出した結論は・・・。

今回は殺人事件よりもイヴとロークの関係に興味が湧いてきます。
というのも、ロークの前に、彼が昔関わっていた非合法の仕事を一緒にやっていた、元恋人のマグデラーナが現れたのです。
何故今頃、彼女はやってきたのか?
彼女は「美人で、上品で、あか抜けていて、頭が」よく、そして何よりもロークを裏切った女なのです。
イヴのこころが揺れます。

「わたしはひたすら彼を愛する。それにしても、なぜわたしは、愛がどれほどの恐れとみじめさを伴うものか、忘れていたんだろう?ロークと出会う前は、彼女はこんなものは何ひとつ感じたことがなかった。この苦しさも、この痛みも、失うことへの不安も」

ミステリーとしては、犯人が唐突にわかってしまって残念ですが、イヴとロークがどうマグデラーナに対処するのか、そして、二人の結びつきが一層強くなる様子が
読みどころです。
が、そろそろマンネリかしら?(まだ読んだことがないけれど)ハーレクインロマンス風になってます。

五木寛之 『海外版インド② 百寺巡礼』2011/07/04



インドのブッダ最後の旅のルートの後半が書かれています。
その旅よりも印象的だったのが、二人の人です。
この2人はインドのカースト制度による差別をなくすために闘った、そして今も闘っている人です。

カースト制度はヒンドゥー教にまつわる身分制度で、4つのカーストに分かれています。上のカーストから書くと、バラモン、クシャトリヤ、ヴァイシャ、シュードラ、そしてカースト制の枠外としてのアンタッチャブルと言われれている不可触民という風になっています。現在もカースト制度は続いており、IT産業がいかに栄えていても、インドの農村に行くと未だ電気のきていないところは存在しますし、不可触民に対する差別はひどいものです。
その一例として、インド農民(不可触民)の自殺が多いそうです。1998年から2003年の6年間に10万人にもなるそうです。農業をするために井戸掘りや肥料などの資金を借金し、返済できずに自殺するのだそうです。
『女盗賊ブーラン』という本を読んだことがあります。この本の中には目を覆うような悲惨な不可触民の女性の生活が書かれています。今もこの状態が続いているのです。

アメリカのキング牧師やインドのガンジーについて知っていても、インドのアンベードカル博士については全く知りませんでした。
アンベードカル博士は不可触民として生を受け、後にアメリカで経済博士号を取得し、イギリスで弁護士資格を取り、インドの法務大臣になり、インド憲法を起草した人です。

彼は「こころの改革によらなければ差別はなくならないと考え、ヒンドゥー教徒であることを捨て、仏教徒として改宗宣言」をし、不可触民の差別解消のために闘かいました。
もともと仏教は平和的なものですが、社会を変革するためには闘わなければならないというのがアンベードカル博士の考えでした。

アンベードカル博士はガンジーと同じ時を生きた人です。初めて知ったのですが、ガンジーはカースト制度を擁護する立場だったのです。アンベードカル博士が不可触民階層にも分離独立選挙を認めるようにガンジーに迫った時、ガンジーは”死の断食”に入り、博士はガンジーに屈したそうです。

残念ながらアンベードカル博士は志半ばで亡くなりました。
法務大臣までしたのに、彼の遺体はムンバイの一般市民用の火葬場では受け入れられなかったそうです。それほどカースト制度は堅固なのです。

このアンベードカル博士の意思を継いだのが、日本人の佐々井師です。

彼らの考える仏教とは「利他一利」。
「自らのいのちは捨てても他者のいのちを救う。何の見返りは求めない。つまり自利を捨てた一利のみ」

彼らの仏教は「戦う仏教」とも言われています。それ故に批判もあるようです。
彼らについてもっと調べてみようと思っています。

パオラ ・カルヴェッティ 『本のなかで恋をして』2011/07/06

イタリアの小説です。
とっても私好みの本でした。


まもなく50歳の誕生日を迎えようという時に、エンマは≪夢うつつ≫という本屋を開くことに決めました。
叔母の遺産で文具店を譲られたからです。
この本屋、普通の本屋ではありません。恋愛小説専門書店なのです。
ただ恋愛小説を置いてあるだけではなく、<傷心>、<手紙>、<愛の巣>、<とれたてのみずみずしい愛>などとコーナー名を決めて、その名にあった小説が置いてあるのです。
 
エンマは商才があるらしく、次々と夢を実現していきます。
中庭に面した管理人室が空くのを知ると、バールを開くことにします。
その名も≪夢のロカンダ≫。
「ロカンダ」ってイタリア語で「宿」という意味らしいです。

上の階が開くと、今度はホテルまでやっちゃうんです。
それも作家専用のホテルです。

う~ん、うらやましい。ホテルはやりたくないですが、本屋とカフェ、やりたいです。

これだけでも私の興味を引いたのですが、これじゃあ、普通の人にはおもしろくないですよね。
この本、恋愛小説なのです。

≪夢うつつ≫を開いてまもなく、エンマは『パリ 愛のバラード』という本のあいだから、蛍光イエローの小さな旗が突き出ているのに気づきます。
本のビニールが破られたようなので、値段のシールをはがすと、シールに緑のマーカーで名前と電話番号が書いてありました。
名前はエンマの知っている名前でした。
フェデリーコ。公立の理数系高校五年生の時につきあっていた男の子。
たまたま≪夢うつつ≫に入ったフェデリーコが、エンマに会いたくてしたことでした。

エンマには17歳の息子が一人いて、離婚していました。
フェデリーコは建築家で、今はニューヨークのプロジェクトを担当しているので、ニューヨークに妻と13歳の娘と暮らしています。

二人は私書箱を使い、文通することにします。

文通なんて、今の世の中でやっている人がいるのかしら?
そう思うでしょう。
実はエンマはメールが嫌いなのです。

二人の手紙が実にいいのです。
手紙の良さを忘れていました。
今のように、いつでも連絡が取れる時よりも、メールがなく携帯もない時の方が、ひょっとしたら恋愛が十分に育つ時間があったかもしれません。
今はお手軽な恋愛ばかりになってしまったのかも…?

本の中でフェデリーコが手掛けているニューヨークのモルガン・ライブラリーって、本当にあるんですね。


銀行家のJ.P.モルガンが1906年に膨大なコレクションを収めるために作った図書館で、世界に三冊しかない『グーテンベルク聖書』の一冊やレンブラントの素描、有名な音楽家の楽譜、著名人の直筆の手紙や原稿などがあるとか。
100周年を記念して、イタリアの建築家によって改築され、2006年に再オープンしたのだそうです。
古い建物とガラス張りの新しい建物とが美しいらしいです。
ニューヨークに行くことがあったら、行ってみたい場所です。

ジル・チャーチル 『今をたよりに』2011/07/07



叔父さんから莫大な遺産を相続しましたが、相続する条件として、田舎の屋敷に
10年間住まなくてはならなくなったロバートとリリー兄妹のシリーズです。

妹の誕生日プレゼントの本が届いていないかと駅に行ったロバートは、三人の年輩の女性が郵便袋の中を探って、他の人の郵便物を調べているのを見ます。
そこでロバートは郵便物の仕分けをポーターにさせてはどうかと思いつき、色々な人の意見を取り入れて、「郵便小包センター」の設置に向けて頑張ります。
ロバートも人の役に立つことを考えるようになりました。今回はロバートの頑張りがメインです。

その頃、ロバートとリリーの暮らす屋敷<グレイス&フェイヴァー>の庭から身元不明の白骨死体が見つかります。その上、郵便物の仕分けをお願いしようと思っていた駅のポーターが殺されます。
ドイツから引き揚げてきた仕立て屋の店に赤いペンキで鉤十字が書かれたり、放火が起こったりと事件が立て続けに起こります。
新しく<グレイス&フェイヴァー>の住人になった警察署長のウォーカーと協力し、ロバートとリリーは事件を解決しようとします。

このシリーズのおもしろいところは、1930年代のアメリカがよく描かれているところです。
アメリカが第二次世界大戦へと突入しようとしています。
次はどういう事件が起こり、ロバートとリリーはどう成長していくのでしょうかね。

森 健 『勤めないという生き方』2011/07/08



今、何か新しいことをやりたいと考えています。
なんか組織が合わないな~という思いが、昔から微かにあったのですが、この頃強くなってきているのです。
相棒曰く。「今頃気づいたの。あなたは組織に合わないよ」

というわけで、単純に題名に惹かれて読んでみました。
しかし、これは若者向きの本でした。
20代で会社に勤めたけれど生き方に迷っている人が読むと、こういう生き方もあるんだと勇気づけられるでしょう。

13人の若者が登場しています。
ユニクロから手染め職人へ、教材会社から靴職人へ、トヨタから隠岐島の特産品ネット販売へ、博報堂からフリーの建築家へ、講談社からカフェオーナーへなど会社に勤めてから転職する人が多いです。
会社に勤めているうちに、「どうしてもしたいこと」が出てきたのか、「どうしてもしたくないこと」が臨界点に達したから会社を辞めたのか、人それぞれです。
彼らに共通するのが、お金にこだわらないことです。

NPOのACE代表の岩附さんはこう言っています。

「働くってどういうことか、私も何度か考えたことがあります。結論から言えば、仕事イコールお金じゃないんですね。お金は何か実現したいことを満たすためのもの。その目的が人によっては家族だったり、趣味だったりしますが、私の場合はそれが児童労働をなくすことだった。児童労働をなくそうと自分の時間を使い、その対価として給与をもらいます。私としては自分がしたいことをして、収入もいただけてるんです」

不況でなかなか内定をもらえないと悩んでいる人はこの本を読むと、違和感を持つかもしれませんね。だって、この人たち、就職できてるんだものね。その上、自分のやりたいことがはっきりしているんだもの。
何をやりたいかわからないし、受けた企業が落ちまくりの人にとっては全然違う世界のことですものね。
そういう人のために、「まとめに代えて」の中に書いてあることを載せておきます。

「第一、最初から好きな仕事に就ける人などまずいない。かりに第一志望の企業に就職しても、想定外の業務をさせられるほうが一般的だ。仕事はそうやって学んでいくものだし、そうやって活動していくなかで自分のしたいことが見えていくものでもある。
 要するに、仕事とは「どうしてもしたいこと」と「とりあえず生活を支えること」の間のどこかにあるのだ。
 それは単純な二項対立ではなく、微細なグラデーションがある。その合間で納得したり、妥協したりして仕事を選ぶ。仕事へのモチベーションも当初のままではない。時間が経ち、業務に従事する過程で、おもしろさも深まっていくし、おもしろくなればモチベーションも高まっていく。ふつうはそういう風にできている」

私には参考にはならない本でしたが、若者の頑張っている姿は素敵です。ホント、みんなしっかりしているよ。

私は「遅くなってもやったほうがいい」、この言葉のように、何歳になってもやりたいですがね。もうちょっと考えてみますわ。

「ミルク」を観る2011/07/09



お杉だかピーコだかが「いいわぁ」と言っていた「ミルク」を見てみました。
主人公のハーヴェイ・ミルクはゲイの活動家でゲイ・ムーブメントのために闘い、アメリカ史上初めて同性愛者(と公言していて)で公職に就いた人です。
(ネタバレあり)

1970年、40歳の誕生日の日に、ウォール街で働いていたハーヴェイ・ミルクは20歳年下のスコットと出会います。(映画ではハービィと発音しているのに、何で日本語になるとハーヴェイなのかしら?)
1972年に二人はサンフランシスコに行き、カストロ通りで「カストロ・カメラ」という店を開きます。
カストロ通りはゲイたちが集まる場所で、やがて「カストロ・カメラ」は若者や活動家のたまり場になります。

トラック運転手組合からクアーズビールをボイコットするように頼まれ、ハーヴェイは仲間たちにバーでクアーズを飲まないようにと働きかけます。そのおかげでクアーズはおれ、お礼としてトラック協会はゲイの運転手を雇ってくれました。

その頃、ゲイ・バーでは警察の手入れが入り、ゲイは目の敵にされていました。ハーヴェイたちは常にホイッスルを持ち歩き、危険を感じたら吹き、ホイッスルの音が聞こえたら、助けに駆けつけるようにしていました。

ハーヴェイはゲイも黒人コミュニティと同じように、代弁者が必要だと感じていました。彼は市の市政委員に立候補することにします。
ゲイの大物に会いに行きますが、時期尚早だと協力を断られます。
結果は落選。
ミルクは身なりから生き方まですべて変えます。が、2回目も落選。
1976年にはカリフォルニア下院議員に立候補しますが、またもや落選。
1977年、4度目のチャレンジで彼は市政委員に就くことができました。

1977年テート郡で同性愛者への差別を禁じる条例の廃止を求める投票が行われ、条例が廃止になりました。ゲイ嫌いの美人歌手アニタ・ブライアントが反ゲイキャンペーンを大々的に行っていたのです。(この人、カトリックらしいです。この不寛容さが恐ろしい・・・。)
このキャンペーンはゲイの教師追放にまで及ぼうとしていました。

ハーヴェイはゲイの公民権獲得のために闘うことを決心します。
彼の考えたことは、一人一人がカミングアウトするということです。身内にゲイがいる人は反対票を入れるはずだからと。

ハーヴェイは身の危険を感じていいました。自分が暗殺された時に聞いて欲しいとテープに遺言を吹き込んでいたのです。
彼は恐れていたように、1978年11月27日、同僚議員のダン・ホワイトによって、市長と共に市庁舎内で射殺されます。

ダンはハーヴェイに嫉妬していたのでしょうか?
同じ新人議員なのに、ハーヴェイは活躍し、自分は何もやれない。ハーヴェイが協力しないからだ。
もしくはゲイ嫌いか、自分もゲイなのにカミングアウトできないとか。
映画でははっきりとはわかりませんでした。ダンの中に屈折した思いがあったのだけは明らかです。
裁判では弁護側はとんでもないことを言っています。ジャンクフードを食べ過ぎて、精神状態が正常ではなかったとかなんとか。それで禁固7年。実際は5年服役して仮釈放になりました。
判決後、暴動が起こったそうです。
ちなみにダンはその後自殺をしています。

ハーヴェイがゲイの権利のために闘ったということはわかりました。
でも、つきあった男性のうち一人(スコット)以外が自殺というのは何なんでしょうね。彼には依存症の恋人を持つ傾向があり、彼のためにどうにかしてあげなくてはと思う何かがあったのでしょうね。1970年代のアメリカでゲイであるということは、はかりしれない苦悩があり、人格形成に何らかの影響を与えているはずですから。
スコットがハーヴェイの元を出ていかなかったら、と思います。

最期に彼がテープに吹き込んだスピーチの中から希望について語った部分を載せておきます。

「希望がなければ
 ”私たち”はあきらめてしまう
 もちろん希望だけでは
 生きられない
 でも希望がなければ 人生は生きる価値などない
 だからあなたやあなたたちが
 希望を与えなくては」

ニューヨークにはハーヴェイ・ミルク・ハイスクールという15歳から21歳までのレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーのための公立高校があります。
2008年カリフォルニア州は彼の誕生日の5月22日を「ハーヴィー・ミルク・デー」としました。

まだまだ「こころの差別」は無くなっていないというのが現実のようです。

近藤史恵の本2011/07/10

一冊ずつ紹介すればいいのでしょうが、なにしろ読んだ本で紹介していないものが結構あるので、まとめて書くことにしました。本は売ってしまったので、手元にないので、記憶に頼って書きますが、違っていたらごめんなさい。

まず、近藤さんが書いた不思議な恋愛小説『アンハッピードッグズ』です。


パリに住む真緒と岳、そして犬の弁慶。

真緒は弁慶の面倒を見るということで、パリにやってきて岳と同棲のようなものをしています。
ある日、岳が空港で置き引きにあったカップルを連れて帰ってきます。
ホテルに行くお金もないということで、とりあえず家に泊めてあげるのですが、それからそのカップルは居座り、微妙な4人の生活が始まります。

真緒と岳のパリ生活はどうなるのか・・・。

お次は私のお気に入りのシリーズ。『カナリヤは眠れない』と『茨姫はたたかう』、『シェルター』の三冊です。表紙の絵が好きなのですが、どうも今は変わっているようです。



「週刊関西オリジナル」という週刊誌の編集部に勤める小松崎雄大は、朝起きたら、何やら首が変でした。寝違いたのです。なんとか仕事に行くのですが、編集長から最近の女の子の金銭感覚について、記事を書くように言われます。
女の子の買い物傾向を調べようと心斎橋筋を歩いていると、女の子にぶつかり、首の痛みがぶり返してきました。

その女の子に上手な接骨院があるからと、強引に連れて行かれたのが、「接骨・整体 合田骨院」。合田力という34,5歳のきゃしゃといえる体格のむさくるしい男のやっている整体院でした。
この力先生は腕がよく、すぐによくなったのですが、ほって置くとまた痛くなるといわれます。

ぶつかった女の子はこの整体院の受付をやっていました。姉妹で受け付けをやっているようです。
合田力先生は不思議な人で、人の体の声を聞くことのできる人です。
実は姉妹も力先生に助けられたのです。(『シェルター』に詳しく書かれています)

雄大と整体院の人たちが絡んだ、現代特有の精神的・社会的問題を描いたミステリーです。
セックス依存症、摂食障害、買い物依存症、ストーカー、いじめ、性的虐待などなど。

突き放すようでいて、暖かい力先生がとってもいいです。
彼のような整体師なら、体を任せてもいいです。(私の鍼灸師は女性です)

自分で精神的にもろいなと思っている人は読まない方がいいでしょうね。
ちょっと・・・という内容もありますから。

四作目はまだ出ていないようです。


そろそろ土用の鰻が近づいてきましたね。
谷中にある鰻屋に行ってきました。「う」という字が書いてある建物だったので、見た当初はなんだと不思議に思ったのですが、御品書きに鰻があり納得でした。


鰻の串焼きが無性に食べたいと相棒が言ったので、頼んでみました。


9本ありますが、どれがどれだか説明されたのに覚えられませんでした。めずらしい部分も食べられるので、一度は挑戦するのもいいでしょう。

もちろん〆は鰻重です。上と特上は鰻の質ではなくて、大きさの違いだそうです。
相棒は白焼きを頼みました。白焼きも関西風と関東風があり、関東は焼いた後に蒸すのだとか。蒸した方がふっくらとするそうです。


タレが甘目です。好き好きですが、私的にはくどかったかも。
若いアルバイトさんが多く、ちょっと料理の出し下げがガサツな感じがしました。
個室の座敷があるので、大人数の宴会によさそうな店でした。

「オーケストラ」を観る2011/07/13



この映画、ソ連の方、怒らないでね。ユーモアだと思ってみてね、と言いたくなりました。
以下、ネタバレあり。

ボリショイ劇場で清掃係をやっているアンドレイは、30年前はマエストロと呼ばれた名指揮者でした。
ユダヤ人演奏家と楽団のために政府に楯突いたため、今は清掃係をやらされているのですが、音楽を忘れたことはありません。『モスクワ音楽組合』で同じようにオーケストラを追われた楽団員と会い、楽器なしの演奏をしています。
妻のイリーナはやり手の手配師。結婚式や集会などにサクラを集めて派遣しています。

いつものように清掃をしていたアンドレイはパリのシャトレ座から来たファックスを見て、チャンスだと思います。そのファックスはボリショイ・オーケストラへの出演依頼でした。

アンドレイにはパリに行きたい理由があったのです。

昔自分を陥れたイワンがフランス語を話せるので、昔の報いと脅し、シャトレ座と交渉させます。(彼も変な奴で、昔利用したホテルやレストランを予約するように契約書に書いたりします。共産主義コチコチの奴です。)

その一方、昔の仲間に声をかけ、パリ行を説得します。

ところが、飛行機代は後払い。どうしましょう。お金がない・・・。
たまたまサクラで行った結婚式で出会ったチェロを弾くマフィアにスポンサーになってもらって、なんとか飛行機代は確保できました。(この結婚式もとんでもない)

元楽団員たちは何も持っていません。ジプシーらしきバイオリンを弾くロマに頼んで、パスポートと楽器、服を用意するように頼みます。

パリへ向かう当日。空港行きのバスは来ません。お金を先払いにしちゃったら、来ないんだって。(今はそんなことないですよね)
仕方なく歩くみんな。先が思いやられます。
空港につくと、早速偽造パスポート作り。(こんなこと空港でやるのか)

なんとかパリに着くと、楽団員たちは出演料の前金を要求し騒ぎだす始末。フランス人、かわいそう。彼らは100ユーロ貰うと夜の街に消えていきました。

アンドレイが契約する時に言い張ったのが、ヴァイオリニストはアンヌ=マリー・ジャケにすることでした。

ジャケがリハーサルに来ると、オーケストラの面々は集まっていません。みんなあれから帰っていないんです。(何をしているのかは、映画を見てね。笑います)
初めてのオーケストラとリハーサルができないなんてと怒るジャケ。(当たり前よね)
コンサートを止めた方がいいとまで言いだすのですが、アンドレイのある言葉でコンサートに出ることを決めます。

さて、コンサートにみんなは来るのでしょうか?
そしてコンサートは無事出来るのでしょうか?
アンドレイとジェケの関係は?

30年も楽器を持って演奏していなくて、リハーサルもしなくて、演奏がまともにできるはずがありませんよね。
しかし、映画です。
最期のチャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」の場面だけで、この映画を見たかいがありました。
誰の演奏なんでしょうね。すばらしいです。

レスリー・メイヤー『感謝祭の勇敢な七面鳥』2011/07/14

主婦探偵ルーシー・ストーン・シリーズの七作目。


史上最悪のクリスマスクッキー交換会』で来年大学生となっていたトビーが大学生になり、感謝祭に戻ってくることになります。
実はルーシーはトビーが自分に似ているので、子どもたちの中で一番かわいいと思っていたのです。
ところがトビーはなかなか帰って来ず、やっと帰って来たと思ったら真夜中で、友達を一人連れてくるはずだったのに、三人に増えていました。
久しぶりに二人でゆっくり話ができると思っていたのに、トビーと話す暇はないし、朝は遅くまで寝ているし、部屋は汚いし・・・。

ルーシーように娘を大学へ行かせた友達は、子どもは「帰ってきたときには、送りだしたときと同じ子じゃない」と忠告してくれて、頭ではわかってはいたのですが・・・。

自分のことを考えてみても、大学で一人暮らしを始めると、自由さに慣れてしまい、実家に帰ると窮屈に感じました。親はたぶん頭にきていたんでしょうね。そういえば朝寝ていたら、枕元で掃除機をかけられましたっけ。

さて、事件はというと、新聞記者として町の行政委員会の聴聞会を取材していたルーシーは、ひょんなことから先住民メチカット族たちが町にカジノ建設を計画していることを知ります。
町はこの話題で大盛り上がり。
そんな時にメチカット族のリーダー、ノーランがフットボール場で殺されます。

関わる気がなかったルーシーですが、友人の元司書ミス・ティリーから犯人を捜すようにと頼まれ(いいえ、命令)されてしまいます。

アメリカのことはよく知りませんが、先住民の土地にカジノが建っていると聞いたことがあります。
調べてみると、「アメリカ先住民族の保存地区では州法ではなく連邦の法律が適用され、自分たちの手で生活を支えるための収入源として、連邦政府に認められた族のみが州との交渉を得た上でアメリカの規定内及び室内でカジノを運営できるようになった(1988年、インディアン賭博規定法令)」そうです。
だからこの本ではメチカット族は公式認定されるようにと頑張っていたんですね。
先住民の問題は色々とありますが、興味のある人は『アメリカインディアン悲史』でも読んでみてください。

新しく家族の一員となった、ニワトリを十二羽殺した(!)キャロライナ犬のクードーがかわいいです。頭がよさそうな犬です。たぶん次回からルーシーの後をついて回ることでしょう。

さて、次はルーシー家に何が起こるのかしら?

最期に感謝祭のメニューがついています。どう考えても、私には美味しそうには思えませんわ。