海堂 尊 『外科医 須磨久義』2011/07/17

マスコミではスーパードクターとかで医師を取り上げることがありますが、須磨医師は誰が考えてもその一員でしょう。

風邪などを診てもらう内科医は外科医ほど世間の注目を浴びませんが、一番大事だと思います。
近所の医師は今一です。というのも私の望む治療を提供してくれないことが多いのです。
どちらかと言えば職場の近くの医師は私の望む医療を提供してくれます。
私にとっての名医とは、患者が望む医療を提供する医師ということです。


須磨医師はテレビドラマにもなっている人なので、知っている人がたくさんいるでしょう。残念ながら私はそのドラマを見ていません。水谷豊主演で、須磨医師は撮影現場に張り付き、色々と助言を与えていたそうです。

海堂さんの『チーム・バチスタの栄光』は須磨医師にインスパイアされて書かれた作品です。映画になる時、須磨医師は主演の吉川晃司にこう言ったそうです。

「本物の外科医は背中で語る」

だから本の表紙は背中なのですか。
正面から見ると、下のような方です。


海堂さんの書いた『ブレイズメス1990』に出てくるモンテカルロ・ハートセンターの天城雪彦も彼を参考にしているようです。
公開手術なんて海堂さんの作り事かと思っていたら、本当にやっているんですね。

海外で活躍し、日本に戻らない人が多い中、彼は日本に戻ってきました。そのわけが、「言葉によるコミュニケーションが不十分だと十分な医療は行えないこと」をローマでの愛犬の死により気づかされたからだそうです。
彼ぐらいの医師になると傲慢になっても許されるようになると思います。しかし、彼は柔軟な心を持っているんです。

「クリエイティブ・マインド」とは須磨医師が常に自分に言い聞かせてきた言葉だそうです。
「クリエイティブ・マインドがなければ、外科学の進歩はない。すべてが自己満足の範囲内で収束してしまうからだ。すると現在助からない患者はいつまでも救われない」

須磨医師はどんなに心臓外科医の頂点を極めようが、医療の原点を忘れないでいます。

本書を読むと須磨医師の業績や人柄などがわかりますが、いかんせん、海堂さんの
理屈っぽさが最期の「第二部解題バラードを歌うように」に現れてしまいました。海堂さんの思いが書かれているのでしょうが、読者に思いを預けてもよかったのではないかと思います。