大野更紗 『困っているひと』2011/07/28



ちまたで人気という噂のこの本を読んでみました。
これって難病闘病記のようなものです(本人が闘病記ではないと言っているので)。

上智大学フランス語学科から大学院に進み、ビルマ研究をするはずだった大野さんがわけのわからない症状に悩まされるようになります。病院巡りをしても、「そのうちよくなるでしょう」という言葉だけで何もしてもらえません。ネットで調べまくり、やっといい医師に出会い・・・。

彼女の病気は「皮膚筋炎」と「筋膜炎脂肪織炎症候群」という何やらわけのわからない病気です。難病指定されているので医療費などの援助があるのですが、お役所の手続きは大変です。(詳しくは本を読んで下さい)

大野さんは27歳の若い人ですから、普通の闘病記だと思って読むと、特に年齢の上の方は違和感を覚えると思います。なんといっても彼女独特の言い回しが読みずらいのです。漫画とアニメで育った世代ですから。
まあ、慣れると大丈夫ですが、それでも私なんか最後までちょっと着いていけないものを感じてしまいました。ジェネレーション・ギャップですかね。

でもね、まじめなトーンで書いたら、暗くて本当に救いがなくなってしまうもの。彼女の書いたように、ちょっと漫画チックな感じが入った方がスルッと読めるようです。
ともすれば死にたくなる自分を鼓舞するために、頑張って明るく見せているという風に感じました。

はっきり言って痛みなど辛いことは本人以外にはわからないのです。かわいそうに、大変ねと言ってくれても、実際は他の人にはわかっていないのです。もちろん医師にもね。

大野さんが友達に負担になっていると言われるところなんか、悲しくなりました。
日本の医療制度が患者の現実に即したものではないですから、周りの人に助けを求めなければならないのです。患者にとっては死活問題です。人の負担にならないようにしようとわかってはいてもどうしようもないのです。
友人たちも色々とやってくれてはいても、彼らには彼らの生活がありますから、彼女たちを非難することはできません。友人たちも辛いのです。

健康保険制度が日本にはあるから、どこにいても同じような医療を受けられるとはいえ、難病に罹ると地域格差がでてしまいます。自治体によって補助内容が違うのですね。難病指定って国が行っているので、同じ補助がされているのだと思っていました。
彼女のように考え、行動できた人はいいのですが、そうじゃないと絶望して、命を絶ってしまう人がいるのではないでしょうか。

医療従事者の方とお役所の方に是非とも読んでいただきたいと思います。
とは言っても、フクシマがどうにかならなければ、難病難民まで手は回りませんか?
(関係ないですが、「地デジ難民」という言い方、私は嫌いです)