宮部みゆき 『あんじゅう―三島屋変調百物語事続』2011/10/29



宮部さんの江戸物を図書館で探し借りました。
これって続き物だったのですね。最初の「三島屋変調百物語」は見当たりません。
調べてみると、『おそろし』という題名です。単行本は、もう売っていないようです。新人物往来社(初めて聞いた出版社だわ)から出ているようなので、アマゾンで買いますわ。

袋物屋を営んでいる加登新左エ門と初音夫婦のところに、姪のおちかが行儀見習いとして預けられました。
おちかは旅籠の娘ですが、幼馴染の許嫁を兄妹同様に親しんできた男に殺され、その男も命を絶ったという不幸な出来事があったため、転地療養というのでしょうか、江戸の叔父夫婦に預けられたのです。

花嫁修業をするよりも、体を動かす方がいいというおちかの気持ちを尊重し、叔父夫婦はおちかが女中と同じ仕事をするのを許していました。

おじさんには変な趣味(?)があり、世の中のふしぎ話を百話集めようとしていました。(この詳しい事情は『おそろし』に書かれていると思います)
おちかがふしぎ話をお客から聞き、叔父夫婦に話すということになっています。

さて、お客が持ってきたふしぎ話とは・・・。

題名の『あんじゅう』は漢字で書くと、「暗獣」です。
このあんじゅう、かわいいのです。ネタバレになるので、詳しくは書きませんが、心温まる話です。

宮部さんの書く江戸物は人情味溢れるいい話です。
百物語ですから、まだ十話(?)にもいかないのですから、これから続けて書いていただけるということで、楽しみにしています。

この本から気に入った言葉を紹介しましょう。

「世間に交じり、良きにつけ悪きにつけ人の情けに触れていなくては、何の学問ぞ、何の知識ぞ」
「人は変わる。いくつになっても変わることができる」

この言葉は、人と交わるのが嫌いで隠遁生活を始めようと思ったのだけれど、後に心変わりをし、寺子屋を開いたおじいさんのものです。
人の本質は変わらないかもしれませんが、いつも外に開かれた柔らかな心を持っていようとすれば、変れると思います。
そう信じていたいです。