森博嗣 『幻惑の死と使途』&『夏のレプリカ』2013/05/19

この頃読んでいる日本のミステリは、乾くるみの『蒼林堂古書店へようこそ』に出てくる本の中から、おもしろそうなものを選んで読んでいます。
今のところはずれはないようです。
しいていうと、『木野塚探偵事務所だ』は読まなくてもよかったかも・・・。

前に森博嗣の『すべてがFになる』と『冷たい密室と博士たち』を読んで、否定的意見を書いていた私ですが、今回、別の2作品を読んでみて、意外な感想を持ちました。
おもしろいんです。
もちろん、例のお嬢様西之園萌絵は出てきますよ。
本人も本の中で言っているように、少し大人になってきているようです。
N大助教授・犀川創平との仲も変化してきており、どうも彼も萌絵のことが好きらしいのです。
まあ、こういうことは横に置いておいても、おもしろかったです。
この感想の違いはなんなんでしょう?
私自身も『すべてがFになる』を読んだ当時と気持ち的に変化があったのでしょうか?
その頃まで、日本のミステリをあまり読んだことがなかったので、だんだんと慣れてきたということでしょうかね。

今回紹介する2冊は奇数章と偶数章とに分かれています。
というのも2つの事件が同じ時間帯に起こっているからです。


萌絵は久しぶりに友人の簑沢杜萌と会っていました。
二人は学校の成績では一番と二番。もちろん萌絵が一番でしたが、世間の一般常識や理系科目以外では杜萌の方が勝っていました。
その夜、マジックショーを萌絵と杜萌、そして犀川との三人で見ることになっていました。その時に萌絵は杜萌に犀川を紹介するつもりだったのです。
しかし、そこに現れたのは、犀川ではなく、講座の先輩の浜中でした。
がっかりした萌絵は次の日、犀川に会いに行き、次の日曜日の約束を取り付けます。
日曜日には、かつて一世を風靡していた天才奇術師・有里匠幻が久しぶりに脱出ショーを開催するのです。

日曜日、犀川と浜中と共に脱出ショーを見に来た萌絵ですが、二人とはぐれてしまいます。
有里匠幻の弟子の有里タケルと偶然出会い、彼の車に乗せてもらい脱出ショーを見ていると、海の底から引き揚げられた箱から現れたのは、銀のナイフを胸に突き立てられた有里匠幻の姿でした。


一方、萌絵と別れて、二年ぶりに実家に帰った杜萌は誘拐事件に巻き込まれます。
犯人は三人いて、そのうちの二人は互いに撃ち合って車の中で死亡。もう一人は逃亡しました。
不思議なことに、ずっと部屋の中に引き籠っており、事件当時も部屋にいたはずの杜萌の兄で盲目の詩人、素生が姿を消していました。


ミステリですからネタバレはまずいので、ここまでしか書きませんが、両方ともにおもしろかったです。
特に『夏のレプリカ』は思ってもいない展開で意外性がありました。

別の読んでいないS&Mシリーズを読んでみようかと思いました。