ピエール・ルメートル 『悲しみのイレーヌ』2015/10/17

『死のドレスを花婿に』と『その女アレックス』に続き翻訳されたフランス・ミステリーの三作目です。
『死のドレスを花婿に』も読んだのですが、色々と読むので書き忘れたようです。


『その女アレックス』はこの本の後に出版されたものです。
ですから、身長145センチほどしかないパリ警視庁犯罪捜査部班長のカミーユ・ヴェルーヴェンに何があったのかが書いてあります。
イレーヌとは彼の身重の妻です。
まだ彼の本を読んでいない人は出版順に、この本から読むといいでしょう。

殺人現場に呼び出されたカミーユはその残忍さに驚きます。
2人の娼婦が様々な方法で傷つけられ殺されていたのです。
そこに残されていた指紋から2年前の事件が同じ犯人のものであることがわかります。
そして、カミーユはこれらの殺人事件がそれぞれミステリー作品をなぞったものであることに気づきます。
次はどの本か・・・?

私は『その女アレックス』に出てくるカミーユのことをすっかり忘れていて、なんで題名に彼の妻の名が出てくるのかしらと思いながら読んでいました。
(フランス語の題名には名前は出てきていませんがね)
それが幸いし、まさかの結末でした。
日本のミステリーにはこのような結末はあまりないですよね。
お国柄かしら。

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_ じゅうのblog - 2017/06/29 00時16分22秒

フランスの作家「ピエール・ルメートル」のデビュー作品『悲しみのイレーヌ(原題:Travail soigne)』を読みました。
[悲しみのイレーヌ(原題:Travail soigne)]

「ピエール・ルメートル」作品は、昨年の12月に読んだ『天国でまた会おう』以来なので、約半年振りですね。

-----story-------------
『その女アレックス』の刑事たちのデビュー作

異様な手口で惨殺された二人の女。
「ヴェルーヴェン警部」は部下たちと捜査を開始するが、やがて第二の事件が発生
「カミーユ」は事件の恐るべき共通点を発見する……。

『その女アレックス』の著者が放つミステリ賞4冠に輝く衝撃作。
あまりに悪意に満ちた犯罪計画… あなたも犯人の悪意から逃れられない。

解説・杉江松恋
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「カミーユ・ヴェルーヴェン警部」シリーズ三部作の第一部にあたる作品… 「ピエール・ルメートル」の名前を日本で有名にした『その女アレックス』が第二部にあたる作品なので、第二部を先に読んじゃった感じですね、、、

テンポが良くて面白いのが、他の作品との共通点… ホントに巧いと感じさせる作品で、デビュー作とは思えないクオリティです。

気になるのは、惨酷で凄惨な殺害シーン… しかも、殺される人数が多いんです、、、

この部分には、嫌悪感を感じますが… 想像力を封印し、エンターテイメント作品として割り切って、ストーリーを愉しむことに徹しました。


著名な画家を母に持ち、自らも絵心のある警部「カミーユ・ヴェルヴェーン」… そんな「カミーユ」の下に、部下の「ルイ」から連絡が入る、、、

「こんなのは見たことがない」

という「ルイ」の言葉に現場に駆けつけてみると、そこには凄惨な手口で殺されたふたりの女性の死体があった… いずれの死体も甚だしく損傷しており、使われた凶器は刃物だけでなく、釘で打つ、酸で焼く、火で燃やすという徹底振りだった。

しかも壁には、

「わたしは戻った」

という謎の宣言まで書付られていた… 全てが過剰な演出で、露出狂のような犯罪、、、

この異常犯罪に対し、若く優秀な富豪刑事の「ルイ」、極端なケチだが粘り強い捜査で定評あるベテラン刑事「アルマ」らの部下と共に捜査を開始すた「カミーユ」たちは、驚くべき事実に気付く… そして、過去の未解決な類似事件を調べるうちに共通点があることを見出す。

今回の殺人事件は、「B・E・エリス」の犯罪小説『アメリカン・サイコ』の殺害現場、殺害方法を再現しており、

1年半前の殺人事件は、「ジェイムズ・エルロイ」の犯罪小説『ブラック・ダリア』の殺害現場、殺害方法を再現していた、

捜査が進むにつれ、

「エミール・ガボリオ」の犯罪小説『オルシヴァルの犯罪』、

「シューヴァル&ヴァールー」の犯罪小説『ロセアンナ』、

「ウィリアム・マッキルヴァーニー」の犯罪小説『夜を深く葬れ』の、それぞれの殺害現場、殺害方法を再現した類似の事件があることが判明、、、

増える惨殺死体… 執拗なル・マタン紙の記者「フィリップ・ビュイッソン」… 軽薄な不動産業者「フランソワ・コッテ」… そして、犯罪と事件の関係性に気付いたことから疑われるミステリ通の書店主「ジェローム・ルザージュ」… 「カミーユ」たちは、大学教授で犯罪小説の専門家「ファビアン・バランジェ」にアドバイスを求め、この事件、そのものが、あるマイナーな犯罪小説『影の殺人者』を再現しようとしているという恐るべき事実に気付く。

『影の殺人者』では、倉庫で妊婦が出産前の胎児とともに惨殺されるらしい… そして、出産間近だった「カミーユ」の妻「イレーヌ」が犯人に誘拐され、「カミーユ」はパニックに陥る、、、

「カミーユ」たちは、今後の事件の展開を知るために、ほとんど市場にも流通しておらず入手困難な犯罪小説『影の殺人者』を探し求め、「ジェローム・ルザージュ」等の協力を得て、『影の殺人者』の古本を入手… それを読んだ「カミーユ」は「イレーヌ」が監禁されている場所に気付き、武装して現地に向かう。

いやぁ… ホントに殺害シーンのことに目を閉じれば、怒涛の展開で愉しめる作品でしたね、、、

「カミーユ」の心情や葛藤がきめ細やかに描かれているので、感情移入して読んじゃいましたね。

それにしても、哀しい結末だったなぁ… 真相に気付くのがちょっと遅かったですね、、、

こんな結末はなかなかないよなぁ… と感じましたが、三部作の第一部としては、あり得るカタチなのかと思います。

「カミーユ・ヴェルーヴェン警部」シリーズ三部作の完結篇『傷だらけのカミーユ』でも読んでみたいな。
 

以下、主な登場人物です。

「カミーユ・ヴェルーヴェン」
 司法警察 警部 犯罪捜査部班長

「イレーヌ・ヴェルーヴェン」
 カミーユの妻

「ルイ・マリアーニ」
 カミーユの部下 富豪一家の息子
 
「アルマン」
 カミーユの部下 ケチで知られる

「ジャン=クロード・マレヴァル」
 カミーユの部下 浪費家

「ジャン・ル・グエン」
 警視 犯罪捜査部部長 カミーユの上司

「コブ」
 捜査チームのメンバー ITのエキスパート

「エリザベス」
 捜査チームのメンバー 腕利きの女性

「フェルナン」
 捜査チームのメンバー 酒浸りの中年

「メフディ」
 捜査チームのメンバー 若いアラブ系

「ジャン・ベルジュレ」
 鑑識課長

「エドゥアール・クレスト博士」
 心理プロファイラー

「フランソワ・コッテ」
 クルブヴォア事件の現場を扱った不動産業者

「エヴリン・ルーヴレ」
 クルブヴォアで惨殺された娼婦

「ジョジアーヌ・ドゥブフ」
 クルブヴォアで惨殺された娼婦

「マヌエラ・コンスタンツァ」
 トランブレで惨殺された娼婦
 
「アンリ・ランベール」
 コンスタンツァのヒモ
 
「フィリップ・ビュイッソン」
 ル・マタン紙の記者

「ファビアン・バランジェ」
 大学教授 犯罪小説の専門家
 
「ジェローム・ルザージュ」
 ミステリ通の書店主