篠田節子 『冬の光』2016/05/29

部屋のアレンジを変えて、弟犬を自由にさせると、弟は柵の向こうからこうやって見てきます。


彼が部屋の中でおしっこやマーキングをしないように紙のおしめをつけ、かわいらしいビニールシートを敷き、万全の態勢を取りました。
今朝はトイレにしたサークルに入れると、トイレをきちんとやりました。
やればできるのだけれど、兄のようにかまってもらいたくて悪いことをするようです。

兄のストレスが強くなるかな?



徳島から東京行きの大型フェリーから身を投げ、自殺をした父が、海上保安庁の巡視艇に偶然、発見されました。
四国でのお遍路の帰りだったようでした。

父、富岡康宏は大学時代に学生運動に関わり、卒業後、旧財閥の重工業メーカーに勤めました。
就職してからは典型的なサラリーマンでしたが、実父の介護のために定年を待たずに退職し、実父が亡くなってから起こった東日本大震災でボランティア活動をしていました。
父の20年にも渡る浮気のせいで、家族関係は悪化し、亡くなる数年前から母とは事実上の別居生活を続けていました。

次女の碧は実家の片付けをしているうちに、父の最期の旅がどのようなものであったのかと思うようになり、父がダイアリーに残したルートを辿ろうと決意します。

過去を回想する康宏と父の辿った道を巡る碧の二人の視点でこの小説は書かれています。

他の人からどう思われているのか、人にはわかりません。
同様にその人の真実なんか、他の人にはわからないのです。
だからといって、理解するのを止めてしまってはいけないですし、その人の人生の限られた面だけを見て評することもしてはいけないことです。
永遠にわからないからこそ、わかろうと努力していくし、努力する中で、一片の真実が垣間見られたら、それは尊いものと思わなければならないと思いました

所詮、人間ってどうしようもないものなんです。
そのどうしようもなさを抱えて生きていくしかないんです。

これからの自分の最期に思いを馳せさせられる本でした。
死ぬ前に一度は四国巡礼の旅に行ってこようかと思いました。
商業主義が蔓延しているかもしれませんが・・・。

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