下田治美 『愛を乞うひと』2017/02/03



大田黒公園に行ってきました。
冬でも人が来ていますが、静かでのんびりできます。
紅梅と白梅が咲いていました。



この本はずっと前から評判になっていましたが、読んでみようという気になれずにいました。
たぶん、母親の子に対する暴力が強調されて紹介されているのが嫌だったのだと思います。
救いのない話だとばかり思っていましたが、今回読んでみて驚きました。
予期しない話だったからです。

台湾出身の父が亡くなってから施設に入っていた照恵は、10歳の時に別れて住んでいた母・豊子に引き取られます。
母は他の男と住んでいて、その男との間に弟がいました。
母との生活はいつ始まるかわからない暴力を恐れる毎日でした。
一旦暴力をふるい始めると母は体力が続く限り止めません。
そんな生活も高校を卒業し、会社に入ってから終わりを告げます。

母と別れ、結婚し、娘もでき、これからという時に夫が亡くなります。
しばらく娘を育てることに専念していましたが、弟が逮捕され差し入れを持ってきてほしいという警察からの電話がきっかけとなり、隠していた過去を娘に話すことになります。
話を聞いた娘は祖母への復讐として祖父の骨をさがそうと言いだします。
骨を探しを続けるうちに照恵は父の祖国、台湾まで行くことになります・・・。

家庭で虐待された子は、親になった時に親にされたのと同じように子に虐待をしがちだと言われています。
照恵が娘に暴力を振るわないのは、父や施設の方々、夫のおかげでしょうか。
書かれていませんが、母親の豊子は幼い時に虐待を受けていた可能性がありますね。
豊子の側からの話を書いたらどうなったでしょうか。
読んでみたかったです。

テレビ化や映画化をする時は、どうしても人の目を引く宣伝をしがちですが、虐待の話ではなかったんですねぇ。
照恵が自分の過去を辿る話だったんです。

『代償』と共に心に痛いけれど、救いのある本でした。