「さざなみ」を観る2017/02/25



英語の題名は「45 years」。
夫婦生活の45年を表しています。
日本語の「さざなみ」も悪くはないのですが、妻の心のうちはさざなみどころじゃなくなっていったような気がします。
(ネタバレあり)

結婚してから45年が経ち、パーティを開くことにしたケイトとジェフ夫妻。
40周年の時はジェフが病気に罹りできなかったので、中途半端な年にすることになったのです。
(50周年まで生きられないかもしれないものね)
打ち合わせなどで忙しくしている時に、スイス政府から手紙が届きます。
50年前にジェフとアルプスのハイキングに行って、クレパスに落ちてしまった恋人、カチャの遺体が見つかったというのです。


この時から夫の頭の中は死んだカチャのことで占められてしまいます。
プレゼント用の時計を見つけ、電話をしてもでません。
図書館で氷河の本を借り、地球温暖化について熱く語ります。
カチャの写真を屋根裏部屋で見つけ、夜中に見ています。
妻にカチャの思い出を語り、彼女が生きていれば結婚したとまで言います。

私たちの結婚記念パーティは今週の土曜日なのに、私たちの45年は一体なんだったの。そんなに死んだ人の方がいいの。
カチャへの嫉妬や夫への怒りなど、様々な思いがケイトの心の中をよぎります。

そんな彼女の心を決定的に叩き潰したのが、夫のいない間に屋根裏部屋で見たカチャの写ったスライドでした。
彼女は帰ってきた夫に言います。
パーティにちゃんと出席して、みんなの前では仲良く振る舞うようにと。


パーティ当日。
人前では楽しそうに振る舞いますが、ふとした時によぎる暗い表情。
ダンスの最中に、彼女は夫の手を振り払ってしまいます。

妻の心の変化を何も感じない夫。
男ってこんなもんなのでしょうか?
妻は未だに夫を愛しているのかどうかわかりませんが、45年という月日の積み重ねでそれなりの愛着があります。
それなのに夫は死んだ彼女に夢中になっています。

シャーロット・ランプリングは上手いです。
まぼろし」の時も思いましたが、妻の心を繊細な表情だけで表しています。

パーティ後の生活はどうなるのかは描かれていません。
私の予想は、たぶん、離婚はしないけれど、ケイトは孤独を感じながら、犬のマックスに癒されつつ(笑)、暮らしていくような気がします。
夫は妻の心も知らずに、このままカチャの幻想と一緒に、能天気に暮らしていくんでしょうね。
そして、最期の時に・・・。

淡々と描かれている静かな作品なので、途中で眠たくなる人がいるかもしれません。
睡眠不足の時は見ないように(私もね)。
ある程度の年輪を刻んだ人が見るといい映画です。