垣根涼介 『光秀の定理』2017/04/28



「君たちに明日はない」シリーズを書いた垣根さんが、今度は歴史小説を書きました。
「織田信長株式会社という情け容赦のないブラック企業で、勤め人の悲哀をビシバシ味わう明智光秀」という感じの小説だというようなことを垣根さんがおっしゃったそうで、なるほどと思いました。
そういう風に言われると、何故光秀が信長に反旗を翻したのかがわかります。

でも、この本の元になっているのは定理(レンマ)です。
確率論なのですが、4つの椀の中にひとつだけ石が入っていて、その石の入っている椀を選ぶというものです。
登場人物の破戒僧・愚息はこの博打に勝ち続けます。
何故、彼は勝てるのか。

高校時代の数学を思い出してしまいますね。
頭の固くなった私にはピンときません。
誰か噛み砕いて教えてくださいませ。

こんなことを書くと、難しい本だと思われるかもしれませんが、そんなことは全くありません。
光秀よりも、愚息とひょんなことで知り合い、しばらく行動を共にする武芸者・新九郎の話が多いのですが、この二人の話がおもしろいのです。
いいキャラです。
勤め人の光秀の話を多くすると、苦悩ばかりで暗い話になってしまいますが、この二人は今でいうフリーターですから、何事にも縛られず、自由に明るく生きています。
彼らからすると光秀はもろもろのことに縛られた人ですが、それは彼の持つのがれられない運命で、運命に殉じるからこそ二人は光秀のことが好きなんじゃないでしょうか。

歴史に新しい見方を添えてくれる本でした。