朝井まかて 『銀の猫』2017/05/04



走り過ぎると、すぐにハアハアいう犬です。
ボールに対する執着心はいつまで経ってもすごいです。



江戸時代に本当にあった職業かどうかわかりませんが、「介抱人」という金持ちの年寄りの介護をする仕事をしているのがお咲です。
口入屋「鳩屋」から紹介され、様々な老人のお世話をしていますが、その家族に振り回されることも多く、夜も寝ないで介護したりと、気の抜けない毎日です。
普通の仕事よりも稼ぎがいいので、妾奉公をしていた母親が元夫から借りた金を返すために始めた仕事でした。
しかし、今やお咲にとってはやりがいのある仕事になっています。

江戸時代と比べて現代は介護が楽になったのかどうかと考えると、それほど変わらないような気もします。
本の中にでてきますが、菊作り職人の庄助は母親を介護していますが、母親を長屋に置いて行くわけにもいかず、そのため仕事もままならず、人生をあきらめて生きているような感じでした。このままでいくと結婚はできず、自分の老後を見てくれる人もなしという状態ですから、未来を考えると投げやりにもなりますよね。
在宅介護が望ましいとかいいますが、江戸時代も現代と同じようにお金に余裕がない者にとって介護は大変なことだったのですね。

なんでもそうですが、人間相手の商売って正解がないのです。
介護の指南書を書こうとして難儀している場面がありましたが、そう簡単に書ける物ではないですよねぇ。
人が様々いるように、家族も様々ですから、一つ一つ吟味して、どういう介護をするのがいいのか決めるしかないですもの。
本にも出てきますが、「ぽっくりも、ゆっくりも立派な往生だと思える方が、追い詰められないかもしれない。気が楽になる」。
こういう風に老いをとらえられるといいのでしょうね。

こう書くと何やら悲惨な本のようですが、そこは朝井さんですから、ほっこりとした人情本にしてくれています。