門井慶喜 「美術探偵・神永美有シリーズ」2017/10/03



門井さんの「美術探偵・神永美有」シリーズの三冊、『天才たちの値段」、『天才までの距離』、『注文の多い美術館』を読みました。

美術探偵・神永美有の名を前面に出しておきながら、主人公は短大講師(後に京都の大学に転職)・佐々木昭友。
彼の友人が天才美術コンサルタント・神永美有なのです。

神永には奇妙な能力があります。
彼の舌は「一枚の絵がもし贋物なら、見た瞬間、苦味を感じ、本物なら甘みをおぼえる」のです。
舌が感じたからだけでは説得力がありませんが、彼は美術に関する知識も豊富なので、一流の美術コンサルタントとしてなりたっているのです。

佐々木は一応大学の先生なので、彼のところに様々な美術品に関する相談事が持ち込まれます。
その相談事は彼の専門とは違うことが多く、断ればいいのに、人の好い佐々木は引き受けてしまいます。
そのため大変な目にあっているのに、こりることはありません。
そんな彼の助けになるのが神永なのです。
ホームズとワトソンのようなホームズだけが推理してというのではありません。
まがりなりにも大学の先生ですから佐々木も推理して、その間違いを神永がそれとなく報せ、それを察した佐々木が上手く軌道修正して謎を解いていくという感じです。
持ち込まれる美術品はボッテチェリやフェルメールなどの西洋絵画から正倉院御物、タペストリー、刀、涅槃図など多岐に渡ります。

このシリーズは門井さんのデビュー作らしいです。
彼の美術に関する素養の深さがわかりますね。