中山七里 『切り裂きジャックの告白』2018/04/05

「どんでん返しがある社会的テーマを扱った本格ミステリ」の第1作目です。


東京の木場公園で、臓器をすべて繰り抜かれた女性の死体が発見されました。
テレビ局に「ジャック」と名乗る犯人からの声明文が送り付けられます。
切り裂きジャックが時空を超えて現代に甦ったのか!?
警視庁捜査一課の刑事・犬養隼人と埼玉県警の刑事・古手川和也がコンビを組んで捜査に当たることになります。

それからしばらくして今度は川越で、同じ手口の死体が見つかります。
今度はジャックからの犯行声明文と一緒に被害者の臓器の一部が送られてきます。
被害者2人に接点は見当たりませんが、調べていくとある共通点が見つかります。

犬養は警察に入るまで俳優養成所に通っていたというイケメン。
「無駄に男前」、「野郎の嘘を見抜く名人」と言われており、男の犯人の検挙率は本庁で1、2位を争っていますが、女には滅法弱く、いつも騙されます。
犬養はイケメンですから女性にはもて、二度結婚し、二度離婚しています。
一度目の結婚で娘・沙耶香がいます。親権は渡しましたが、養育費を払っています。
離婚のきっかけが犬養の浮気だったので、娘との関係は最悪で、未だに満足に口をきいてもらえません。
沙耶香は腎不全で入院しており、人工透析をしていますが、腎移植を考え始めています。
日本の場合、情が優先しますから、アメリカなどのようにそう簡単にドナーは見つからないでしょうね。

そう、テーマは「臓器移植」です。
「臓器移植」に伴って倫理や脳死、個人情報保護など様々な問題があり、この本は私たちにそれらを色々と考えさせてくれます。