須賀しのぶ 『革命前夜』2018/06/24

この頃の流行なのか、音楽をメインにした本が多くなりましたね。
この本の主人公もピアノを専攻する男性です。


父親が聴いていたバッハに影響を受け、1989年、バブルで湧いている日本から、まだ共産主義の国へと、ピアニストの眞山は音楽留学をしました。
ドレスデンの音楽大学には様々な国から来た留学生がおり、才能あふれる人たちがいました。
その中で、ひょんなことからハンガリーから留学しているヴァイオリストの伴奏をすることになります。
彼の伴奏をすると、つぶされると言う噂もあり、実際に眞山も彼に振り回されることになります。
そんなある日、教会でバッハを弾く女性に出会います。
彼女のバッハは眞山にとって天啓のようなものでしたが、彼女は国家保安省から監視されており、その教会で弾く以外に音楽家として活動ができなかったのです。

東ドイツはまだ冷戦下で自由は制限されている監視社会でした。
しかし、時代は変わろうとしていました。

革命とはベルリンの壁崩壊のことです。
ついこの間のことのように思えますが、大分経ったんですね。
ベルリンやドレスデン、プラハには行ったことがあり、あの場所かと思いながら読めて、旅行はするものだなとあらためて思いました。
ふと入った教会からパイプオルガンの音が聞こえてくることが、本当にありましたから。

残念なのは、前半は音楽的なことに苦悩する眞山だったのに、後半は時代に翻弄される仲間を助ける眞山になってしまい、彼の求めるバッハはどうなったのかしらって思いました。

音楽(+社会)を描いた作品の中で、お勧めの一冊です。