石井光太 『43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層』2018/09/23

本屋さんたちも考えること。
「本屋大賞」で主に小説を選んでいましたが、今度はノンフィクション部門ができました。
ノミネート作品が決まり、二次選考をして11月に大賞作品が発表されるそうです。
「本屋大賞」ほど売れるかどうか・・・。
私は図書館で借りれたり、kindleで読めるなら出来る限り読んでみようと思います。
では、ノミネート作品のひとつ、『43回の殺意』を紹介しましょう。



2015年2月、神奈川県川崎市の多摩川河川敷で13歳の少年の全裸遺体が発見された。
少年の体にはカッターで傷つけられた43か所の傷跡が見つかった。
一週間後、逮捕されたのが17歳と18歳の未成年3人。

殺害に至るまでの状況を裁判の証言に基づいて再現し、事件後起こったインターネットによる「犯人捜し」や河川敷を訪れた1万人にも及ぶ人々の「善意」、被害者と加害者たちの生い立ち、そして、同じグループだった友人たちと殺された遼大の父親の証言などが書かれています。

読んでいて残念だったのは、被害者の母親からの証言は取れなかったようで、父親からの見方だけということです。
不思議だったのは、河川敷に1万人近くの人々が訪れたのは何故なのかということです。
「河川敷に集まる人々の間で、遼太は宗教のように偶像化されていったのかもしれない」と著者は書いていますが、ニュースで報道されたのを見ましたが、何とも奇妙な光景でした。
そして、著者も疑問を呈していましたが、加害者の一人が保護観察中だったというけれど、保護観察制度は実際に機能しているのでしょうか。

心が切なくなる事件です。
家庭とか周りの環境が悪かったとか、運が悪かったとか言ってすっぱり切り捨てられるような事件ではありません。
こういう事件が起こらないように、何ができるのか。
何か事件が起こるたびにこの答えのない問いを繰り返すしかないのでしょうねぇ。