渡辺一史 『こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』2019/01/08



映画になった『こんな夜更けにバナナかよ』を読んでみました。
この本は映画のノベライズの方ではなく、2003年に出版され講談社ノンフィクション賞と大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した本です。

1959年生まれで札幌に住んでいる筋ジストロフィー患者、鹿野靖明(2002年に48歳でなくなっています)は施設を出て自立して暮していくことにします。
当時、障害を持った人は施設で生活するか、実家で一生世話になるかの2つしか選択肢はありませんでした。
彼には親に自分の介護のためにだけ人生を費やして欲しくない、自分も人として普通に生きていきたいという思いがありました。
筋ジストロフィーは全身の筋肉が衰えていく病気で、自分一人だけでは暮せません。
そのため無償・有償のボランティアに頼るしかないのです。
様々なボランティアたちが鹿野のところにやってきます。
鹿野は彼らに遠慮せずに、ともすればわがままと思われるようなこともやってもらいます。
題名になっているように、夜中にバナナが食べたいから買ってきてくれというように。
私ならそんなお願いはしません。
私だけではなく、多数の人もしないでしょう。
鹿野は違います。
普通の人と同じように暮らし、仕事し、恋し、結婚し、喧嘩し、思い通りの生き方をしようとします。
彼の生きようとするバイタリティがボランティアたちの心を動かしているように思います。

ボランティアって何だろうと思うことがあります。
鹿野のボランティアたちにインタビューしていますが、彼らの言葉がボランティアの意味を教えてくれます。

決して障害者にとって生きやすくはない日本。
どうしたらいいのか、考えるきっかけになる本でした。