三浦しをん 『愛なき世界』 ― 2019/01/17
『舟を編む』の理系研究室版です。
和食でも洋食でも、中華でも何でも作る洋食屋で働く藤丸くんは、お客さんであるT大研究室院生の本村さんが好きです。
本村さんに告白しますが・・・。
「愛のない世界を生きる植物の研究に、すべてを捧げるときめています。だれともつきあうことはできないし、しないのです」
こう言われてふられますが、それでも藤丸くんはT大研究室に出前を持って行きます。
本村さんだけではなく彼女の愛する植物の世界に藤丸くんは魅せられたのです。
本村さんの属する研究室の雰囲気がいいです。
松田教授が見かけが死神みたいに怖くてもふところの大きいいい人です。
彼のような教授に見守られながら研究ができるなんて、最高ですね。
本村さんが間違った実験をしているのに気づき、松田教授にそのことを告げた時に松田教授が言う言葉がいいです。
「予定どおりに実験を進めて、予想どおりの結果を得る。そんなことをして、なにがおもしろいんですか?」
「実験で大切なのは独創性と、失敗を恐れないことです。失敗のさきに、思いがけない結果が待っているかもしれないのですから」
こういうことを言われると、心が軽くなりますね。
植物の研究の話だから難しそうと思うかもしれませんが、しをんさんがわかり易く書いてくれていますので、安心して読んでください。
ぶっちゃけていうと、実験の内容の説明を飛ばして読んだところもありますが(笑)。
心に残った言葉があります。
「結局、地球上の生物はみんな、光を食べて生きているんだなと」
「光を食べて生きている」
いい言葉です。
読んでいるうちに、円服亭のオムライスとナポリタンが食べたくなりますよ。
しをんさんの『舟を編む』や『風が強く吹いている』などの系統が好きな人は是非読んでみてください。
お勧めです。
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