原田マハ 『異邦人(いりびと)』2019/04/23



カミュの『異邦人(いほうじん)』とは全く関係がない小説です。
マハさんなので、絵画にまつわるお話です。

たかむら画廊の専務・篁一輝と結婚した有吉美術館の副館長・菜穂は妊娠をしていたため、3.11の原発事故後、東京を離れ、京都に避難していました。
それまでの菜穂は自分の美意識は誰よりも優れているという自信があり、自分がいいと思った絵画を値段をいとわず買っていました。
鬱々とした毎日の中、気分転換に出かけた画廊で一枚の絵に心を奪われます。
それはまだ無名の女流画家の絵でした。
菜穂は彼女を世に出すためにたかむら画廊と有吉美術館で同時に展覧会を開催しようと考えました。
しかし、原発事故の煽りでたかむら画廊と有吉美術館を持つ菜穂の父親の会社が資金繰りに困り美術館閉館を考えていたため、菜穂の案はハナから無視されてしまいます。
その上、菜穂が一番大事に思っていたモネの睡蓮が彼女に相談もなく、夫と親との話し合いの末、売られてしまいます。
そのことを知った菜穂は・・・。

なんとも殺伐とした親子の関係です。
その理由は後でわかるのですが、とにかく菜穂にとって「美」が一番で、夫とか親とかはずっと下のランクなんですね。
残念ながら、どの人も嫌いな部類の人たちです。
それに内容が昼ドラのようで・・・。
唯一、本を読んでよかったと思えるのは、舞台が京都というところでしょう。
京都の四季や祭り、画壇の様子などの描写がいいです。