榛野なな恵 『Papa told me 1~27』&『Papa told me Cocohana ver. 1~8』2020/04/03



主人公は私立小学生の的場知世(ちせ)。
お母さんは知世が小さい頃に亡くなり、お父さんで作家の的場信吉と二人暮らしです。
知世は父親が大好きで、父親と離れて暮らしたくないという思いからか精神年齢の高い、正義感の強い、聡明なしっかりした女の子です。食いしん坊でおしゃれ好きで嫌いなものは虫です。
お父さんの信吉は元新聞記者。背が180㎝もあり、足の長いイケメン。お母さんと反対を押し切って結婚しました。未だに亡くなった妻を思って、再婚話も断り、娘をこよなく愛しています。
彼には有名化粧品会社に勤めている妹の百合子がいます。彼女は知世とショッピングに行ったり、よく家にご飯を食べに来たりしています。
他にもアリスカフェの双子姉妹とか、元区長さん、編集者の北原さん、ベビーピンクの髪のまさおちゃん、ラーメン頭のうさみんなど個性的な面々が登場します。

知世ちゃんのかわいさはもちろんなので、特に言うことはないのですが、この漫画はそれだけではないのです。
例えば、「お母さんがいないなんてかわいそう、寂しいでしょう」、「仕事ばかりしていて結婚しないなんて、女の幸せは結婚して、家を買い、子を育てることよ」、「週末に一人でいるなんて、友達いないの」など世の中の人が決めつけがちなことに反旗を翻しています。
幸せって人が決めるものじゃなく、本人が決めるものですよね。
生きづらい世の中に疲れちゃったという人が読むと、元気をもらえます。

驚いたのが、この漫画、1987年から30年以上も連載されているのです。
絵柄が初期とは違っているだけで、古さを感じさせません。
残念ながら日本社会が30年経っても変わっていないということなのですね。

どのページにも素敵な言葉があるのですが、私が一番好きなのは、

「想像力があれば沈黙の中に音楽を聞きとることもできるわ」
                      (『Papa told me ⑲』)

という言葉です。
価値観を押しつけるのではなく、少しの想像力を働かせてくれれば、世の中ちょっと生き易くなるのかもしれまぜん。