凪良ゆう 『すみれ荘ファミリア』2020/05/13



BLではない凪良さんの本です。

今で言うシェアハウスではなく、昔風の下宿をしているすみれ荘のお話。
大家代理兼管理人をしているのは和久井一悟。彼は小さい頃から病弱だったので、大家である母親の代理をして暮らしています。結婚をしていたのですが、妻は亡くなり、一人娘は義理の両親に連れて行かれてしまいました。
下宿人は3人。みんなの姉的立場で長く住んでいる青子とTV制作マンの隼人、OLでPMS(生理前症候群)がひどく月の半分は苦しんでいる美寿々。
彼らのために朝ご飯と夕食を作るのが一悟の役割です。
ある日、自転車に乗っている一悟の前にフラッと出てきた人がいて轢いてしまいます。
彼は芥一二三といい、作家をしており、自転車事故のため手を骨折してしまいパソコンを打てなくなったので、代わりに一悟に打って欲しいと言い出したため、すみれ荘に住むことになります。何やら怪しい奴ですね。
芥が登場したため今まで穏便に過ごしていた一悟たちの間に不穏な空気が漂い始め、隠れていた姿が現れ始めます。

一見いい人そうでも、何を考えているのかはわからないのが他人です。
人にどう思われているのか考えすぎると怖くなって、人と交流できなくなりますね。
一悟は病弱だったため、すれてなく、お人好し。他の人を信じすぎていたようです。でも、一悟のような人だったら安心して付き合っていけるから、人が集まってくるのでしょうね。
他の人は頑張って今以上の人間になろうとして、自分より幸せそうな人の弱みを握りおとしめようとしています。
無駄な努力は止めて、「等身大で生きていく」と心が落ち着いて、自分にとっての幸せが何かわかるのではないでしょうか。
そういう風になるにはまだ若いけど。

思ってもみなかった人の悪意に驚くこともありますが、希望のある終わり方でよかったですわ。
今回のお気に入りの言葉は、「大多数の意見なんてユメマボロシ」です。
そういえばkindleで読んでいたので、表紙をじっくり見てませんでしたが、思わせぶりな表紙ですねぇ。