柏井壽 『鴨川食堂もてなし』2020/06/16



料理雑誌に載っている「食捜します」の一行広告を見て鴨川食堂に訪れる人たち。
彼らの心の中には食にまつわる秘めた想いがあります。
その想いを店主の鴨川流がくみ取り、日本中探し歩き、料理を再現していきます。
流は元刑事。その時のノウハウを生かし、ちょっとした手がかりから食を捜していきます。

今回探して再現するのは、ビフテキ、春巻、チキンライス、五目焼きそば、ハムカツ、ちらし寿司・・・。
どれも日常的に食べる料理ですが、一つ一つに作り手の想いが込められています。

今回は料理を捜して終わりというのではなく、その後が流も気になる依頼が多いようです。

若い料理人に流は言います。
「料理は形やない。心なんですわ」
「世間の評判やとかは気にせんと、自分がええと思う料理を作って、喜んでもらえたら、料理人冥利に尽きますがな」
美味しい料理を流が作る時の心意気なんですね。

他にも流の言葉で好きなものがありました。
「しあわせっちゅう言葉から、どんな絵を思い浮かべるか。人それぞれや。みんながみんなおなじ絵を描いたらつまらんがな」
「しょせん人生はうたかた。どんな泡もいつかは消える。いきとることが夢物語なんや」

今の時代、いつ死ぬかわからないなら好きなことをやってやろうと思う人や、コロナになっても重症化しないから今が楽しければいいと思う人が少なからずいるようです。
それはそれでいいのですが、でももはやそういうことの言えない世の中に変わっていっているみたいです。(「まさか私が?新型コロナ疑惑で自宅療養する35歳独身女性の日記」)
少しの思いやりと想像力が欲しいですね。

思い出に残り、捜してもらいたい料理はありませんが、流の作る料理を食べたいと思いながら読んでいます。
本当に美味しそうなんですもの。
そうそう、表紙の絵が変わったそうです。
どこが?と思う人は今までの表紙をごらん下さい。
流の娘のこいしの・・・。