谷 瑞恵 『額装師の祈り 奥野夏樹のデザインノート』2020/12/21



バス事故で額縁職人であった婚約者を亡くした奥野夏樹は、彼の残した額縁のデザイン画を見て、額縁職人になることにしました。
額縁は絵や写真を飾るためだけのものではありません。何か大切な品であれば、どんなものでも額装できるのです。
夏樹のところに来る依頼人は不思議なものを持ってきます。
例えば、宿り木、セキセイインコの鳴き声、毛糸の繭、壁に描いた絵、カレーのソースポット・・・。
鳥の鳴き声なんか、どうやって額装するのかしら?

夏樹にとって額縁は「祭壇」のイメージです。
額縁の注文が入ると「依頼人の理想を取り入れながらも、夏樹自身がそのものにできるだけ近づき、オートクチュールのようにぴったりと体にあった一点ものの額縁を作る」のです。
そのためには依頼人に色々と質問し、依頼人の心の奥にある秘密を覗き、飾るもののことを詳しく知ろうとします。
夏樹がものを額縁に入れることで、依頼人の傷ついた心が癒され、過去が葬られることになり、依頼人は新しい一歩を踏み出せるようになります。

どこか得体の知れない夏樹と彼女の作る額縁の魅力にとりつかれた男がいました。
表具額縁店「くおん堂」と夏樹の店の入っているビルのオーナーの次男、久遠純です。彼は色々な口実をつかい夏樹の店にやって来ます。彼女が今の街で店を持つきっかけとなったカレー食堂で、彼女が来るのを待ち伏せることもあります。
本心なのかどうなのか、夏樹に額縁作りを教えてくれと言い出します。
やがて彼は好奇心を抑えきれず、夏樹の秘密を探っていきます。

「西洋の額縁は祭壇の装飾から変化したところが大きい」という一文が納得できました。

初めて読む作家さんかと思ったら、『めぐり逢いサンドイッチ』を読んでいました。もともとはライトノベル作家だったのですね。
『めぐり逢いサンドイッチ』を少しファンタジーにした感じの本です。
私は好きな本です。

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