深町秋生 『鬼哭の銃弾』2021/02/16



警視庁捜査一課の刑事・日向直幸は府中市内の多摩川河川敷で起こった発砲事件の捜査をすることになります。
この時に使われた拳銃が22年前にスーパー「いちまつ」強盗殺人事件で使用されていた拳銃の線条痕と酷似していました。
迷宮入りの事件に突破口が開かれたかと意気込んで府中署へ乗り込みますが、特捜本部には何やら沈滞ムードが漂っています。
日向たちと過去の経緯を知る特捜本部の面々とは温度差があるような感じです。
その上マスコミに情報がもれ、疑われる日向たち。

驚いたことに発砲事件の目撃者の証言から作成した似顔絵は、同じく刑事だった日向の父親・繁と似ていました。
日向の父親も捜査一課の刑事でした。捜査にのめり込むあまり、そのストレスを妻子にぶつけ、家庭ではDVを働き、家庭は崩壊。日向は元警察官の渚沙と結婚し子どもも産まれるというのに、十年以上も父親と会っていません。いえ、二度と会いたくないとさえ思っています。
いちまつ事件はかつて父親が担当していた事件でした。

所沢の実家に行ってみると、売家の看板があり、運転免許証の住所を調べてみると、父親の実家の住所で、そこには住んでいません。
退職後勤めた総合病院は二ヶ月前に退職していました。父と親しかったという職員に話を聞いてみると、父にいちまつ事件のことを聞かれたことがあり、彼の友だちの渡井のことを知りたがっていたことがわかります。
この病院に就職したのも、いちまつ事件が目的だったのではないのか…。

渡井は容疑者リストに載っていましたが、アリバイがありました。三年前に亡くなっています。息子の将真に当たりますが、何か隠しているようです。聞き取り後、将真を尾行します。ところが将真がアパートの駐車場に車を止め、車を降り、歩き出したところにワンボックスカーが現れ、四人の男たちが将真を拉致しようとします。
日向たちが拉致を阻止していると、そこに現れたのは、日向の父親の繁でした。
四人組は逃げ、日向が繁を捕まえようとしたところ、催涙スプレーを浴びせかけられ、繁はビッグスクーターに乗り去っていきます。

将真と繁が事件に何らかの関与しているのは明らかになりましたが、将真はなかなか口を割りません。
日向たちは再度いちまつ事件の関係者に当たってみることにします。

そうこうするうちに、繁の住処が割れます。昭島市の外れのアパートで、将真の拉致未遂の後、そこで繁は目出し帽の四人組に襲われ、行方をくらましたとのことです。
何故父は昭島市にアジトを構えたのか。
昔のことを思い返しているうちに日向はあることを思いつきます。

深町さんの本は八神瑛子シリーズを読んでいましたが、『探偵は女手ひとつ』のイメージから深町さんって女性だと思っていました。
なかなかガタイのいい男性ですね。失礼しました。
この本は頭脳を使う刑事物だと思って読んだので、内容がバイオレンスでびっくりしました。
描写、特にDV場面なんか、気分悪くなりました。
暴力場面が苦手でない人でしたら、楽しめるでしょうね。
ホント、父も子もイカレタ刑事ですわ。