中山七里 「ドクター・デスの遺産』2021/02/11

刑事犬養隼人シリーズの第4弾。
映画にもなっているので、テーマはおわかりですよね。
「安楽死」です。


警視庁本部へ小学校低学年の男の子からの通報が入ります。
昨日も電話をしてきた子ですが、通信指令センターの倉科恵子はいたずら電話だと思いほっておいたのです。
しかしあまりにも必死なので同情心が湧き、電話を刑事部捜査一課の内線に回し、同期の高千穂明日香にこの子と話してもらうことにします。
高千穂は生活安全課が志望だったのに捜査一課に回されたという変わり種で、少年犯罪に興味があります。
高千穂は万が一を考え、ペアを組んでいる犬養隼人を道連れにして、その子どもに会いに行くことにします。

前回同様、高千穂は犬養に対してとりつく島もなく、彼に対する嫌悪感を隠しもしません。そのくせなにかと犬養を巻き込もうとするのです。女心の読めない犬養にしたら、組みたくない相手です。

家に行きインターフォンを鳴らしても反応がありませんので、斎場に行って話を聞くことにします。
母親の馬籠小枝子からは犬養が話をききました。彼女は夫の健一は肺がんだったが、医師による直接の死因は心不全で、抗がん剤の副作用で心不全を起こすこともあると言われたとのこと。
息子の大地から話を聞いた高千穂によると、主治医が看取る前に別の医師と看護師が来たと言っていると言うのです。
大地から再度話を聞くと、医師はお昼前に看護婦と一緒に来て、注射をしてすぐに帰った。それから父親が静かになったので、母親が慌てて別の医者を呼び、その医者が死を確認したというのです。
事件性があると思った犬養は急いで鑑定処分許可状を発行してもらい、鑑識を呼び、遺体を解剖することにします。

解剖結果からわかったことは、検体の血液のカリウム濃度が異常に高いことでした。馬籠健一は塩化カリウム製剤の注射によって殺害された可能性が出てきたのです。
最初は口を割らなかった小夜子でしたが、犬養が防犯カメラの映像や近所の人の証言、銀行口座の取引、そして息子の大地をダシにして説得を試みた結果、やっと話し始めました。
<ドクター・デスの往診室>というサイトがあり、二十万円で安楽死を請け負うというので、小夜子は健一の同意の下、申し込んだというのです。

<ドクター・デス>とは積極的安楽死を推奨したアメリカの病理学者ジャック・ケヴォーキアンの異名です。
サイトの管理人は同氏の遺志を継承する意味で<ドクター・デス>の名前もまた継承する所存だというのです。

馬籠健一の件は氷山の一角であると見なした犬養たちは、ドクター・デスが次の安楽死に着手する前に捕まえようと考えます。
サイバー犯罪対策課の協力を得、サイト管理者の居場所を突き止めようとしますが、海外のサーバを複数経由していてたどれません。顧客データも抽出できません。唯一コメント欄に書き込みをした閲覧者のアドレスだけがわかります。その中から積極的安楽死に理解を示す者たちを拾い上げ、優先順位をつけ、連絡することにします。

やがてまた通信指令センターに不審な電話が…。

安楽死や尊厳死については様々な意見があります。それらを参考にしながら、自分や家族ならどうしたいのか、今から考えておくことが必要ではないでしょうか。
うちの父も義父母も延命治療は行わず、自然な経過にまかせ、苦しまずに亡くなりました。本人はどう思ったかはわかりませんが、端から見ると幸せな最期だったと思います。
自分や家族の時はどうなるのかはわかりませんが、苦しまずに逝けるよう今から願っています。

刑事犬養隼人シリーズ、第五弾『カインの傲慢』は昨年の5月に、第六弾『ラスプーチンの庭』は今年の1月に出版されています。



私が立ち上がると、兄犬は駆けつけ、こうやってかまって光線を発射しています。
可愛いので、抱き上げて膝の上にのせます。そうすると、静かに膝の上でずっと寝ています。
自由に動けないので困りますが、可愛いので許します、笑。
弟は10秒も膝に乗っていません。すぐに飽きて動き回ります。
犬でも性格が違いすぎて、ついつい兄の方ばかり可愛がってしまいます。

ロバート・クレイス 『危険な男』2021/02/12

ロバート・クレイスの本は4冊目です。
警官のスコット・ジェイムズと警察犬のマギーのシリーズ『容疑者』が好きです。
他の2冊は『約束』と『指名手配』で、『約束』にスコットとマギーもでてきますが、私立探偵であるコール&パイク・シリーズになります。
他の出版社でコール&パイク・シリーズの初期の作品が出版されていましたが、今は絶版みたいです。英語で読むしか無いのかしら…。


今回、海兵隊あがりの元警察官ジョー・パイクは女性を助けます。
探偵だけど、誰も依頼しないので一銭にもなりません。もちろん相棒のエルヴィス・コールも手伝います。良い奴らです、彼らは。

銀行の帰りにパイクは、銀行の窓口の女性イザベルが男達に拉致されるのに遭遇します。車を追いかけ、無事にイザベルを救い、二人組の犯人を警察に引き渡しました。しかし次の日に犯人は釈放されてしまいます。
犯人釈放を知ったイザベルはまた襲われるのではないかと心配し、パイクに電話をかけ、メッセージを残し、失踪します。
釈放後すぐに二人組は殺害されていました。
一体イザベルは何のために拉致され、どこにいるのか。
パイクはコールとロサンゼルス市警の科学捜査官ジョン・チェンの助けを借り、イザベルを探し回ります。

残念なのは、イザベルがパイクが命を賭けるような価値のない女ってことです。自分の命が狙われているのに、そんなこともわからないお気楽なおバカです。
クレイスさんの女性観の反映?

ミステリーというよりハードボイルドって感じです。
「パイク、素敵」って思いたい女性向きのお話ですね。
頭を使わずスラスラと読めちゃって、物足りないです。
次回はもっと読みごたえのある物を希望しますわ。
犬のマギーが出てくるといいのだけど(こればかり、笑)。

矢崎存美 『名探偵ぶたぶた』2021/02/13



いつも可愛い表紙のシリーズです。
題名の『名探偵ぶたぶた』から、ぶたぶたさん、探偵になるんだと思ったら、違いました。
別に探偵になってもいいと思いますよ。ぬいぐるみのフリをして座っているだけで、みんな気づかずにいるでしょうから、笑。

読んでいると、ァ!これ知っているという場所が出てきます。
鈍い私でも気づきました。最初に出てくる文壇カフェとか海の家「うみねこ」とか。どの話もぶたぶたさんが現れた場所が舞台なんですね。
ぶたぶたさん、色々な場所で働いていますね。

事件に挑むぶたぶたさんではなく、「日常の謎」に挑むぶたぶたさんを5話、読めます。
私は何と言っても美味しい物の出てくる話がいいですわ。
カフェタイム限定のスイーツコッペパン二種盛りなんかは、コッペパンのお店にずっと行っていないので、食べたくなりました。生クリームもいいけど、あんバターも美味しいんです。
レモンパイのかき氷ってどんなの?
昨年はかき氷が食べられませんでしたけど、一年に一回は食べたいですよね。別に一回でなくてもいいけれど。

どのお話もほんわかするものです。一時日常を忘れ、カップ片手にぶたぶたさんと一緒にのんびりしましょうよ。

「ストーリー・オブ・マイライフ / わたしの若草物語」を観る2021/02/14

ルイーザ・メイ・オルコットの書いた『若草物語』のその後を描いた映画です。
今調べてわかったのですが、続編で『続若草物語』、『第三若草物語』、『第四若草物語』が書かれていました。
四姉妹のその後を脚本家が考えて書いたのではなく、オルコットの原作を元にして作られた映画です。

『若草物語』のことを知っている人はどれほどいるでしょうか?
たぶん読んだことのない人が多いと思います。(アメリカでは今でも読まれているのかしら?)
簡単に言うと、南北戦争に行った父親が帰ってくるのを待っている四姉妹のお話です。
私は小学生の時に読んだと思うのですが、それほど内容を覚えていません。
どちらかというと、同じ頃に読んだ『森は生きている』の少女が一人でマツユキソウを探しに行ったり、『点子ちゃんとアントン』のアントンがスクランブルエッグを上手に作る場面の方が印象に残っています。
私にとって『若草物語』はそれほど面白くはなかったってことですかね、笑。
映画は『若草物語』と『続若草物語』以降の話が入り組んでいますので、最初は戸惑うかもしれません。


『若草物語』ではマーチ一家の父親は南北戦争に従軍牧師として出征しています。
(私は父親が牧師だということを忘れていました)
父親の家は裕福だったようですが、父親の投資が失敗し破産。その後、牧師となったようです。戦争から戻ってきてからもかなり影が薄いです。

母親のミセス・マーチは映画では四姉妹から慕われる賢母ですが、40年間毎日、怒りを制御するようにしていると言っているのが気になります。
経済的にかなり苦しい暮らしをしているのにもかかわらず貧民救済活動をしています。意地の悪い見方をすると、中流階級としての対面を保つため、施すことで、施しをされる側ではないと示している、プライドの高い女性なのかもしれませんね。

長女のメグは女優の素質があり、美しく女らしいのですが、保守的な人で、隣人のローリーの家庭教師だったジョン・ブルックと結婚し、自分の母親と同じような貧しい暮らしをしています。

次女のジョーは男勝りのおてんばで、小説家を目指す文学少女。いずれは文筆で身を立て、家族に楽な生活をさせてあげたいと思っていました。
裕福な父の伯母のマーチ伯母さんの相手をして生計を助けていましたが、ニューヨークに行き、下宿屋で家庭教師をしながら文筆修行をしています。
初めて小説が売れましたが、母が嫌がるからと本名は使っていません。
一生結婚しないと言っていますが…。

三女のベスは内気で病弱、ピアノを弾くことが大好きです。ピアノが縁となり、隣のローレンス氏との間に友情が芽生えます。長じても健康には恵まれません。

四女のエイミーは甘やかされて育ったため、ちょっとわがままなところがあります。自分の思い通りにならないと、とんでもないことをしちゃいます。ジョーといつも喧嘩をしています。
絵を描くことが好きで、芸術家になりたいという夢を持っていました。
マーチ伯母さんに連れられてヨーロッパ旅行に行き、絵の勉強をしますが、自分の才能の限界に気づき、芸術家の夢はあきらめ、金持ちと結婚することにします。

マーチ家の隣人で、非常に裕福なローレンス家の一人息子のローリーはジョーと同い年で、快活で茶目っ気があり、誰からも好かれる性格。
ジョーのことが好きで、プロポーズをしたのですけど…。

四姉妹の役者が私のイメージと合っていなくて、それが残念でした。
長女役のエマ・ワトソンは長女には見えませんでした。どちらかというと、ジョーが長女みたいですね。そうそうジョーは私の中では黒髪です。
エイミー役の人は生意気な感じが『若草物語』の場面には良いのかもしれませんが、その後では洗練されたおしゃれな淑女という感じではなくて(ごめん)、現代的なちゃっかり娘って感じで、こんな女性を紳士が相手にするのか疑問でした。
ローリーはイケメンでしたが、あんなに思慮の無い奴だったかしら?
マーチ伯母さんはいけ好かない嫌みな老婦人でしたが、後でとっても四姉妹のことを思ういい人だったということがわかります。メリルはこういう役が上手いですね。
男性は父親を含め、全く印象に残りませんでした、笑。

この映画は『若草物語』を知らない人が観てはいけない映画だと言っておきます。
知らないと、どこが過去でどこが現在というのがわからないので、途中で筋を追うのをあきらめて寝てしまうかもしれませんもの。
観る前に必ず本か筋書を読むか、前に作られた映画の『若草物語』を観るかして、予習してから観ましょうね。

観ながらこの時代はマーチ伯母さんのいうように「女にとって結婚は経済的問題」という言葉通りの時代なのだと思いました。
さて、四姉妹はどういう人生を歩むことになるのでしょうか。


今日はバレンタインデー。チョコはネットで頼みました。


12人のショコラティエのコレクションです。4個食べたら、どれもビターでした。
チョコだけでは物足りないので、クッキーも頼みました。


こちらの方が私の好みかも。

ロバート・ベイリー 『ラスト・トライアル』2021/02/15

東日本大震災から10年が経とうという時に地震が起こるなんて、何か嫌な感じです。結構長く揺れ、あの時も揺れが長かったのを思い出しました。
家の兄犬が寝ていたのに、ハウスから飛び出てきました。


彼の寝ているところに本棚があるので、本が落ちてくると危ないので、寝場所を変えた方がよさそうです。
テントや食料など蓄えておいたので、3日はどうにかなるかもしれませんが、マンションが崩れてしまうと、どうなるのか心配です。
何かの時にどう行動したらいいのか、シミュレーションしておくといいかもしれませんね。
日本は災害に弱い国だということ肝に銘じておきましょう。


元大学教授トム・マクマートリー・シリーズの新作です。

相棒のリックが家族の不幸で一時故郷に戻ることになったため、トムはしばらく一人で弁護士業務を行うことになりました。
そんなある日、事務所に行くと、ひとりの女の子が彼を待っていて、母親のために弁護してほしいと言います。
彼女はローリー・アン・ニュートンと言い、父親は三年前にヘンショーでの交通事故で亡くなった運転手のデューイ・ニュートンで、母親は売春の罪で服役したウィルマ・ニュートンだというのです。あの因縁の裁判の関係者です。(『ザ・プロフェッサー』参照)
ウィルマは、ヘンショーの裁判で逮捕され、出所したばかりのジャック・ウィリストーン殺害の容疑者として逮捕されたのです。
彼を殺害した銃の所有者がウィルマで、銃には彼女の指紋がついていました。
トムと法廷で争う相手は彼の教え子であり友人でもある人たちでした。
トムはローリーのために弁護を引き受けることにします。

物的証拠はすべてウィルマが犯人であると示しています。
勝ち目のない裁判にどうトムは挑むのか。

一作目『ザ・プロフェッサー』、二作目『黒と白の狭間』、そして三作目がこの本『ラスト・トライアル』です。
このシリーズは四部作ということなので、四作目の『The Final Reckoning』の翻訳が待たれます。
とにかくトムの身体が心配です。
後書きに著者の妻と父が肺がんで、父は亡くなり、妻は寛解したと書いてあります。このことが癌を患うトムを描くことに深みを与えているように思います。
最後にトムがどういう生き様を見せてくれるのでしょうね。


夫がランチにサンドイッチを持って行くので、たまにパン屋のパンも買っています。


渋谷(だと思う)のお店のパンを送ってもらいました。
2週間ぐらいかかると書いてあったのに、すぐに届きました。(予定が狂ったわ)
今週末にもパンが届くので、しばらくパンばかり食べていそうです。

深町秋生 『鬼哭の銃弾』2021/02/16



警視庁捜査一課の刑事・日向直幸は府中市内の多摩川河川敷で起こった発砲事件の捜査をすることになります。
この時に使われた拳銃が22年前にスーパー「いちまつ」強盗殺人事件で使用されていた拳銃の線条痕と酷似していました。
迷宮入りの事件に突破口が開かれたかと意気込んで府中署へ乗り込みますが、特捜本部には何やら沈滞ムードが漂っています。
日向たちと過去の経緯を知る特捜本部の面々とは温度差があるような感じです。
その上マスコミに情報がもれ、疑われる日向たち。

驚いたことに発砲事件の目撃者の証言から作成した似顔絵は、同じく刑事だった日向の父親・繁と似ていました。
日向の父親も捜査一課の刑事でした。捜査にのめり込むあまり、そのストレスを妻子にぶつけ、家庭ではDVを働き、家庭は崩壊。日向は元警察官の渚沙と結婚し子どもも産まれるというのに、十年以上も父親と会っていません。いえ、二度と会いたくないとさえ思っています。
いちまつ事件はかつて父親が担当していた事件でした。

所沢の実家に行ってみると、売家の看板があり、運転免許証の住所を調べてみると、父親の実家の住所で、そこには住んでいません。
退職後勤めた総合病院は二ヶ月前に退職していました。父と親しかったという職員に話を聞いてみると、父にいちまつ事件のことを聞かれたことがあり、彼の友だちの渡井のことを知りたがっていたことがわかります。
この病院に就職したのも、いちまつ事件が目的だったのではないのか…。

渡井は容疑者リストに載っていましたが、アリバイがありました。三年前に亡くなっています。息子の将真に当たりますが、何か隠しているようです。聞き取り後、将真を尾行します。ところが将真がアパートの駐車場に車を止め、車を降り、歩き出したところにワンボックスカーが現れ、四人の男たちが将真を拉致しようとします。
日向たちが拉致を阻止していると、そこに現れたのは、日向の父親の繁でした。
四人組は逃げ、日向が繁を捕まえようとしたところ、催涙スプレーを浴びせかけられ、繁はビッグスクーターに乗り去っていきます。

将真と繁が事件に何らかの関与しているのは明らかになりましたが、将真はなかなか口を割りません。
日向たちは再度いちまつ事件の関係者に当たってみることにします。

そうこうするうちに、繁の住処が割れます。昭島市の外れのアパートで、将真の拉致未遂の後、そこで繁は目出し帽の四人組に襲われ、行方をくらましたとのことです。
何故父は昭島市にアジトを構えたのか。
昔のことを思い返しているうちに日向はあることを思いつきます。

深町さんの本は八神瑛子シリーズを読んでいましたが、『探偵は女手ひとつ』のイメージから深町さんって女性だと思っていました。
なかなかガタイのいい男性ですね。失礼しました。
この本は頭脳を使う刑事物だと思って読んだので、内容がバイオレンスでびっくりしました。
描写、特にDV場面なんか、気分悪くなりました。
暴力場面が苦手でない人でしたら、楽しめるでしょうね。
ホント、父も子もイカレタ刑事ですわ。

埜納タオ『夜明けの図書館』終わる2021/02/17

マスクが潤沢に売っているこの頃。色々なメーカーのを買って、どれがいいのか試しています。
今日ビックリしたのが、シャープ、また当たっちゃいました。これで5回目(かもっと)。最初は嬉しいので、買っていたのですが、今は他のマスクもあるので、もういりません。
パナソニックのマスクは、発売当初はなかなか買えませんでしたが、買えるようになっています。
今はネピアの長時間フィットマスク「密リスクの高い予定の日に」が欲しいのですが、なかなか当たりません。
昨年のマスクがない時のトラウマか、マスクを1年間ぐらい買わなくていいぐらい溜め込んでいます。マスクのコレクターか、笑。



図書館の仕事のうちのレファレンスサービスを描いた漫画です。
7巻が出ましたが、これで最後のようです。
市立図書館で働く新米司書・ひなこが、日々利用者からの質問に答えようと奮闘する姿が描かれていましたが、今回は最後なので図書館が行っている他のサービスについて描かれています。(間違いがあったらご指摘ください)

まず学校教育支援サービス。
学校図書館に資料の貸出をしたり、学校図書館司書や先生方に対する支援があるようです。
漫画ではあまり使われていない学校図書館に派遣された司書の苦労する様子が描かれています。
例えば分類番号が統一されていなかったり、同じ本が何冊もあったり、古い資料がそのまま置いてあったりするので、分類番号の統一や配架の見直し、本の除籍・廃棄、選書等色々としなければならない仕事が多そうです。
それ以上に図書の係の先生との関係構築が一番難しそうです。先生も担任をしていたり、授業等で忙しいですから、図書室なんかに関わっていられないですよね。
今は色々な子どもたちがいるので、その対応も大変そうです。図書で調べ学習をしている時に先生が子どもたちを放置している場面が描いてあって、授業は先生がやるものなのに司書に任せられても困るよなぁと思いました。
小学生の低学年の子は図書の時間が好き、特に読み聞かせが好きとか言っていたので、学校図書館司書もやりがいがありそうです。

図書館は地域資料収集とか情報提供サービスというのもしているようです。
漫画では災害史保存について描かれていました。
葵の働く図書館で「暁月豪雨災害記録集」を作成することになり、証言を募っていました。子どもを20年前の災害で亡くした女性がたまたま訪れ、自分の住んでいた花岡地区に2000年の災害以前に災害があったのかどうか聞いてきました。葵は地域資料を当たりますが、どの資料を当たってもわかりませんでした。しかし同僚の何気ない一言により手がかりが得られます。
昔の資料を大切に保存しておくことは大事ですが、保存しておくだけではなく、その情報を必要とする人に的確に渡るようにしなければなりません。図書館は情報発信の場でもあるんですね。

図書館では子育て支援もしています。例えば”赤ちゃんタイム”とか”ブックスタート”とかお話会とか、それぞれの図書館によって名前が変りますけど。
どの図書館でも子育て関係の本(妊娠、出産、育児、しつけ、家庭教育等)はコーナーにまとめて置いてあるので、探しやすくなっています。
お子さんのいる方は児童館もいいけれど図書館にも行って、どんな本があり、何をやっているのか見てみるのもいいかもしれませんね。

『夜明けの図書館』の最後は「お勧めの本」についてです。
あまりよく知らない人に「面白い本ない?」とか「お勧めの本は?」とか聞かれても困りますよね。人の趣味・趣向は様々ですから、色々と質問してその人のことを知ろうとするのですが、子どもなんかは質問をするとすぐに「めんどくさいからいい」とか言って話になりませんよね、笑。
図書館の司書さんはどうやって本を選んでいるんでしょうね。今度聞いてみましょうかしら(きっと嫌がられるわね)。
さて、葵さんが女の子の「社会人になる前に読むような本ってありますか?」にどう答えているのか、そして同僚の大野さんへのお勧めの本は何なのか、お手並み拝見です。

図書館の仕事って本の貸し借りだけだと思っていましたが、他の役割もあることがわかった漫画でした。
レファレンスはそう簡単にはできないことですねぇ。それだからこそやりがいがありそうですけど。
今私は図書館には予約した本を借りに行くだけなのですが、他の使い方も考えてみたいです。近所の図書館を調べてみてもあまりたいしたサービスが無いようですけど…。


弟犬の変顔です。


なんでこんな顔になったのかしら?

「グリーン・ブック」を観る2021/02/18

アカデミー賞、三部門(作品賞、助演男優賞、脚本賞)を受賞した作品です。
真面目な黒人差別を描いた映画かと思ったら、ちょっと違いました。
実在したジャマイカ系アメリカ人のクラッシックとジャズピアニストであるドン・シャーリーと、1962年に運転手兼ボディガードとしてドンに雇われたイタリア系アメリカ人のトニー・ヴァレロンガが、アメリカ最南部を回るコンサートツアーを基に作られた映画です。

「グリーン・ブック」とは1936年から1966年まで出版されていた、アメリカ黒人のためのガイドブック、「黒人ドライバーのためのグリーン・ブック」のことです。
人種差別の激しい南部を黒人が快適に旅するために、宿泊や飲食、給油、車の整備や修理などがどこでできるかが書かれていたようです。
(ネタバレあり)


1962年、ニューヨーク。
トニー・ヴァレロンガはナイトクラブの用心棒をしていましたが、ナイトクラブが改装工事のため閉鎖されてしまったため仕事がなくなってしまいました。
そんな矢先にディープサウスを回る8週間のコンサートツアーの運転手の話がきます。
カーネギーホールにある部屋に面接に行くと、ドン・シャーリーという黒人が雇い主であることがわかります。
実はトニーは黒人は苦手です。家に黒人の修理工が来た時に、彼が飲んだコップをゴミ箱に捨てるほどですもの。
ドンはトニーに黒人との仕事に抵抗がないか、ツアーから帰るのはクリスマスになるが大丈夫か、身の回りの世話もするなど仕事内容を話します。トニーは身の回りの世話は断りますが、ドンはトニーが気に入り、彼をツアーの運転手として雇います。

二人の旅が始まります。
ドンは9歳からレニングラード音楽院で英才教育を受けてきた学のある洗練された物腰の人。
トニーは正反対で、食べ方は汚いわ、言葉は悪いわ、言動が粗野そのもの。
例えば売り物の翡翠が落ちていたからとがめたり、手づかみで食べたチキンの骨を車の窓から捨てるような奴です。
こんな二人ですから、最初はぶつかってばかりです。

やがてトニーはドンのピアノの素晴らしさに感銘を受けると共に人種差別の実態を知ることになります。
コンサート会場に行くと、ピアノがゴミまみれです。会場係は黒人はピアノなら何だって弾くだろうと平気です。
一人でドンがバーに行くと、白人たちが絡んできて、ドンはボコボコにされます。
ある屋敷で演奏した後に出されたディナーはフライドチキンとコーン。他のお客たちはちゃんとしたディナーなのに。トイレを使おうとすると、白人用の屋敷のではなく、有色人種用の外にあるのを使えと言われます。
雨の中で道に迷っているとパトカーが来て、日没後に黒人が外出することは違法であると因縁をつけられます。頭にきたトニーが警官を殴ってしまったため、二人は留置所にいれられます。(この時ドンは司法長官のケネディに電話をします。知り合いだったのね)
ドンはトニーに耐えろ、暴力に訴えるなと言いますが…。

ドンの言葉が悲しいですね。
「私は独りで城住まいだ。金持ちは教養人と思われたくて、私の演奏を聴く。その場以外の私は唯のニガー。それが白人社会だ。その蔑視を私は独りで耐える。はぐれ黒人だから。
黒人でも白人でもなく、男でもない。私は何なんだ」

一緒に過ごすうちに段々と二人は互いに理解し合えるようになります。
トニーはドンの苦悩を、ドンはトニーの家族思いの強さを知り、トニーはドンを守り、ドンはトニーに奥さんへの手紙の書き方を教えます。

彼らはバーミンガムまで来ました。
映画によると、バーミンガムは1956年にナット・キング・コールが初めて白人観客の前で歌った場所で、その時白人たちが彼をステージから引きずり下ろして、袋だたきにしたというのです。ひどいですね。
そういう町ですから、コンサートを開くカントリークラブのレストランで食事をしようとすると断られます。ドンはここで食べられないなら今夜の演奏はしないと言いますが、差別ではなく土地のしきたりだと返されます。支配人はトニーに金を渡し、ドンを説得してくれと頼みますが、トニーは断ります。
ドンは君が望むなら演奏すると言いますが、トニーはドンを連れてカントリークラブを後にし、黒人専用のクラブで食事をします。
ドンがタキシードを着た場違いな服装なので、回りの人たちは彼をジロジロみています。
トニーがドンはピアニストだと言うと、演奏を聴かせてくれと言われ、ドンはピアノを弾き、喝采を受けます。
やがて店のバンドのプレイヤーも参加して、ドンはアドリブを披露します。
二人は楽しい時を過ごします。

コンサートが終わり、NYに戻ることになります。しかし、外は大雪・・・。
クリスマスに間に合うでしょうか。

似たような映画では「ドライビングMissデイジー」がありましたね。こちらは品がよろしかったですね、笑。
実際の彼らがどうだったのかはわかりませんが、付き合いが長く続いていたらいいですね。
アカデミー賞の作品賞を取るほどの作品かというと…?

篠田節子 『肖像彫刻家』2021/02/19

先日、夕食を食べ終わった夫に、「食器をうるかしといて」と言ったら、「それどこの方言?」と言われました。
夫がからかっているんだと思って一応調べてみると、しっかりと方言でした。(主に東北と北海道で使われています)
東京人だったら、「水に浸けといて」と言うのでしょうね。
〇十年生きていて、「うるかす」が北海道の方言だと初めて知りました。

では、私が標準語だと思っていて、北海道弁だと知った言葉の中から代表的なものをご紹介しましょう。

①「ぼっこ取って」⇒「を取って」
②「これ、投げといて」⇒「これ、捨てといて」
③「あぁ、こわい」⇒「あぁ、疲れた
④「おっかない」⇒「怖い
⑤「これとばくって」⇒「これと交換して」

全部できたら、あなたも北海道弁の権威です(笑)。
他にも色々とありますが、道産子は自分たちの言葉を標準語だと思っていますから(私だけ?)、指摘されるとビックリしますよ。
北海道出身の人がいたら、方言だと知らずに使っている表現を見つけて指摘してあげて下さい。「標準語だと思っていた」と言うと思いますよ、笑。



肖像彫刻家って職業があるんですね。
私は銅像などは彫刻家が作る彫刻の中の1つだと思っていました。

高山正道は美術大学を卒業後、抽象彫刻で展覧会にも入選したのですが、食べていけず、短大の非常勤講師をしてもアルバイト程度の収入で、公立高校の美術教諭をしている妻に食べさせてもらっていました。
彼の両親と同居後17年経って、妻が息子を連れて出て行ってしまいます。
その後、大学と予備校で教えて糊口を凌いでいましたが、四十を過ぎてしばらくして、イタリアで肖像彫刻家として成功した美大の先輩・御園康成から声がかかり、御園が世話になった親方に弟子入りすることになります。
生真面目な性格が幸いして、二、三年で、工房でいなくてはならないスタッフの一人にはなれましたが、「芸術家」にはなれませんでした。
八年が経ち、イタリアで身に付けた技法で生きていこうと思い、日本に帰ってみると、父も母も亡くなっていました。
正道は父が言った「モノになるまで一切、連絡も寄越すな」を律儀に守ったため、知らなかったのです。
姉に親の遺産を分けてもらい、再出発の場として、八ヶ岳連峰を望む農村、山梨県南麓町に移り住み、工房を開くことにします。
しかし、そう簡単に銅像の注文は来ません。それでも家賃がただ同然なので、親の遺産と大家からの施し、富沢鋳造所のバイトでなんとか暮らしていけます。

最初に来た注文は地元の回向院の雪姫の像でした。
一体目は忠実に姿を写した分身を、二体目は個性を付け加えた像を作りましたが、
二体目の像に不思議な現象が現れます。
正道は変った銅像を作るということで有名になってしまい、様々な人が彼に銅像を注文してきます。

うだつの上がらない彫刻家が色々と翻弄される様が面白かったです。
少しのホラーにユーモアが加わった小説です。
御園のモデルは奥村伸之なのかしら?

髙田郁 『あきない世傳金と銀 十 合流篇』2021/02/20



大阪から江戸に出店した幸でしたが、呉服仲間を追われ、太物商いを始めました。
幸は職人たちと知恵を出し合い、これまでにない浴衣地の開発に挑んでいます。
藍染めの白抜きの紋様を施した反物を、「湯帷子」だけではなく、湯屋の行き帰りにも、家でのちょっとした寛ぎの時にも使ってもらえる「浴衣」にするのです。
妹の結とのこともあり、幸は密かに事を進め、一気に成し遂げることにします。

そんな頃、隣の提灯屋の三嶋屋が、来年の夏頃を目途に遠州の方に移ろうと思っているので、地続きの家屋敷を買ってはもらえないかと言ってきます。
返事は急がないというのですが…。

大阪から五鈴屋四代目の元女房・菊江と大阪本店の番頭・鉄助、女衆頭・お梅がやって来ます。
菊江は大阪を引き上げ、江戸でくらすために来ました。彼女には何やら考えがあるらしく、彼女から話すまで、何も聞くなと幸に頼みます。しばらくして、隣の三嶋屋を買い上げると言い出します。

新しい浴衣の図案はなかなか決まらず、時が過ぎていきます。
宝暦八年の元旦に雷門外の番屋から呼び出しを受けます。
行ってみると、番屋で保護した旅人がいるとのこと。それは型彫師・梅松の知り合いの誠二で、梅松を頼って郷里の白子から飛び出してきたのです。
賢輔は両国の川開きの花火を図案にしましたが、誠二の助言でなんとか図案の見通しが立ちます。

様々な人たちの助けを借り、いよいよ五鈴屋江戸本店は両国の川開きの日に狙いを定めて動き出します。

いつもは最後にとんでもない災いがやってきて、次回はどうなるのか…という展開になりますが、今回は違います。
最後はほんわかした感じで終わりますので、安心してお読み下さい。
十一巻に何があるのか・・・怖いですねぇ(笑)。