碧野圭 『書店員と二つの罪』2021/03/03

キエフ・バレエの「くるみ割り人形」と「雪の女王」が配信されています。
「雪の女王」は日本初公開です。
簡単に言うと雪の女王に連れ去られた男の子を探し回る女の子のお話で、アンデルセンの話が基になって作られています。
日本語のあらすじもついていますので、お子さんと一緒に観ても良いかも。


椎野正和は大学を卒業してからずっと書店で働いています。今は契約社員ですが副店長で、主に文芸書を扱っています。一応カリスマ書店員の一人です。

ある日、17年前に名古屋で起きた女子中学生殺人事件の犯人が書いた告白本が新刊本として届きます。
その事件は女子中学生が殺され、頭と手足、胴体が切り離され、彼女が通っている中学校の校庭に放置されていたというもので、犯人は正和と同じクラスの男子中学生でした。
実はこの犯人は正和の家の隣に住んでいた友人でした。そのため正和は共犯ではないかと疑われてしまいます。
事件後、正和は名古屋を離れ、祖父母の家に世話になり、そこから高校に通いました。その時のことがトラウマとなったのか、今でも事件当時の記憶が曖昧で、思い出そうとすると気分が悪くなります。
しかし何故今頃、告白本などを書いたのだろう。
出版社は売れると思えば、どんな本でも出版し、書店は売れればどんな本でもに売るのかと憤る正和。

久しぶりに名古屋の家に帰ると、隣の家にあったみかんの樹は切られており、庭には誰がしたのかゴミが沢山投げ入れられています。
正和の弟の和秀は犯人の弟と親友であったため、事件後にひどいいじめに遭い、事件のショックといじめの苦しみから、引き籠もりになっていました。
家に帰ってしばらくして、元同級生の加藤つぐみから電話が来ます。クラス会のことを話した後、二人で会いたいと言われますが、何故自分に会いたいのかと疑念を抱く正和でした。

つぐみと会った後、高速バスで東京に帰る予定でした。
バスの窓側の席に座っていると、あの事件の時に現れた『週刊トレンド』の記者・青木毅が隣の席に座ってきます。会いたくない相手でした。青木の記事のせいで正和が共犯ではないかと疑われたのです。
青木は17年前のことは時効だとか、俺が書かなくても他の誰かが書いたはずだとか、大衆が欲したことだとかほざき、悪いことをしたとは思っていないようです。
あの本を読んだ感想を聞きたいようでしたが、読んでいないという正和に、彼は意味深なことを言います。
「きみに会いたかったのは違和感を覚えたからだ。…あれはほんとうにやつが書いたのだろうか?」と。
この青木の言葉が気になり、正和は本を読むことにします。
そして正和も違和感を感じます…。

神戸の酒鬼薔薇事件を下敷きに、「書店ガール」を入れてみましたという感じのミステリーです。
「書店ガール」、面白かったけど、紺野さん、次はこの路線でいこうと思っているのかしら?
出版社や書店、そしてマスコミの良心に関して、色々と考えさせられました。
最後は書きませんが、ちょっと薄気味が悪かったです。
正和は納得して生きていけるのでしょうかね。


ひと暴れした後のヨーキー。相手をするのも疲れます。


よくよく考えてみると、彼は人間では40歳。
人間の40歳が彼のように走れる?
普通の40歳なら、アキレス腱を切ってるわね。