畠中恵 『いわいごと』2021/03/15

町名主の跡取り・高橋麻之助シリーズ、第8弾。


町名主って大変なんですねぇ。
麻之助にくる相談事っていつも普通じゃないんですもの。
それを頼りなさげな麻之助が解決していくんですから、見かけによらず結構やり手ですね。
お雪との縁談の方はなかなか進みません。縁がないのでしょうか?

さて、今回の相談事は6つです。
『こたえなし』
3人で買った富みくじが当たって、15両が手に入りました。
一緒に旅に行くはずだったのですが、行き先が三者三様で揉めてしまいます。
父の宗右衛門に行き先の裁定を押しつけられた麻之助はお雪と一緒に調べることになります。
話を聞いていくと3人は旅先で揉めているのではありませんでした。三人共、五両を他のことで使いたかったのです。
麻之助は彼らの望みを叶えられるでしょうか。

『吉五郎の縁談』
友の相馬吉五郎の縁談がやっと決まりました。
ところがしばらくして、破談になりそうだと八木清十郎が言ってきます。
それというのも吉五郎の御用箱の中に血でべっとり濡れている包丁が入っていたのだというのです。小者は包丁のことを知らないといったため、吉五郎が呼び出され聞かれると、知らない物だと答えたそうで、こんなことはあってはならないこと故、吉五郎は屋敷に留め置かれたそうです。
このままでは縁談も昇進も駄目になりそうです。
麻之助と清十郎は吉五郎のために奔走します。

『八丁堀の引っ越し』
相馬小十郎が江戸町奉行所の吟味方与力に昇進することになります。
そのため住んでいる同心屋敷を片付け、与力の屋敷へ引越すことになりますが、人出が足りなく、麻之助と清十郎、そして高利貸しの丸三が手伝うことになります。
丸三が言うことには、引越し先の屋敷は三倍近い部屋があり、相馬家の家財が少なく、体面に関わると思ったので、札差の大倉屋が与力就任の祝いについて問うてきたので助けを求めておいたとのことです。
大倉屋は家財を出す代わりに、相馬の前任与力がなぜ小普請入りしたのか、その訳を知りたいと言います。
家財確保のため、麻之助たちは小十郎が帰ってくるまでに皆が知っている事から事情を推察していくことになります。

『名指し』
四町の町名主横尾家の当主と跡取り息子が共に亡くなってしまったため、次の町名主を決めなければなりません。隣町の町名主の名が出ましたが、支配町の家主一同が承知しませんでした。そこで日本橋の北辺に支配町を持つ9人が呼び出され、話し合われました。3人まで候補を絞れましたが、決まりません。
町名主が決まるまでの代理ということで、麻之助が四町を任されてしまいます。
毎日、途切れなく厄介事がやってきて、忙しい麻之助です。
さて、次の町名主は誰になるのでしょう。

『えんむすび』
先日の件があったので、町年寄樽屋が麻之助の縁談を仲立ちすることになります。
ところが縁談が3つもあり、そのどれもが町名主の娘でしたが、それぞれに大名との縁談がある、武家奉公にいく、縁談が決まったなどという噂があり、まとまりそうもない話ばかりです。
吉五郎、麻之助、清十郎と丸三が、3つの縁談の隠された事情を探っていきます。

『いわいごと』
なんとまあ、麻之助の嫁が決まりました。
決まる時はあっけなく決まるもんですね。
両家の親たちが高橋家に集まり、祝言の話を決めていると、花梅屋のお雪が相談事があるとやってきます。
許婚を紹介がてらに会ってみると、そこにはお雪の他に彼女の許婚である夏月屋の正兵衛とその母の紗々女がいました。
紗々女によると、持参金の土地の沽券状を夏月屋で見せてもらったら、沽券状がその場から消えてしまって見つからないと言うのです。町与力の相馬小十郎に相談してみると、花梅屋の町名主の高橋家に話を聞いてもらえばいいと言われたということでやって来たというのです。
小十郎が回してきた話故、自分の祝言で忙しいというのに、許婚の助けを借り、麻之助、頑張ります。

やっと嫁が決まり、麻之助にも幸せがやってきましたね。
嫁もなかなか想像力のたくましい人みたいで、麻之助の思いも寄らないことを思いついたりして、麻之助のいい相談相手になりそうです。
江戸時代のお見合いって、ちらりと見るぐらいで、夫婦になってから知り合っていくという感じなのですね。それこそ第一印象で決まったってことですね。
そんなんでも上手くいくことが多かったってことですか…。
今と比べて、どちらがいいのかしら?