梶よう子 『本日も晴天なり 鉄砲同心つつじ暦』2021/05/22



鉄砲同心の礫家は、大久保百人町の屋敷に十七坪という広大な土地を与えられています。
平時の世では、将軍の警護が主な役目で、禄高が上がる見込みなどありません。
そのため三十俵二人扶持ではとうてい食べていけず、火薬の材料を使ったつつじ栽培が生計の支えとなっていました。
季節になると大勢の花見客がつつじを見に訪れます。

ちなみに他の鉄砲隊はそれぞれ提灯、傘張り、朝顔栽培などで糊口をしのいでいたようです。

礫家の父の徳右衛門は五十六歳になるというのに、今もなお役目に就いており、息子の丈一郎に家督相続をする気配すらありません。
頑固でともすれば子どものような面もあるお方です。
祖母の登代乃はこの頃物忘れがひどくなりましたが、どんな時にも子の徳右衛門のことだけは覚えています。流石母親ですね。
息子の丈一郎は鉄砲よりもつつじ栽培の方が好きなぐらいで、つつじ作りの才能もあり、それが徳右衛門には面白くないようです。
母の広江は温厚な人で、上手く夫と姑に仕えています。
妻のみどりは勝気で、遠慮することがないので、彼女の物言いにハラハラすることがあります。
一人息子の市松は素直な良い子に育っています。

こんな礫家に次々と持ち込まれる事件を、丈一郎は直情的な徳右衛門に配慮しながら、なんとか解決していきます。
幕末のホームドラマという感じの本です。