喜多喜久 『科警研のホームズ (1)~(3)』2021/07/08



このシリーズの三巻目を間違って読んでしまい、仕方ないので一巻から読み直しました。
一、二巻は舞台が科学警察研究所・本郷分室で、三巻は東啓大学理学部・寄附講座『科学警察研究講座』という違いがあります。

科捜研というのは聞いたことがありますが、科警研って初めてでした。
科学捜査研究所(科捜研)は各都道府県の警察本部の付属機関で、科学捜査の研究及び鑑定を行います。
科学警察研究所(科警研)は警察庁の付属機関で、主に捜査の手法や犯罪予防などの研究活動を行います。

科学警察研究所・本郷分室に三人の研修生がやってきます。
北海道警の北上純也(26)と兵庫県警の安岡愛美(26)、埼玉県警の伊達洋平(28)です。
北上は上司から強引に研修を受けるように説得され、安岡は技術を磨くため、伊達は科警研入りを狙ってこの研修を志望しました。
室長は土屋で、かつては科警研の研究室長をしていた、鋭い洞察力と推理の切れ味から「科警研のホームズ」と言われている人です。
しかし誤認逮捕をしたため科警研を辞め、今は東啓大学の理学部准教授をしています。
実はこの分室は、現在の科警研の所長の出雲が、土屋を科警研に呼び戻すために作ったものだったのです。

土屋は研究に夢中になると、興味のないことは忘れてしまいます。もちろん無理矢理押しつけられた研修生のことも頭にありません。
仕方ないので、出雲は研修生たちに未解決事件の捜査に協力するようにと指示を出します。土屋の方は君たちに任せたと丸投げですけどね、笑。
三人は自分たちの得意分野を生かして捜査に挑みます。
土屋の出番は彼らが行き詰まった時です。
「科警研のホームズ」というのも伊達ではなく、彼らに的確なアドバイスを与え、事件解決へと導きます。(『科捜研のホームズ (1)』)

研修は一年の予定でしたが、もう一年延び、今度は出雲ではなく、自分たちで「解決が困難な、不可解で難解な案件」すなわち「面白そうな事件」を選定し、調査することになります。(『科警研のホームズ (2) 毒殺のシンフォニア』)

一、二巻はこんな感じで進みます。
私が最初に読んだ三巻は、場所が大学に変ります。
なんでこうなったかというと、分室には専用の実験機器がなくて不便なので、実験機器のある大学の講座にしようとなったそうです。
今度は丸投げできないなと思ったのですが、講座の責任者は土屋ですが、北上が大学の派遣研究員になっていて、学生の指導は北上がするようです。
北上は講座の正式なスタッフじゃなく、研究室の運営には関わっていないのに、土屋がしないから学生の指導をするのです。
詳しい事情が書いてありませんが、たぶん土屋を諦めきれない出雲が北上に土屋の代わりにやるように圧力をかけたのでしょうね。

『科学警察研究講座』のメンバーは四年生二名、派遣研究員一名です。
四年生のメンバーは東啓大理学部化学科の松山悠汰と分子生物学科の藤生星良です。
松山は父親が科学捜査を題材にした海外ドラマのファンで、中学校の頃から科捜研系のドラマを見ていたので、科学捜査に関するテーマを扱う研究室というのに興味を持ち、この研究室に入ろうと思いました。
そんな簡単な理由でいいのかと思いますが、結構彼、向いているようです。
藤生星良は将来科捜研に就職するつもりだと言っていますが、隠れた理由がありました。(『科警研のホームズ (3) 絞殺のサイコロジー』)

短編なので、読みやすかったのですが、物足りなく感じました。
土屋がオブザーバー的立ち位置だからかもしれません。
三巻目で唐突に大学生が主人公になり、どうなっているのという感じですし、なんで北上が研究員になったのか、気になってしょうがありません。
四巻目もあるとしたら松山と藤生は大学院生になっているでしょうね。
そろそろ土屋が動いてくれないかしら。