道尾秀介 『龍神の雨』2021/07/29

「神」シリーズの一作目。
三作目の『雷神』が面白かったので読んでみました。
これはあまり私の好みではなかったです。


添木田蓮と楓の兄妹は母を交通事故で失い、継父の睦男と暮らしています。
母が亡くなってから、睦男は酒の量が増え、言葉が荒くなり、蓮や楓に暴力を振るい、しばらく経つと自室に引き籠もるようになりました。会社も辞めてしまったようです。
蓮は大学進学を諦め、高校卒業後アパートから近い酒屋『レッド・タン』で働き始めます。しかしこのままで行くと、楓がこれから高校に行き、卒業する前に、貯金はなくなってしまいます。
今後のことが心配で、連は睦男と今後のことを何度か話そうとしますが、無駄でした。誰かに相談しなければ、児童相談所へ行ってみるべきかなどと考えている時に、睦男が楓に性的関心を抱いていることがわかります。
睦男をころしてやりたいと蓮は思います。

溝田辰也と圭介の兄弟は、二年前海水浴に行った日に心臓が悪かった母を、その後再婚した父も亡くしました。
再婚相手はかつて父のデザイン事務所に勤めており、事務所を辞めてから実家のボートハウスで働いていた理江でした。そのため辰也は理江が母を殺したのだと思い込んでいました。
一方圭介は自分の不用意な言葉が母を殺したと思っていました。

大雨の日、楓が友だちの家でテスト勉強してくるというので、蓮はある計画を実行することにします。湯沸器をつけっぱなしで放置しておき、不完全燃焼で一酸化炭素が室内に充満し、あの男が死ぬというものです。
店長の半沢がオーナーをしている居酒屋・舞の屋から電話が来て、トラブルが発生したからと出かけていったので、アパートのことが心配になった辰也は電話をかけます。
そこに辰也と圭介の兄弟がやってきて万引きをし、蓮に見つかります。
注意だけで帰そうとしたのに辰也が理江に電話をするように言い出します。

アパートの電話に出たのは楓でした。大雨なので、早く家に帰って来たというのです。
仕事の後アパートに帰ると、楓の歩き方が少し変な上、右の肘が赤く擦り剥けていました。
どうしたかと聞く蓮に楓が語ったことは…。

理江と共にアパートに帰った辰也は急にレッド・タンに行き、謝りたいと言い出します。理江に断り、圭介は兄と一緒に店にいきますが、店は閉まっていました。
辰也は店員のアパートに行くと言います。
仕方なくアパートの近くまで行くと、店員とその妹らしい男女二人が何かを運んでいるのが見えます…。

思い込みが悲劇をもたらし、一つの嘘が次々と誤解を生んでいくのが悲しいと思いました。
子どもは何も悪くはないけれど、運命が残酷過ぎですね。
夫は「可哀想な子ども」が出てきた途端に読むのを止めたそうです。
最後はすっきりとはしませんが、これで良かったのかな…。

そういえば龍神は何か話と関係があったのかしら?