マイクル・コナリー 『燃える部屋』2021/10/17

ハリー・ボッシュ・シリーズを読んでみました。
ブラック・ボックス』まで読んでいるようなので、『燃える部屋』以降の6冊を順番に読んでいく予定です。
ボッシュは1950年生まれ。
ドラマでは40代後半ぐらいのボッシュですが『燃える部屋』では64歳になっています。


ヒエロニムス(ハリー)・ボッシュはロス市警未解決事件班で働いています。
定年延長選択制度契約の終了期限が迫っており、市警に勤める最後の年です。

ロサンジェルスの犯罪発生率が大幅に下がったため、市警は未解決事件を重視し、未解決事件班の規模を三倍近く拡大しました。そのため未解決事件班に大勢のベテラン刑事が異動してきた上に捜査経験のほとんどない若手刑事も配属されました。

ボッシュのパートナーは28歳、市警に入ってから5年目のメキシコ系女性刑事ルシア・ソト。マイノリティであると共に武装強盗との銃撃戦での英雄的な行為で有名になったため、ヒラ警官から一足飛びに刑事に昇進し未解決事件班に配属され、最年長のボッシュと最年少のソトがペアを組まされました。

ボッシュとソトが追うのは十年前の事件です。
マリアッチ広場で、マリアッチ・バンドの一員としてビウエラを演奏していたオルランド・メルセドがどこからか飛んできた銃弾で撃たれたのです。
メルセドは下半身不随になりましたが、事件の三ヶ月前に市議会議員アルマンド・ザイアスの結婚式で演奏していたことから、市長選に出馬したザイアスにイースト・ロサンジェルス地域がぞんざいに扱われているシンボルとして利用され、ザイアスが市長になってからもずっと車椅子に座り、ザイアスのかたわらにいたのです。
そのメルセドが亡くなり、検屍の結果、彼の死が十年前の銃撃に起因するものだったため、殺人事件として扱われることになります。
体内から取り出された銃弾が事件解決の手がかりとなるのか…。

そんなある日、ボッシュはソトが自分たちの割り当てではない殺人事件の記録をコピーしていることに気づきます。
一体何のために?ソトは二重スパイなのか?
ボッシュはソトを問いただします。
彼女がコピーをしていたのは1993年に起ったボニー・ブレイ共同住宅火災事件の記録でした。被害者たちは低所得者向け共同住宅の地下にあった無認可託児所にいて、炎と煙に巻き込まれ、煙を吸って亡くなっており、火事は放火と断定されましたが、逮捕者はいませんでした。
ソトは火事の時にその地下室にいて、亡くなったのはみな彼女の友だちでした。
彼女は自分でこの事件を解決しようとしていたのです。
ボッシュは彼女に手を貸すことにし、この事件を正式に自分たちの担当に移管できるように画策します。

始めはボッシュはソトの刑事としての能力に疑問を抱いていました。
しかし一緒に行動していくうちに、彼女に信頼を寄せるようになっていきます。
ソトもボッシュと同様に彼を信頼し、二人で二つの事件を解決していきますが…。

定年延長制度で現役に復帰したボッシュの首を切ろうと虎視眈々と狙っている輩がいました。
経験豊富な人材を切り、予算的に安く使える若者を雇用しようと思うのは仕方ないことでしょうか。

ボッシュ・シリーズの初期の頃のベトナム戦争のトラウマで苦しむ、孤独なアウトロー的なボッシュが懐かしいです。この頃の彼は優秀なベテランおじさん刑事になってしまったみたい。
だからといって面白くない訳ではないのですが、まだボッシュ・シリーズを読んでいない方は是非最初から読んでくださいね。