川瀬七緖 『ヴィンテージガール 仕立屋探偵桐ヶ谷京介』2021/10/24

図書館に2月に予約していたら、今頃になってしまった本です。
なんで仕立屋かと思って川瀬さんのプロフィールを見てみると、びっくり。
文化服装学院服装科・デザイン専攻卒で服飾デザイン会社に就職し、子供服のデザイナーをやっていたそうです。


2年前から高円寺の元テーラーの家に住んでいる34歳の桐ヶ谷京介は美術解剖学を専攻した、世界的デザイナーから指名されるほど腕の立つ職人で、洋服の設計図を引きます。
四年ほど世界各国を放浪した時に得た繋がりを使い、日本の仕事がなくなった職人とブランドとの橋渡しをするファッションブローカーでもあります。
人を見ると筋肉や骨が透けて見え、服のシワや姿勢などからその人の体の状態がわかります。
商店街にある理髪店の磯山の妻の病気に気づき教えたため、早期治療ができたと感謝され、磯山はよく近所の惣菜屋から惣菜を買って届けてくれます。
他の商店街の住民は桐ヶ谷のことを胡散臭そうに見ています。

ある日、偶然に見たテレビの公開捜査番組に出ていた、10年前に殺された少女が着ていたというワンピースが気になりました。
古めかしいデザインで、奇妙な柄、体の構造を熟知している者がパターンを引き、腕の立つ職人が縫ったようです。
少女は阿佐ヶ谷の団地の一室で遺体で発見されており、未だに犯人も身元もわかっていません。
少女の似顔絵を見て涙を流す桐ヶ谷。よく泣くのよね、この人、笑。

桐ヶ谷は幾度となく虐待の傷痕が現る衣服を着た子どもに出くわしていました。
通報もしたのですが相手にされず、その後その子が死亡したというニュースを見ることもありました。
事実を知りながら死なせてしまったと思うと、そういう自分に腹が立ち、嫌悪感がつのり、やりきれなくなります。
桐ヶ谷はこのワンピースを深く調べれていけば少女の身元がわかると思います。

商店街から少し外れた路地裏にあるヴィンテージショップの店員で古着に詳しい水森小春にワンピースを見てもらうことにします。
小春は独自の世界観を持つ、人目を引く容姿の愛想のないゲーマーの女で、話すと印象が変ります。
彼女にタブレットに保存したワンピースを見てもらうと、柄は「アトミック」というものだということがわかります。
1940年代アメリカが南太平洋沖で行った公開核実験に刺激を受け、アートの世界では爆発とか汚染をイメージした抽象的な絵柄が次々と生み出され、50年代に流行ったようです。(本の表紙が「アトミック」柄です)
桐ヶ谷と小春は一緒にワンピースのことを調べていくことにします。

桐ヶ谷は警察が公開した写真や情報から少女の姿を描き、肉付けしていきます。
実物を見た方がより詳しく少女のことがわかるのではと思い、情報提供窓口に電話をしますが、全く相手にされません。
磯山の妹の再婚相手が杉並署の元幹部だということを思いだし、彼にお願いして警察とコンタクトを取ってもらうことを思いつきます。
連絡が来て杉並署に行くと、長く待たされ、やってきたのが50代小太りの南雲と30代の畑山という刑事でした。
桐ヶ谷は警察と協力しながら、と言っても警察はなかなか情報をくれませんが、ワンピースのデザインや仕立て方、使われている布、釦、糸などを様々なツテを使い調べていき、少女の身元を探っていきます。

美術解剖学ですか。色々と私の知らない学問が出てきて、面白いです。
既製服しか着たことがないのでわかりませんが、オーダーメイドで服を作ったら、さぞ着やすいでしょうね。既製服は体に合わなくても着ちゃいますから。
一着の服から色々なことがわかっていくというところが新しい着眼点ですね。
川瀬さんの法医昆虫学シリーズが好きですが、今度の仕立屋探偵もシリーズ化決定らしいので、次作も楽しみです。