夏川草介 『臨床の砦』2021/11/13



この本はコロナ診療の最前線に立つ医療関係者の闘いを描いた作品です。
フィクションという形を取っていますが、夏川さんは長野県の現役の感染症指定医療機関に勤めている医師ですから、リアルな医療現場の様子が描かれています。

北アルプスのふもとにある小さな総合病院、信濃山病院は感染症指定病院として、専門の呼吸器内科医はいませんが、専門外の内科医と外科医が集まった混成チームで、一年近くコロナ診療を続けています。重症患者は筑摩野中央医療センターに受け入れてもらっています。
初めは正体不明だった感染症に向き合い、命がけのぎりぎりの状態でなんとか持ちこたえていましたが、年末から様相が大きく変わり始めます。

「圧倒的な情報不足、系統立った作戦の欠如、戦力の逐次投入に、果てのない消耗戦」
「かつてない敵の大部隊が目の前まで迫っているのに、抜本的な戦略改変もせず、孤立した最前線はすでに潰走寸前であるのに、中央は実行力のないスローガンを叫ぶばかりで具体案は何もだせない」

「感染症のスタッフは明らかに疲弊していますよ。誰が誰だかわからないまま通り過ぎていく患者、大量の高齢者の介助、想定外のコロナ患者の看取り、そして必死にがんばっても終わりの見えない果てしない業務…」

「周辺の感染症専門病院やその他の大規模専門病院からはことごとく患者の受け入れを拒絶され」、「憶測に基づく苛烈な風評被害にさらされ、他院からの医師派遣も中止され、病院の職員というだけで接触が拒まれた…」

「コロナ診療における最大の敵は、もはやウイルスではないのかもしれません。敢えて厳しい言い方をすれば、行政や周辺医療機関の、無知と無関心でしょう…」

不思議なことに第5波は医療崩壊を叫ばれながらも、終息しつつあります。
第6波は来るとは言われていますが、備えはできているのでしょうか。
今回なんとかなったから、次も大丈夫などと楽観的になっていなければ良いのですが…。(信用できないよね)

一人でも多くの方がこの本を読んで、コロナと闘っている医療現場への理解を深めてもらいたいです。


この頃、楽しみにしているのがコンビニスイーツ。
こんな可愛いのを見つけました。


ファミマのすみっコぐらし和菓子。