畠中恵 『御坊日々』2021/12/09



時は明治20年。
江戸から明治に変わり、まだ時代についていけていない人々の様子がうかがえます。

東京浅草にある東春寺には住職兼相場師の冬伯と弟子の玄泉がいますが、檀家は誰もいません。
江戸から明治となり廃仏毀釈の嵐が吹き荒れていた頃、東春寺は先代の住職を失い、一旦廃寺となりました。
しかし相場師となった冬伯が相場で金を稼いで寺を買い戻し、建て直したのです。

そんな東春寺に料理屋八仙花のおかみ、咲がやってきます。
経営不振になった店をモダンにしたのですが、モダンな新しさも十年ももたず、店の経営は再び危なくなってきました。
そのため店の建て替え費用を稼ぐために、亭主が洋銀相場に手を出しましたが、しくじり、ちょうどその頃に、店に幽霊が出たというのです。
もはや八仙花は自分の力でどうにもできないので、代わりに冬伯に店を救って欲しいと言うのです。
なんともまあ、ずうずうしいお願いですが、浅草や上野の寺町の事情話と引き換えに、冬伯は知恵を使いおかみの悩みを解決することにします。

1つ相談事を解決すると、次々と別の相談事やら難事がやってきます。
息子探しから始まり寺のお宝、徳川の埋蔵金、幕府の積み立て金などと話は段々と大きくなっていきます。
冬伯はそれらを解決しながら、長年疑問に思っていた先代住職の死の真相を追っていきます。

お坊さんが主人公で、何やら新しいシリーズが開幕かと期待して読みましたが、それほど目新しくなくて、残念。
どのシリーズも主人公が巷の謎を解いていくというものですねぇ。
あまり冬伯に魅力が感じられず、それなら新しいシリーズを出さなくても、今までのシリーズの続きを書いてくれた方がいいと思いました。