知野みさき 『飛燕の簪』&『妻紅』2022/08/01

知野さんの女職人を描いた「神田職人えにし譚」シリーズです。


咲は縫箔師。刺繍と金銀の箔を糊で貼る摺箔を併せて裂地に模様を施す職人です。
父親は蒔絵師でしたが、七歳の時に疫病で亡くなり、その後母親は着物の仕立てを内職にしていました。
十歳の時に咲は縫箔師・弥四郎のもとへ奉公に出され、母親譲りの縫い物の腕が弥四郎の目に留まり、三年後に女弟子となり、その翌年に母親は風邪をこじらせて亡くなります。
既に十歳になっていた弟の太一は塗物師へ弟子入りし、七歳だった妹の雪は咲が引き取り、十歳で旅籠に奉公に出しました。
弥四郎には子どもがおらず、養子にしていた一番弟子の圭吾と咲を結婚させようとしましたが、圭吾が咲に「妻」であることを、咲は縫箔を続けることを望んだため、破談になりました。
通いで三年弥四郎のもとで過ごした後、圭吾が妻帯するのと前後して、咲は独り立ちしました。

咲は美弥が主である枡田屋に品物を置かせて貰っています。
店には美弥のお眼鏡に適った物しか置いてありません。
枡田屋に品物を置かせて貰ってから、咲は縫箔の仕事に専念でき、凝った物を作れるようになりました。

ある日、枡田屋の帰りに入った小物屋で、簪が目に入ります。
それは銀の平打ちに飛燕の意匠の簪で、珍しく燕の後ろに木蓮が彫ってあります。
近頃評判の修次の作だと言いますが、値段が高かったため、買いませんでした。
しかしその簪が気になり、翌日にもう一度見に行きます。
見せて貰うと、簪が値下げされて、昨日の半額だといいます。
いただきますと言おうとすると、男にその簪を奪われます。
なんとその男は簪を作った修次でした。
彼は簪は出来損ないで、銘は偽物だと言います。
咲と修次が話している最中に、簪を双子の子どもがかっさらっていきます。
子どもたちを追う、修次と咲。
小伝馬町の稲荷神社まで追いかけて行くと、一人の男児がいて、盗まれた簪を持っていました。
彼は吉原に奉公へ行く姉に餞別をやりたいと神様にお願いしたら、くれたと言うのです。
話を聞いた修次は二日後に簪を直して、渡すと言いますが…。

この時から咲と修次は同じ職人として互いに認め合う関係になります。
簪を盗んだ双子はしろとましろと言い、咲と修次は秘かに彼らが稲荷神社の狐神ではないかと思っています。

第一話では咲は童子と木蓮の袱紗と白萩の櫛入れを心を込めて作ります。
第二話では長く離れ離れになっていた姉妹が、梅の背守りがきっかけとなり再会します。
そして第三話では妹の雪と大工の小太郎との恋を、咲が作った財布が仲立ちします。
咲は自分が作った品物から繋がる縁を大事にし、人と人の心を結んでいきます。


<第一話:守り袋>
蕎麦屋・柳川に蕎麦を食べに行ったところ、店の前で入るのを躊躇している女を見て、咲は声をかけます。
ちょうどその時、しろとましろがやって来ます。彼らは女が隠し持っているものに興味を持ち、見せるように言います。
それは色あせた古い守り袋でした。

別の日に咲が柳川に行こうと思って歩いていると、しろとましろを連れた修次が声をかけてきます。一緒に柳川に行くと、男が一人、店に怒鳴り込んで来ました。
彼は店主の清蔵の娘・おゆうを捜しているようです。
しろとましろがその人が守り袋を持っているかどうか男に聞きます。
咲が叱ったが後の祭り…。

<第二話:二羽の雀>
咲が作った竹に雀の財布を枡田屋の店主・美弥は気に入ったようです。
しばらくして、枡田屋の手代の志郎が咲の長屋にやってきて、竹に雀の財布をもう一つ注文します。財布は志郎が美弥への贈り物にしようと思って隠しておいたのに、いない間に売れてしまったそうです。
引き受ける咲ですが、美弥と志郎が想い合っていることを察している咲は、思い切って志郎の気持ちを聞きますが…。

その後、咲は美弥の元姑のお寿に偶然出会い、彼女が友人に頼み、あの財布を買いに行ってもらったことがわかります。お寿も彼らの気持ちを知っているようで、協力して欲しいと頼まれます。
世話焼き咲の本領発揮です。

<第三話:妻紅>
枡田屋に行くと、護身刀を入れる袋を頼まれます。
ちょうど修次も来ていて、刀身を見た修次は断るように勧めます。
修次の様子から何か曰くがありそうだと思う咲と美弥。
注文主はお篠と言い、昨日修次の長屋にいた女だということがわかります。
咲は品川宿まで篠に会いに行きます。

修次の過去がいよいよ明らかに…。

「妻紅」とは鳳仙花のことです。
爪を花で赤く染めたところから「爪紅」とか、小骨が喉に刺さった時に、この花の種を飲めば骨が柔らかくなって取れることから「骨抜き」とも言うようです。

咲と修次に馴染んできたしろとましろが本当に可愛らしいです。
修次と咲の仲はなかなか進みません。咲は本当に身持ちがいい女ですね。
昔も今も女が職を持つということは大変なことなのがわかります。
上絵師シリーズと共に楽しみなシリーズになりました。

<今週のおやつ>


なかなか痩せないといいつつ、買ってしまった台湾のお菓子とつまみです。
マンゴーケーキよりも定番のパイナップルケーキの方が美味しいです。
グリンピースが意外と美味しかったです。

読んだ本2022/08/02

大分前に読んで、そのままになっていた文庫本をまとめて紹介します。


早見和真 『イノセントデイズ』
初めて読む著者かと思ったら、『店長がバカすぎて』を読んでいました。
全く違う作風の本で、驚きました。

死刑囚、田中幸乃。
彼女は元恋人の妻と1歳になる双子の娘の三人を、家に火をつけ焼き殺した。
彼女は報道されているような悪女だったのか?
彼女の人生に関わった人たち、産科医、義姉、同級生、元彼の友人等、が彼女について語っていく。
そして明らかになる彼女の過去の真実とは…。

読んでいて、なんとも言えない感じがつきまとう本です。
どの登場人物も不快で、共感出来ないし、主人公の幸乃の気持ちにも寄り添えませんでした。
「私を必要としてくれる人がいるんだとしたら、その人に見捨てられるのが死ぬより怖い」
だからと言って…。
ネタバレになるので書きませんが、気になる人は読んでみて下さい。

知念美希人 『祈りのカルテ』
新米医師・諏訪野良太は二年間の初期臨床研修で色々な科を回り、最終的にどの科を専門にするかを決める時期になっていた。
精神科や外科、皮膚科、小児科、循環器内科で5人の患者と向きあい、それぞれの患者の問題を探り、解決していくうちに、最後に彼が決めたのは…。

諏訪野のような医師が増えてくれるといいなぁと思いながら読んでいました。

原田ひ香 『復讐屋成海慶介の事件簿』
大東商事の元社長秘書の神戸美奈代は、自分を捨てた男への復讐を頼みに復讐屋『成海事務所』にやって来て、ひょんなことから押しかけ秘書になります。
復讐屋、成海のモットーは、「復讐するは我にあり」。
話は聞くが、何もやらないといういい加減さ。
それなのに上手くいくのは何故なのか

人を恨むより、幸せになって見返す方がいい。
そういう結論です、笑。

椹野道流 『最後の晩ごはん ゲン担ぎと鯛そうめん』
定食屋「ばんめし屋」が「芦屋さくらまつり」でランチ営業をしてみると、なかなか晩に来られない客たちから好評でした。
これからもやろうという話になりますが、晩飯にこだわりのある夏神は微妙。
そんなある晩、夏神の亡くなった彼女が霊になって現れます。
一方、海里は後輩・李英との朗読舞台のために練習に励んでいましたが、李英の調子がまた悪くなり、海里は一人でやることになってしまいます。

夏神がすっきりしたところで、次は海里ですね。さらなる飛躍ができるのか。

柊サナカ 『お銀ちゃん明治舶来たべもの帖』
明治時代に女子が写真を学ぶ学校として設立した「女子写真伝習所」に通う銀・基美・シズ。
この三人組の中でお銀は一番の食いしん坊で、新しい食べ物が出たと知ると、食べたくて食べたくて我慢ならなくなります。
例えばバナナ。今では安い、どこでも買える果物ですが、明治時代には舶来品のお高い果物だったので、三人のお小遣いでは到底買えません。
そこで三人は「写真よろづ相談所」を開設し、お金を稼ごうと考えました。
しかし勝手に開設したのが学校にバレてしまいます。
勉強になるということで「写真よろづ相談所」は続けることができました。
ただし金銭の授受は禁止です。
ガッカリする三人組ですが、捨てる神あれば拾う神あり。
写真に関する悩み事が解決した暁に、お礼として依頼主がご馳走してくれたのです。よかったね、お銀ちゃん。

新宿高野のバナナ以外に出てくるのは、資生堂薬局のソーダファウンテンという甘味処のソーダ水とか、凮月堂のシュークリイム、神保町のミルクホールのミルクセーキです。明治時代からあったのですね。
当時の写真技術のことも知ることのできるお話です。

篠綾子 『猫戯らし 小烏神社奇譚』
本草学者の泰山が小烏神社にやって来る。
木天蓼(マタタビ)を天日干ししようと思うが、家に猫がいるので神社の縁側を借りたいというのだ。
そこに寛永寺から田辺がやって来て、天海大僧正が竜晴を呼んでいるという。
行ってみると、伊勢も来ていて、彼が預かった案件があるという。
それは南泉一文字と呼ばれる名刀のことだった。

今回は猫にまつわる不思議な話です。
南泉一文字の付喪神で、生まれたての子猫のおいちが可愛いです。

風野真知雄 『わるじい慈剣帖 九 ねむれない』
わるじいこと愛坂桃太郎は、江戸のやくざの抗争のせいで、孫の桃子と遊べません。そのせいか夜の寝付きが悪くなっています。
読んでいる私も桃子ちゃんが出てこなくて淋しいわ。
今回は4つの謎に桃太郎は挑み、いつものように鮮やかに解いていきます。
最後に嬉しいことが。わるじい、良かったわね。

筑前助広 『谷中の用心棒 荻尾大楽ー阿芙蓉抜け荷始末』
萩尾大楽は谷中で町道場をしているが、その実は用心棒稼業を営んでいる。
ある日、捨てた故郷の斯摩藩の江戸家老から呼び出される。
家督を譲った弟の主計が脱藩して、江戸に向かっている。彼が助けを求めても断り、渡された物を届けて欲しいと言う。
不審に思った大楽は斯摩藩の裏の事情を探ることにする。
ちょうどその頃、江戸では阿芙蓉が出回るようになっていた。
斯摩藩では何が起っているのか。
弟は何を持って脱藩したのか。そして彼の行方は。
大楽はいつしか強大な敵に立ち向かっていくこととなる。

男性の好きそうな時代小説です。
時代小説版ハードボイルドです。

どの本も面白いので、お暇な時に手に取って読んでみてください。

似鳥鶏 『夏休みの空欄探し』2022/08/04

似鳥さんの作品では楓ヶ丘動物園シリーズが好きなのですが、この本はキラッキラの青春恋愛ミステリーでした。


高校二年生の成田頼伸ことライはクラスには友だちが一人しかいない、目立たない、地味~な男子。会員が2名しかいないクイズ研究会会長で、役に立たない知識をしいれるのが好き。
クラスに成田という人気者の男子がいるため、「じゃない方」とか言われている。

ある日、ライはいつも本屋の帰りに利用しているモスバーガーで、隣に座っている美人姉妹たちの話を聞いてしまう。
彼女たちは暗号解読をしているようで、暗号というものが好きなライはついつい覗き見してしまう。するとすぐに解けてしまった。
答えを教えたいけど、話しかけると不審者と思われそうだし…と悩むライ。
彼女たちがシェイクを買いに行った隙に、答えを置いてモスバーガーを出るが、追いかけて来た彼女たちに捕まってしまう。
たまたま偶然に道で出会ったクラスの人気者の成田清春(キヨ)も仲間となり、四人は一緒に暗号解読の旅へと出かけることになる。

出てくる暗号は私には難しくて、全くひとつも解けませんでした(恥)。
ライがあまりにもふがいなく、卑屈で、そこがあまり好きにはなれなく、清春も、あんな感じが今の学校で人気者なのかと思いましたが、途中から彼らも変わっていき、気にならなくなりました。
姉妹の、特に妹の秘密がなくても、青春小説として面白かったのではないでしょうか。それに最後が唐突で、続きを探してしまいました。
まあ、お涙頂戴にはならなくて、これでよかったのかも。

只今青春真っ只中の、暗号解読が好きでなくても大丈夫ですから、YAの皆さん、読んでみてね。お勧めです。

似鳥さん、楓ヶ丘動物園シリーズ待ってます。

<今日のおやつ>
まだ秋ではないけど、栗のおやつを頼んでみました。


モンブラン。栗が粗く刻んであるらしく、食べると小さな塊を感じます。

「コーダ あいのうた」を観る2022/08/05



「Coda」とは「Child of Deaf Adults」の略語で、「耳がきこえない、きこえにくい親を持つ、耳が聞こえる子」のことです。
この映画は2014年のフランス映画「エール!」のリメイクで、今年の三月にアカデミー賞の作品賞を取っています。

ルビー・ロッシの両親フランクとジャッキーと兄のレオは耳が聞こえなく、彼女だけが聞こえます。
毎朝三時に起き、船に乗り、漁に出ているため、学校に服を着替えずに行ったり、疲れて授業で寝てしまったりしてしまいがちです。
そのためか学校では浮いています。

ルビーは新学期に片思いのマイルズが合唱クラブに入るのを知り、自分も入ることにします。
最初の日、ベルナルド(V)先生に音域を決めるから「ハッピーバースデー」を歌うように言われ、ルビーは自分の番が来た時に思わず逃げ出してしまいます。
後からV先生に会いにいき、入学した頃話し方がおかしいと笑われたことを話します。
V先生はルビーがコーダであることを知っており、ルビーに大事なのは声で何を伝えられるかだということを教えます。

V先生の指導でルビーはだんだんと人前で声が出るようになり、秋のコンサートではマイルズとデュエットで「You're All I Need To Get By」を歌うことになります。
その上マイルズと同じようにバークリー音楽大学に進学するように勧められ、特別レッスンを受けることになります。

ルビーとマイルズは一緒に歌の練習をするうちに、衝突することもありましたが、いつしか心を通わせるようになります。

漁港では魚の値が下がり、困ったロッシ家は自分たちで魚を売りさばくために漁師共同組合を立ち上げます。
他の漁師たちも参加し、仕事が忙しくなり、ルビーの負担が増え、V先生のレッスンに遅れていくようになり、やる気がないのかと注意されます。
次のレッスンの日、母に取材があり、急に通訳をすることになり、また遅れてしまいます。
その後、急いでV先生の家に行きますが、ドアは閉まったまま。

ルビーはとうとう両親にバークリー音楽大学に進学したいと話します。
しかし母に事業を始めたばかりで、あなたがいないとやっていけないと反対されます。

次の日、ルビーは漁をサボり、マイルズと一緒に湖に行きます。
その日は監視員が船に乗り込む日で、無線に気づかない父と兄に不安を感じた監視員が沿岸警備隊を呼んでしまいます。
沿岸警部隊の停止命令を聞かなかったため、ロッシ家は免許停止になり、反則金を払わせられ、船に聴者の乗業員がいないと漁に出られなくなります。
兄はルビーのことを思い、聴者の乗業員を手配しようと言いかけますが、父と母に遮られます。
父も母もその役目はルビーがやるべきだと言います。
反発するルビーでしたが、結局進学を諦めることにします。
兄はルビーに家族の犠牲になるなと怒ります。

コンサート当日、ロッシ家のみんなも会場に行きます。
聞こえなくても、観客を見て、コンサートの様子を感じようとします。
マイルズとルビーのデュットの時には熱心に聞き入っている人や泣いている人もいます。
歌の後に観客たちは立ち上がり、熱狂的に拍手をしました。
それだけ彼らの歌が素晴らしかったのです。

家に着いた時、父のフランクがルビーに歌うように頼みます。
彼はルビーの喉に手をあて、娘の歌を聴こうとします。

次の日はバークリー音楽大学の受験の日です。
はたしてルビーは受験するのでしょうか。

「エール!」では畜産をやってきたのですが、「コーダ」では漁業。
どう考えても耳が聞こえなくては危険でしょう。
ルビーがいなくなってからが描かれていませんが、ロッシ家はどうしたのでしょうね。ちょっと心配です。

「エール!」を観ていたので、感動とまではいきませんでした。
「エール!」は私には衝撃的でした。
何と言っても歌にマルキ・ド・サドが出てくるんですから、笑。
初めに「コーダ」を観てから「エール!」を観ることをお勧めします。


<今日のわんこ>


暑くなりすぎたので、お年の犬たちは家で遊びます。
散歩に行っても短時間で戻ります。

兄の膝のためにサプリのアンチノールを餌に混ぜて食べさせていたのですが、兄は魚臭さが嫌なのか、ちゅーるに混ぜても気づいて食べなくなりました。
そのままで餌に入れておいたら、カプセルを噛んでしまったのか、えずいていました。
犬には一粒百円と言ってもわかりませんからねぇwww。

「ブリット=マリーの幸せなひとりだち」を観る2022/08/07

2019年のスウェーデン映画。
私は題名で映画を観るのを決める傾向があるので、失敗する確率が高いです。
でもこの映画は題名から想像していたのと違うところがあったけど、面白かったです。


63歳のブリット=マリーはケントと結婚してから40年間、家を完璧に整え、夕食を作ってきた。ケントは出張が多く、家にいることが少ない。帰ってきても黙々と食事を食べ、すぐにサッカーの試合を観るためにテレビの前に座る。

ある日、ブリット=マリーがスーパーで買い物をしていると、ケントが心臓発作を起こしたという連絡が来る。
急いで病院に行くと、女がいた。
ブリット=マリーは家を出ることにする。

職安に行くと、60歳以上の人への求人は男女を問わずないと言われる。
ブリット=マリーは結婚する前にウエイトレスをしていただけなので、尚更だ。
唯一あった求人はボリという村のユースセンターの職だけ。
ユースサッカーのコーチ業を兼任するという条件がついていた。
ブリット=マリーはボリに行くことにする。

ボリの町は人けがなく、ユースセンターは荒れ放題。
「一日ずつよ、ブリット=マリー。一日ずつよ」と自分を元気づけ、ブリット=マリーはユースセンターの掃除を始める。

翌朝、ガラスが割れる音に起こされる。
ユースサッカーの子どもたちが来て、サッカーをしていたのだ。
ブリット=マリーはガラスを片付けたらボールを返すと言って、ボールを抱えてスーパーに行く。
スーパーの店主にユースセンターで働くと言うと、ウソだろと返される。
とりあえずガラスを入れて貰うことにする。
買い物をしてユースセンターに戻ると、子どもたちはサッカーをしている。
ボールは他にもあったのだ。
センターの中にサミという青年がいて、ガラスはすぐには手に入らないと言ったのに、代金を現金で払わせられる。
彼には妹のヴェガと弟のオマルがいて、二人ともサッカーをしていて、ユースワーカーに応募したけど落ちたそうだ。

一生懸命ユースセンターの掃除をするが、そのかいもなく、きれいにした後をこどもたちが汚す。
頭に来たブリット=マリーは罰として彼らに片付けと窓拭きをさせる。
なかなか落書きが消えない。
ヴェガがブリット=マリーに言う。
「落書きは破壊行為。サインは存在の証明」
試合では「得点できなくて、勝てなくても、チームの存在を示したい」。

ある朝、警察官のスヴェンがブリット=マリーを歓迎するために、手作りのジャムを持ってやって来る。
ユースセンターで暮らすのも大変だろうから、部屋を紹介してくれるというのに、ブリット=マリーは断る。
しかし夜中にネズミが出て、スヴェンの好意にすがることにする。

スヴェンの紹介してくれたのは元プロサッカー選手で半盲の女性バンクの家の部屋だった。彼女の父親がブリット=マリーの前任者だった。
部屋を借りることにし、部屋に入るとすぐに泣き出すブリット=マリー。
彼女が思い出すのは死んだ姉のイングリットのことだった。
イングリットはパリに行きたいと言っていた。

ブリット=マリーは彼女なりにサッカーの練習を始める。

ヴェガにコーチの夢はと聞かれ、言えないブリット=マリー。
「行きたいところはパリかな」と答えると、「コーチのパリが私のサッカーよ」と言うヴェガ。

町の委員会のレクレーション担当だというマックスの父親が来て、ブリット=マリーにコーチの経験があるか、ライセンスを持っているかと聞いてくる。
ないなら、すぐにユースセンターを閉鎖すると告げられる。

洗濯をしていると、スヴェンが食事に誘いに来る。
彼は妻の浮気で、二年前に離婚していた。
踊る二人。
楽しい時間を過ごし、スヴェンにユースセンターまで送ってもらうと、夫のケントが待っていた。
彼はブリット=マリーに謝り、たった一度のあやまちだった、女とは別れたから帰って来てくれと言う。

その夜、バンクにサッカーのコーチをやってくれるように頼むが、断られる。
「サッカーはオヤジと一緒に死んだ。自分のことを考えろ」と言うバンク。

スーパーに行き、ポートワインを出してもらい、飲んでいると、サミがユニフォームを持ってくる。
彼もサッカーをやっていたが、今は妹と弟の面倒をみるのが先で、サッカーは二の次だと言う。
ブリット=マリーが酒を飲んでいるのに気づき、咎める。
ブリット=マリーは「私は63歳の行くところもないおばさん。子どもに馬鹿にされ、サッカーも知らない。だからいいでしょ」と開き直る。

サッカーの練習は続く。

バンクにコーチは上手くいっているかと聞かれ、ブリット=マリーは答える。
「あなたが言っていたように私は役立たずよ」。

なかなか上手くならず、やる気をなくす子どもたち。
そこにバンクとスヴェン、サミたちがやってきて、練習相手になってくれる。
練習後、サッカーの試合をテレビで観ている子どもたち。
他の仕事をしているブリット=マリーのところにスヴェンがやって来て、「あなたは素敵です」と告げる。

試合前日。
マックスの父親がやって来て、ライセンスがないと試合には出られないことを子どもたちに言っていないことを責められる。
試合に出られないことを知った子どもたちは怒り、ブリット=マリーを責め立てる。

家に戻るとヴェガが待っていた。
彼女の母親は去年交通事故で死に、父は家を出ていき、サミが面倒をみてくれているそうだ。
ブリット=マリーが10歳の時に姉が死んでから、「割れた破片を片付けないで、人生を片付けてしまった」と言うと、ヴェガはブリット=マリーに「なんでもそう言って諦めるの。私は戦い続ける。私にはサッカーしかない。明日、チームの存在を証明する。だからあなたも戦って」と言って去って行く。

次の日の朝、朝食を食べていると、バンクがライセンスを探し出したと言って、ライセンスを見せる。

試合会場で、ブリット=マリーは子どもたちにこう叫ぶ。
「存在を見せつけて!」

試合は子どもたちの満足する結果となった。
ブリット=マリーは試合に感動したと言うマックスの父親に、ブリにまともなサッカー場を作り、ユースセンターを再開するようにお願いする。

試合後のパーティの最中に、ケントがブリット=マリーを迎えに来る。
ブリット=マリーは車に乗り、ケントに今までの不満をぶつける。
彼女は夫に気づいて欲しかった。
姉が死んで、抜け殻のようになった母から気づいて欲しかったように…。

ブリット=マリーは最優秀ファイターになる。
「チームと協力し、チームのために戦った人。絶対に不可能と思えたことをやり遂げた人。ボリに諦めない心を教えてくれた人」

スヴェンはブリット=マリーに言う。
「誰かが家をノックするたびに、それがあなたであることをずっと願うよ」

朝、バスに乗るブリット=マリー。
彼女が向かったのは…。

原作の本があるそうなので、そのうち読んでみようと思います。
40年間淡々と主婦をやり続け、笑うことさえも忘れてしまった無表情のブリット=マリーがだんだんと変わっていくところが見所です。
でも63歳のサッカーをしたことのない人に、コーチはできないでしょう。
私なんか、すぐに疲れてしまい、次の日は筋肉痛で動けなくなるわ、笑。
そんなツッコミ処はありますが、ブリット・マリーには共感できました。
誰でも自分の存在を証明したいのよねぇ。
映画の最後には「エー、どういうこと」と思いましたが、その後に優しいスヴェンの元に行って欲しいと思いました。

スウェーデンで大ヒットしたと言いますが、日本の女性よりも恵まれているように思えるスウェーデン女性も、ブリット・マリーに共感できるのですね。
ちょっと荒削りのところもありましたが、好きな映画です。
そうそうヴェガ役の子が可愛かったわ。

原田ひ香 『東京ロンダリング』&『事故物件、いかがですか?』2022/08/08

原田さんの「東京ロンダリング」シリーズを二冊、紹介します。
他殺や事故、自殺、災害、孤独死などで人が亡くなった事故物件に一ヶ月住んで、
部屋を浄化することが「ロンダリング」だそうです。


内田りさ子は夫に勧められた「アンティーク講座」で佐伯という二十代の男に会い、浮気をしてしまう。
夫に知られ、探偵を使って証拠を突きつけられ、離婚。
急き立てられるように家から追い出された。
佐伯に連絡しても携帯電話は解約されていた。
たまたま電車を降りた高円寺で、お金もなく、保証人もいないので、一番安い部屋を借りようとするが、部屋を貸してくれる不動産屋はない。
暗くなってから入った相場不動産で、家賃が六万八千円だけど、住んでくれたら一日五千円の日当を払うと言われて、驚くりさ子。

それからのりさ子は、相場たちに見守られながら、ロンダリングする部屋を渡り歩き、「いつもにこやかに愛想よく、でも深入りはせず、礼儀正しく、清潔で、目立たないように」暮らしていく。
りさ子は移り住んだ先々で、様々な人と出会い、生き直していくことになる。

おせっかいな真鍋夫人が言うことになるほどと思いました。

「お金は自由。自由そのものなの。お金で買えないものはたくさんあるけど、ある程度の自由ならお金で買える。それが、貴いところなのよ」


『東京ロンダリング』の続編で、八つの連作短編集。
『失踪.com』と同じもので、文庫分にする時に題名を変えたようですので、間違って買わないようにしましょう。

「うちの部屋で人が死んだら」
加島康江は父親のアパートを相続した夫に、アパートの雑事を押しつけられている。
ある日、不動産管理会社から103号室が臭うという連絡が来る。部屋を見てみると、住民は遺体となっていた。その日は夫に子どもを迎えに行ってもらい、夜の九時に帰り、夫にこのことを話そうとするが、夫は話を聞こうともせず、「今後いっさい、俺に迷惑をかけるなよ」と怒鳴りつけられた。
このままだとアパートの入居者は二人になってしまう。
不動産管理会社の三木から提案されたのが、不動産ロンダリングだった。

「君に栄光をささげよう」
小さなメーカーに勤めている田中保志は同期の皆川哲治から家に遊びに来ないかと誘われた。行ってみると、実家に仕送りできるように事故物件に住み、一日五千円の手当を貰っているという。
前に住んでいた人へのハガキがよく来ると、見せてくれたのが、浅井陽介という人への図書館からの連絡ハガキ。
田中はそのハガキをこっそり持ち帰る。
浅井陽介は高校のバレー部の一年先輩で、田中は彼から本を貰ったことがあったのだ。
その後しばらくして、皆川が失踪する。

「幽霊なんているわかない」
鎌田勇気は妻の桐子から家を追い出された。十四回目の浮気がバレたのだ。
家財道具一つ持たずに家を追い出され、友人のマンションに転がり込み、安い部屋探しをしたが、見つからない。
最後にたどりついたのが、相場不動産。
店員のまあちゃんに、あなたのような人にもぴったりの方法があると紹介されたのが、事故物件のロンダリングだった。
紹介された部屋に入り寝ていると、ふと、目が覚める。
玄関の方を見ると、若い男が正座していた…。

「女が生活保護を受ける時」
小石川君江は物件探しをするが、生活保護だというと、不動産屋からは相手にされず、最後に入った相場不動産ではどの大家からも断られてしまう。
最後に社長の相場が現れ、君江に遠慮なくプライベートなことを聞く。君江は正直に答えていった。
話を聞き終わった相場社長は君江にロンダリングの仕事を持ちかける。
これから紹介する部屋に前に入った男が、若い男の亡霊のようなものを見たと言ってロンダリングを止めたと教えられるが、君江はそんなことにはかまわず、やってみることにする。

「地方出身単身女子の人生」
相場不動産に勤める吉田正子ことまあちゃんは、社会学者の遠藤の「地方出身の女の子の聞き取り調査」に協力している。
遠藤に次は将来のことも聞かせてもらいたいと言われ、戸惑う正子だったが…。

「失踪、どっど混む」
相場はまあちゃんが辞めてしまい、営業成績が落ちて困っていると、失踪屋の仙道啓太に愚痴る。
そのついでに仙道にどうして失踪屋をしているのかと聞く。
仙道は相場にこれまでの経緯を話す。
話を聞き終わった相場は…。

「昔の仕事」
りさ子が「富士屋」で働くようになってから四年が経った。
そんなある日、相場が「富士屋」にやって来て、ロンダリングの『影』が減ってきていることもあり、りさ子に限定的に仕事を手伝ってくれないかと頼む。
結婚を申し込まれている「富士屋」の亮に一応相談するが、りさ子の気持ちは決まっていた。

物件は築十三年、南向き、南阿佐ヶ谷駅から徒歩十二分、家賃七万五千円年管理費込。そこで大量の薬を飲んだ男が死んでいたという。男には家族がいて、郊外に一軒家を持っていて、妻はアパートについて何も知らなかったというが…。

「大東京ロンダリング」
失踪屋、船場啓太は相場不動産の案件に関わることになる。
ロンダリングの現場から逃げ出した男や「ロンダリングしてほしい」と連絡が来て、すぐに止めた女、そしてまあちゃんに話を聞きに行く。
そしてわかったことは…。

本当にロンダリングという仕事があるのかと思えるようなお話です。
私、引越が好きなので、一ヶ月毎に部屋が変わってもいいのですが、お化けが出たら嫌だわ。見えない人だからいいのですけど。
実際にはないそうなので、不動産屋で変なことを言わないようにねwww。

二冊ともいいのですが、一冊目の方がよりお勧めです。

佐竹アキノリ 『ホワイトルーキーズ2』2022/08/09

『空知総合病院』で働く、初期研修1年目の4人の研修医のお話。
『空知総合病院』に着任してすぐのことは『ホワイトルーキーズ』を読んでください。


初期研修に入ってから三ヶ月が経ちました。
研修は三ヶ月毎にローテートが組まれています。

清水涼子は産婦人科⇒外科⇒麻酔科。
産婦人科では初っぱなから超緊急帝王切開で、残念ながら取り上げられた小児は亡くなってしまいます。大変なこともあったけど、最後は産婦人科の醍醐味を知る清水でした。
不器用なので、次の外科では苦労します。でも根が真面目なので、遅くまで残って手技の練習をし、それが認められ、指導医から嬉しい一言が。
麻酔科では挿管に苦労し、風見がまた練習台になります。

風見司は小児科⇒精神科⇒内科。
風見は末っ子のため小さい子と遊んだこともがなく、最初はどう扱ったらいいのか戸惑います。しかし指導医の浜野は「交流を楽しめるようになるといいね」と温かい言葉をかけてくれます。
だんだんと子どもに慣れて、楽しめるようになる風見ですが、子どもが可愛くても、親が苦手で小児科医にならないという医師がいることを知ります。
精神科では高齢化が進み認知症が増えており、転院を待っているという状態の患者が多く、「住みなれた家に住むのが幸せなのか、施設に入所して面倒をみてもらうのがいいのか」と考え込む風見。
高齢の救急患者の対応をしている時、風見はコロナ患者と接してしまい、濃厚接触者となってしまいます。隔離期間中には仲間からの差し入れが届き、なんとかコロナに感染せずにすみます。

朝倉雄介は内科(六ヶ月)⇒小児科。
夜間の救急で老人相手に奮闘し、落ち着いたので帰ってもらおうとすると、家族のごり押しで入院させられ、愚痴も言いたくなります。
病院は「医療保険を使って九割引きで泊まれて、身の周りのこともやってくれるサービス満点なホテルってわけだ」。それに「スタッフに対する暴言、暴力は認知症があるから仕方ないと見逃されている」。そういう現実に悪態もつきたくなりますが、根は優しい朝倉は病棟から脱走した老女を見つけ、無事に病棟まで連れ帰ります。

沢井詩織は循環器内科⇒糖尿病内科⇒産婦人科。
ちょっと天然が入っている沢井は高齢患者からのセクハラやパワハラ、暴言、暴力で被害を受けます。しかし朝倉のおかげでなんとか留まります。
産婦人科はオペが辛くて、体力がない沢井には無理そうですが、指導医の馬塲の話を聞き、手術がある科もいいかもと思います。

四者四様に医師としての経験を積んでいます。
重い内容にも関わらず、暗くならないのがいいです。
空知地方では65歳以上が人口の四割にもなるなんて、すごいですね。道を歩くと二人に一人は老人ですか。(東京都は23.4%(2021年度))
認知症も増えるわけです。
医療や福祉の現場で働く人たちの苦労が偲ばれます。

本の中に出てきた北竜町に行ったことがあります。



私が行ったのは7月下旬でした。
千歳空港から約160キロ、旭川空港から約70キロです。
周りにこれといった観光地がないので、北海道は行き尽くしたという方は行ってもいいかも。


S.J.ベネット 『エリザベス女王の事件簿 ウィンザー城の殺人』2022/08/10



2016年4月、ウィンザー城で女王主催の晩餐会が開かれた翌日、ピアノを演奏するためにやってきたロシア人音楽家、マクシム・ブロツキーの遺体が部屋のクロゼットから発見される。
早速捜査を始めた警察とM15。
M15は早々にロシアのスパイによる犯行と見なす。
しかし、納得できないのが、エリザベス女王。
ナイジェリア出身の秘書官補、ロージー・オショーディを手足として使い、事件解決に必要な情報を集めさせ、悟られないようにそれとなく警察やM15にその情報を流し、正しく事件が解決するように画策していく。

オバマ大統領とかメルケル、プーチン、安倍晋三など当時の大統領や首相の名前が次々と出てきます。
オバマは女王からものすごく歓待されたのですね。
プーチンは「冷酷で計算高い人物」と書いてあります。この本は2021年3月に発売されていますから、前からプーチンはイギリスで信用ならないと思われて、嫌われていたのかしら?

この本の設定では、エリザベス女王は12歳か13歳のころから謎解きをやっていて、謎解きがライフワークとなっているそうです。
「知識の量も深さも並外れたものだし、鷲のように鋭い眼で物事を見抜き、ウソのにおいを嗅ぎ分ける能力もお持ちだし、記憶力も抜群」なんて、すごいですね。
夫のフィリップは「ハンサムという点ではまちがいなく五本の指に入るけれど、繊細さというチャームポイントは持ち合わせていなかった」なんて、笑。
こんなこと書いていいのと思いますが、イギリスは自由なんですね。

このシリーズは「Her Majesty the Queen Investigates Book」として二冊発売されています。
二冊目の「All the Queen's Men」は今年の三月に出版されていて、2016年の秋にバッキンガム宮殿のプールでスタッフが殺されていたことからお話は始まるようです。
三冊目の「Murder Most Royal」は2023年3月に出版されるようです。

2016年に何があったか、考えながら読むのがよさそうなシリーズです。
そうそう、エリザベス女王は1926年生まれですから、2016年では90歳なんです。スーパーおばあさんですね。

エリー・グリフィス 『見知らぬ人』2022/08/11



物語は中等学校タルガース校の英語教師、クレア・キャシディと15歳の彼女の娘、ジョージア・ニュートン、そしてサセックス警察犯罪捜査課部長刑事ハービンダー・カーの三人の視点で交互に書かれていて、合間に架空の作家ローランド・モンゴメリー・ホランドが書いた「見知らぬ人」という幻想怪奇短編小説が挟まれているという、凝った作りになっています。
ゴシック・ホラー小説風ではなく、サスペンスよりのミステリーです。

クレアは中等学校タルガース校の英語教師で、中間休みに成人向け創作クラスをやっている。
中等学校タルガース校の旧館はかつてホランド・ハウスと言われ、作家のR.M.ホランドが実際に住んでいた館で、最上階には生徒立ち入り禁止のR.M.ホランドの書斎がある。
クレアはホランドの伝記を書いているが、最近は筆が止っているが、日記だけはほぼ毎日書いている。
娘が年上の男性と付き合っているのが、今の悩みだ。

ある日、クレアと仲の良かった英語科の同僚、エラ・エルフィックが自宅で殺される。
ハービンダー・カー部長刑事がやって来て、エラとの関係や七月にエラと参加したハイズでの教員研修のことを聞かれる。
遺体のそばに『テンペスト』からの引用の”地獄はからだ”というメモが残されていたという。
クレアは家に帰り、ハイズの教員研修について書かれた自分の日記を読み返してみる。
そうすると、日記のページのいちばん下に、誰かが書き込みをしていた。
それはエラのそばに残されていたメモと同じ筆跡だった。

そして今度はR.M.ホランドの書斎で新たな遺体が発見される…。

クレアはよくいる美人のイギリス人女性という感じですが、部長刑事のカーはインド系移民の娘で同性愛者。独特の見方をします。特にクレアのような女性に対して厳しいですね。
参考人や被疑者を色眼鏡で見るなんて刑事としてどうなのと思いましたけど、色々と過去にあったのでしょうね。

イギリス人は幽霊とか魔術とか好きですね。今回は白魔術師が出てきました。
子どもたちがそういう物に惹かれる気持ちもわかりますが、事件とあまり関係なく、余計に感じました。まさかミスリードを狙っていないですよね。

犬のハーバート、可愛いです。
この本の一番の登場人物です、笑。

「刑事ハービンダー・カー」シリーズとして続編が書かれていて、来週二作目の『窓辺の愛書家』が発売されます。
カー部長刑事が気になるので、読んでみますわ。

「イーディ、83歳 はじめての山登り」を観る2022/08/12

コロナ禍で遠くに行く気になれないので、映画で綺麗な景色を見ることにしました。
題名の文句ばかり書いていますが、「はじめて」っていうのが間違っているみたいです。
イーディは結婚するまでお父さんと一緒にハイキングとかキャンプとかに行っていたみたいですから、もちろん山も登っていると思いますよ。
いくらなんでも山登りを一回もやったことのない人が80歳を越してやろうと思うとは思えませんよね。


予告編

イーディは30年間夫の介護をしてきた。
夫が倒れたのは、父からのハガキが来た時だった。
ハガキにはスコットランドのスイルベン山に一緒に登ろうと書いてあった。
結婚してからイーディは旅さえさせてもらえなかった。
そんな夫に初めて逆らって、父と一緒に行くと言ったら、喧嘩になり、夫が倒れ、歩行も会話もできなくなってしまったのだ。
それからすぐに父が亡くなったので、山に登ることはできなかった。
あれから30年が経ち、イーディが父からのハガキを見つけた日に、夫が亡くなった。

夫が死んでから三年後、家を売ることになる。
娘がイーディを老人ホームに入れようとしたからだ。
家を片付けていた娘がイーディの日記を読んでしまう。
日記には夫への不平不満と鬱屈したイーディの赤裸々な気持ちが書かれていた。
それを読んだ娘は怒り、「愛はなくても義務は果たした」と言うイーディを見捨てた。

馴染みのフィッシュアンドチップス屋でいつものメニューを頼んだ後、イーディが追加オーダーができるかと聞くと、店員が「Never too late, Edie」と答える。
この答えを聞き、イーディは父と登りたかったスイルベン山に登ることにする。

電車でインバネスまで行き、バスに乗り換えようとホームを歩いていると、若い男とぶつかる。
バスは四時間後。
たまたまバス停を通りかかった、さっきの若い男、ジョニーが車で送ろうと申し出る。
ホテルに行くと、予約は明日からで、その日は満室。
仕方なく、ジョニーの部屋に泊めさせて貰う。

ジョニーは登山用品店の店員だった。
イーディは昔の登山道具を使い、山に登ろうとしていた。
それを見取ったジョニーの同僚のマクローリンは、イーディがいい鴨になると思い、ジョニーをガイドとして雇うことを勧めてくる。もちろんマージンはいただく。

ジョニーとトレーニングを始めるイーディ。
イーディは負けず嫌いの頑固なおばあさんで、ジョニーの言うことを素直に聞こうとはしない。
ジョニーは苦戦し、二人は喧嘩を繰り返す。
しかし、だんだんと二人は心を通わせるようになる。

ジョニーに誘われ、お洒落をして飲みに行くと、マクローリンとジョニーの彼女のフィオナがやって来て、イーディをただの老女だと馬鹿にした態度を取る。
酒場でイーディは倒れてしまう。
疲れだと医師は言うが、イーディは自信をなくし、山登りを止めて帰ることにする。
ジョニーはイーディを送っていくが、「無理だと思っていたのに、なぜ希望を持たせたのか」と迫るイーディに激怒し、途中で自転車と彼女を車から下ろす。
イーディは自転車に乗り走り出すと、後ろからジョニーが自転車で追いかける。
自転車の競争はイーディの勝ち。
ジョニーはイーディに言う。
「最初は金目当てだった。嫌なババアだと思った。でも本当は楽しい人だった。この挑戦はすごいことだ。自転車でも走れたんだ。できるよ。必ず頂上まで連れて行くよ」

登山当日、急にイーディは一人で登ると言い出す。
反対するジョニーだったが、イーディは固持する。
仕方なくジョニーは自分の携帯電話を渡し、イーディを送り出す。

初めは一人でも登れそうに思われたのだが…。

イーディ役の女優さん(83歳)は本当に山に登ったそうです。
でもそこのあなた(誰?)、自分も今から山に登れそうと思いませんでしたか。
山登りには危険が伴います。特に年を取ってからの登山は無謀ですよ。
高尾山くらいの山で我慢しましょうね。
そういえばリュックが随分小さかったですね。テントも寝袋も入らないでしょうに。
それに山登りは登りよりも下りが辛いですよ。
登るだけでヘロヘロのイーディがどうやって下って行ったのか、気になります。
そうそう、天気予報は見なかったのかしら?
色々と突っ込みどころの多い映画です。
くれぐれも山登りは簡単と思わないようにね。トレーニングは必須ですよ。

映画ではイーディが一人で山を登り始めてから、心配でドキドキしていました。
イーディは夫の介護をした30年間で、状況を的確に判断し、目的のためには人に頼ることも必要だということを学ばなかったようです。
絶対これは遭難するパターンです。
唯一の救いは、素晴らしいスコットランドの景色です。



この景色を見るだけでも、映画を観たかいがあります。
私が20~30代だったら、この山に登りたいわ。
感想はこんな感じです(爆)。