アイスランドの女性刑事フルダ・シリーズ三部作2023/04/30

フルダ三部作は、翻訳家曰く、「<逆年代記>の手法で綴られた」アイスランド・ミステリーです。
フルダ・ヘルマンスドッティルは一作目の『闇という名の娘』では退職間近の六十四歳、二作目の『喪われた少女』では五十歳、『閉じ込められた女』では四十歳です。
何故こういう風にしたのかは、最後まで読んでから考えるしかないです。
私は特に時間を逆行してもしなくても、そんなに違いがなかったような気がしますが、読みが浅いですwww。
『闇という名の娘』の衝撃的なラストからフルダの過去を遡ることで六十四歳のフルダにより憐れみを覚えるようになりましたけどね。


フルダは六十四歳。退職が迫っていた。
今まで仕事に生きてきたフルダにとって退職は受け入れられないことで、ひとりで老いていくことを考えると耐えきれなくなる。
フルダは二歳まで乳幼児院で育てられ、その後、祖父母の家で母と祖父母と一緒に暮らした。
父はアメリカ兵だということだがファーストネームと産まれた州以外はわからない。母は彼に妊娠したことを告げず、彼はフルダが産まれる前にアメリカに帰国した。母に引き取られてからの生活は苦しく、フルダは母とはしっくり来ていなかった。
今や祖父母も、母も、夫も、娘も亡くなり、フルダは天涯孤独の身だ。
山歩きの会で出会ったピエートゥルとはプラトニックな関係だが、これからいい関係が築けそうだと期待している。

フルダはある男性のひき逃げ事件を追っていた。
彼は有罪判決を受けたことのある幼児性愛者で、老人ホームの看護師をしている女の息子が被害に遭っていたことがわかり、彼女に非公式な事情聴取をした。
彼女は自白するが…。

フルダは上司のマグヌスから呼び出される。
二週間後にフルダのあとを引継ぐ男が来るので、ようするに数ヶ月退職を前倒しにして今すぐ辞めろというのだ。
フルダはガラスの天井に阻まれ、志望したポストはことごとく自分より若い男性の同僚に奪われた。そのため昇進は諦め、犯罪捜査部の警部として精一杯職務を果たしていた。
それなのに感謝の言葉もなく、追い出すというのか…。
憤るフルダ。
最後のあがきで、残りの二週間を使い興味を持った未解決事件の捜査をしてもよいという許可を得る。

フルダの選んだ事件は無能な同僚のアレクサンドルが担当したものだ。
一年前、二十七歳のロシア人の難民認定申請者、エレーナが海岸で遺体で発見され、自殺とされた事件だ。

フルダは単独で再捜査を始める。


フルダは五十歳。
娘のディンマは十年前、夫のヨンは八年前に死んだ。
ヨンは借金を残していたため、家を売り、いまは小さなフラットに住んでいる。
母が死んだので、アメリカ人の父のことを調べようと決心し、問い合わせると二人の候補者が見つかる。
連絡先のわかった一人に会いにアメリカに行くと、彼は自分ではないと言い、もう一人のことを調べてくれた。
残念なことにフルダの父と思える男は五年前に亡くなっていた。

アメリカから帰った二ヶ月後の日曜日、ヴェストマン諸島から電話が来る。
エトリザイエ島に渡った四人の若者のうちの一人が崖から転落死しているのが見つかったというだ。
フルダは自ら出向くことにする。

調べて行くと、彼らは10年前に殺された少女を偲ぶために島に行ったことがわかる。
10年前の1978年10月、アイスランド西部のフィヨルドにある別荘で、カトラという女性が殺されており、レイキャヴィーク警察のリーズルは彼女の父親のヴェトゥルリジを逮捕した。彼は無罪を訴えていたが、留置所で自殺した。

十年前の事件と今度の事件に関連があると確信したフルダは捜査を進めていく。


フルダは四十歳になろうとしていた。
娘のディンマはこの頃扱いにくい。自分の部屋に籠もっていて、出てこようとはしない。
何かおかしいとは思うが、クリスマスが来ればきっと何もかもうまくいくはず。
それでも変わらなければ、夫は当てにならないので、専門家の助けを求めようと思っていた。

その頃、フルダは失踪した若い娘の事件を担当していた。
彼女は大学進学を一年先延ばしにしてアイスランドを一周する旅に出て、行方不明になっていた。
25日のクリスマスの日、出勤していたフルダは娘の様子を見に昼休みに家に一旦帰ることにする。
家に着くと、夫は寝ていて、娘は部屋にいるという。
娘の部屋に行ってドアを叩くが、返事がない。ドアには鍵がかかっている。
ヨンが体当たりをしてドアを開けてみると…。

エルラとエイーナル夫妻はアイスランド東部の中央高原地帯の人里離れた過疎地にある農場に住んでいる。
農場は祖父から父、そしてエイーナルへと受け継がれた。
ここ十年で近くに残っていた数軒の農場はすべて放棄されたが、エイーナルだけはしがみついている。
町育ちのエルラは二十代の初めにアンナという娘を産んだ。アンナを都会に行かせたが、やがて戻って来て、隣の家に住み始めた。
ここは冬になると雪に閉ざされ、誰もやって来ない。閉所恐怖症になりそうだが、耐えるしかない。本を読むだけが唯一の楽しみだ。
クリスマスの前夜、誰かがドアをノックした。
いったい誰?
ドアを開けてみると、それは友人ふたりとライチョウ撃ちに来て、彼らとはぐれてしまったというレオという男だった。
エイーナルは何も疑っていないようだが、エルラは男の態度に何か引っかかるものを感じる。

クリスマスの二ヶ月後、フルダはアイスランド東部の農場まで赴いた。
そこはクリスマスから雪で通行できなくなっており、いつのまにか電話も通じなくなっていた。
その農場に住んでいる夫婦に何かあったのではないかと様子を見に行ったイェンスという警察官が二人の死体を見つけたのだ。
夫婦の他に第三者の存在を確信したフルダは謎の訪問者の車を探しに行くが…。

この三部作は事件の捜査をするというよりも、孤独なフルダという女性の人生を辿るためのお話です。
何故これほどの悲惨なことがフルダに次々と起こるのか。
読んでいくとかわいそ過ぎていたたまれなくなります。
背後にあるアイスランドの自然はあくまでも冷たく、厳しく、過酷な運命に翻弄される人間達をあざ笑うかのようです。
アイスランドほどではないのですが雪国に育った私には身に染みるお話で、特に最終話はゾクッとしました。

よくできた三部作だと思います。
後から読むか、最初から読むか、それは自由です。(でも作者の意図を尊重するなら、『闇という名の娘』からですよね)
お勧めの三部作ですので、連休中にお暇でしたら、読んでみて下さい。

アイスランドというと、2022年、「ジェンダーギャップ指数」13年連続1位(日本、116位)で、国会議員のほぼ半数が女性(日本は衆参両院で15.4%、2022年9月1日現在)という国です。
そういう国でも1938年生まれのヒルダの頃にはまだ女性差別があったのですね。
どのように今のような国になったのか、簡単に調べてみました。
1976年に「ジェンダー平等法」が制定され、1980年に女性大統領が誕生し、その後賃金格差や性別役割分担の是正に取組み、2010年にクォーター制(企業役員や公共の委員会のメンバーの40%を女性とする)を導入してから大きく前進したといいます。
日本もアイスランドのいいところを取り入れていくといいかもしれませんね。
そのためには女性のリーダーが必要だと思います。
若い女性たち、頑張ってください。これからはあなたたちの時代ですから。


<今日のおやつ>
懲りずにおやつを食べています。
痩せないよ~、と心の声が、笑。


こどもの日が近いので、柏餅です。漉し餡、粒餡、味噌餡の三種類です。
私は味噌餡を食べ、後は夫の胃袋へ。


たまたまお昼頃に通りかかるとフランスパンの美味しいお店(SONKA)が開いていたので入ってみたら、ケーキしか残っていませんでした。
チーズケーキとチョコレートケーキを買ってみました。
カロリーのありそうなチョコレートケーキは夫へ、チーズケーキは私がお昼ご飯の代わりに食べました。
ケーキは普通の味でした。やっぱり買うとしたらフランスパンだわね。

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